[Alexandros]が貫く全員でグルーヴを作り上げるスタンス 歴代ドラマーを通して15年を振り返る

庄村聡泰の華やかなパフォーマンスで更なる高みへ

 川上がオーラやカリスマ性に惚れ込み、バンドに迎え入れた庄村聡泰。彼は聴覚的にも視覚的にも華やかなドラマーで、[Alexandros]の求める“ロックスター”像を体現していた。手数の多いフレージングやシンバルのブライトな響きで魅せる手法が特徴的であるほか、非常に高い位置にセッティングされたクラッシュシンバルもトレードマークに。ドレッドヘアを揺らし、腕を大きく振り上げて叩く姿は、それだけで画になった。

 庄村が在籍した2010~2021年は、[Alexandros]がライブハウスからアリーナへ、そして全国区へと飛躍した時期と重なる。バンドの名を一躍知らしめた「Starrrrrrr」(2013年)、「ワタリドリ」(2015年)で、庄村は[Alexandros]を代表するリズムパターンを確立。バンドを下支えするというよりも物語を駆動させるようなドラムであり、その持ち味は「Famous Day」(2015年)、「NEW WALL」(2016年)で極致に達した。

[Alexandros] - Famous Day (MV)

 さらに[Alexandros]は、ジャズもメタルもエレクトロも貪欲に取り入れるバンドへと進化。庄村は幅広い音楽を聴くリスナーでもあり、楽曲の幅が広がるにつれ、その引き出しの多さがプレイにも活かされていった。そして、7thアルバム『Sleepless in Brooklyn』(2018年)制作期間中の海外生活やレコーディングを経て、ボトムの太さを獲得することになる。リズムパターンも余白のあるものに変化するなど、バンドのフェーズが変わるにつれ、ドラムのアプローチも進化していった。

約10年の歴史を引き継ぎ、爆発力をもたらしたリアド偉武

 現在のドラマー・リアド偉武は、緩急豊かなフレージングと一音一音の明瞭さ、音色の良さが持ち味だ。もともとはパワードラム型で鳴らす音に迫力があった一方、フレージングはシンプルな傾向にあった。しかし[Alexandros]との出会いが彼を覚醒させる。「閃光」(2021年)のレコーディング時、川上は「逸脱してほしい」「リアドの中の100点があるとしたら、0点か150点を目指してほしい」と要求(※2)。こうした刺激を受けながら、リアドは[Alexandros]における爆発の仕方を体得していった。

[Alexandros] - 閃光 (MV)

 「閃光」では、畳みかけるようなプレイと随所に織り込まれる抜きのフレーズのコントラストが、楽曲にダイナミズムをもたらしている。リズムの緩急をバンド全体の呼吸とする手法は、石川時代から脈々と受け継がれてきた[Alexandros]の流儀だ。「金字塔」(2025年)は、手数を増やしてドラムが楽曲を牽引する場面と、余白を設けて他パートに委ねる場面の見極めが的確。こうした楽曲全体の設計は庄村も意識していたところであり、リアドもまたその感覚を継承している。そして最新曲「Ash」(2025年)では、轟音ギターが鳴るなか、単一のグルーヴを貫くリズムパターンで迫力を演出。『Sleepless in Brooklyn』以降、バンドが志向してきたグルーヴの方向性とリアド元来の資質が噛み合い、化学反応を生んでいる。また、メロディックパンクをルーツとするドラマーのため、“速さ”への対応力は抜群だ。『THIS SUMMER FESTIVAL 2022』で演奏された「Droshky!」のライブ音源では、推定BPM170超でもフレーズを崩さず、極めてクリアに叩き切るリアドのプレイを確認できる。

[Alexandros] - 金字塔 (MV)

 当初はサポートドラマーとしてライブや制作に参加したリアドは、クラッシュを高く掲げる庄村のセッティングを継承し、さらに2023年秋ごろには、バスドラのヘッドに「3RD DRUMMER RULES」と記して、自らの立ち位置を明示していた。しかし現在は、それらを外している。継承したスタイルが自身の一部となり、改めて明示する必要がなくなったからだと私は思う。先代2名への敬意を胸に刻みつつ、両者のスタイルを自分の中で消化し、“[Alexandros]のドラマー”としての姿を確立したリアドが『VIP PARTY '25』でどんなドラムを叩くのかも楽しみだ。

「いろいろなことがありましたけど。名前が変わったり、ドラムが変わったり。そういうことがあったからこそ、自分たちはむしろ中身は変われずにいられたなと思うんですよ」

 『VIP PARTY '25』の告知映像内で、川上はそう語っていた。ドラマーが変わっても、リズムを核に全員でグルーヴを作り上げる姿勢、ロックバンドとして肉体的な音楽を奏でること、やりたい音楽を貪欲に追求するスタンスは変わらない。『VIP PARTY '25』は彼らの変わらない芯を示すライブになるだろう。チケットは両日ソールドアウト。集まったファンを前に、[Alexandros]は15年の集大成を見せつけてくれるはずだ。

※1:https://www.youtube.com/watch?v=rqBxHbkwScs
※2:https://barks.jp/news/906171/

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