タイラー・ザ・クリエイターの絶賛バーガーからNCT WISHのファッションコラボまで――韓国トレンドレポート 2025年10月号
K-POPや韓国ドラマにとどまらず、2025年の韓国カルチャーはアート、ファッション、フード、ストリートまで多彩な分野を横断し、グローバルでの存在感をさらに強めている。この連載では音楽・ファッション・食が交差する“いま”の韓国を毎月スナップしていく。
9月の話題を追った10月号では、タイラー・ザ・クリエイターがソウル公演で韓国チキンを絶賛したエピソードから、NCT WISHと韓国のファッションブランド『SAN SAN GEAR』のコラボコレクション、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の世界初となる公式ブックストアの開業、そして国際アートフェア『Frieze Seoul 2025』を中心に展開されたアートウィークの熱狂、さらにアートクルー兼ライフスタイルブランド『IAB STUDIO』による初の常設ストア『IAB STUDIO DOSAN』オープンまで――音楽・ファッション・アートが交錯する2025年9月の韓国カルチャー最前線を読み解く。
タイラー・ザ・クリエイター、韓国公演で韓国チキンを絶賛
ラッパーのタイラー・ザ・クリエイターが9月14日に行ったソウル公演2日目は、通常ほとんど行われないというアンコールまで披露するほどの熱狂に包まれた。その夜、音楽と並んで話題をさらったのが、昨年日本にも上陸した韓国発のバーガーチェーン『Mom's Touch』だ。タイラーはステージ上で「今日の昼に『Mom's Touch』を食べた」と観客に語りかけ、「こんなにおいしいものを君たちだけが食べていたのか?」「こんなにおいしくていいのか?」と興奮気味に絶賛。最後には「Shout out Mom's Touch!」と叫び、観客にもブランド名を連呼させて会場を大いに沸かせた。
この発言は瞬く間にSNS上で拡散。会場にいた観客たちもタイラーの熱のこもった『Mom's Touch』愛に刺激を受け、ライブ後に店舗を訪れる人が続出。SNSには「タイラーが言ってたから食べにきた!」という投稿が相次ぎ、その熱気は公演を訪れていた韓国セレブたちのSNSにも波及。なかでもBTSのVは、公演後にタイラーのツアーTシャツを着用した写真を投稿し、「韓国へようこそ。今夜は『Mom's Touch』を食べるよ。みんなも今夜試してみて」というメッセージを添えて大きな注目を集めた。バーガーチェーンとしては、思わぬ形で一夜にして話題の中心となった。
話題となったメニューは、『Mom's Touch』が今年、料理番組『白と黒のスプーン〜料理階級戦争〜』(Netflix)への出演でも知られる有名シェフ、エドワード・リーとコラボレーションして開発された限定チキンバーガーだ。プレオーダーは開始からわずか30分で完売し、その後に発売されたチキンメニューは、1週間で10万個以上を売り上げるという記録的ヒットを達成した。
NCT WISHと『SAN SAN GEAR』のコラボコレクション発表
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NCT WISHと韓国ストリートブランド『SAN SAN GEAR』のコラボレーションによる限定コレクション「WISH GEAR : HEARTSTRINGS」が発表された。『SANSAN GEAR』は、これまでも『PUMA』や『ASICS』といったグローバルスポーツブランドをはじめ、韓国プロ野球チームの『サムスン・ライオンズ』、オンラインゲーム『League of Legends』、Oasisなど、ジャンルを超えたコラボレーションで注目を集めてきたブランド。本コレクションはNCT WISHの3rdミニアルバム『COLOR』の活動を記念して企画されたもので、グループの世界観をファッションで再解釈する試みとなっている。
コレクションは2部構成で、「PART A」ではメンバーたちをアーチェリー部員に見立てて青春と成長をテーマに描き、「PART B」では放課後のカジュアルで自由なムードを表現。アイテム構成も幅広く、フォトカードを収納できるポケット付きパンツやグループ公式ペンライト、マスコット人形が収まる特製バックパック、フォトカードスロット付き財布など、実用性と遊び心を兼ね備えたラインナップが揃う。ブランドカラーを取り入れたデザインで、グループの個性をファッションで具現化した。
NCT WISHの『COLOR』は、発売初週に「HANTEOチャート」で初動139万枚を突破し、その勢いを受けた今回のコラボレーションも大成功を収めた。今回の企画は、両者にとってK-POPとストリートファッションが理想的に融合した好例として高く評価されている。
ソウルを包み込んだアートウィークの熱気
国際アートフェア『Frieze Seoul 2025』が9月3日から6日、ソウル・COEXで開催された。4回目となる今年は、アジアをはじめ世界各地から120以上のギャラリーが集結。『Kiaf SEOUL』との同時開催となり、ソウル全体がアートウィークの熱気に包まれた。今年からは常設拠点「Frieze House Seoul」もオープンし、会期外でも最先端アートを紹介する通年型プログラムが始動している。
会場では、参加ギャラリーがそれぞれ趣向を凝らしたブースが展開。「P21」(ソウル)と「Gallery Vacancy」(上海)は、韓国と中国の新進アーティストによる合同展示を実現し、東京の「NANZUKA UNDERGROUND」は空山基やFriendsWithYou、MSCHFなど20組以上の人気作家を集め、ポップカルチャー色の強い空間で注目を集めた。期間中は市内各地でも関連イベントや展覧会が開催され、ソウルのリウム美術館ではイ・ブルの回顧展『From 1998 to Now』、アートソンジェセンターではアドリアン・ビジャール・ロハスによる建築的インスタレーション『The Language of the Enemy』が注目を集めた。さらに、BMWと連携した音楽イベント『Frieze Music』では、ソウル出身のR&Bシンガー・Crushがライブパフォーマンスを披露。さらに、新進ガールズグループ・Baby DONT Cryも出演し、力強いステージを見せた。
2025年の9月1週目は、美術館から商業ギャラリー、ファッションブランド、アーティストまでが一体となり、都市規模のアートフェスティバルとして、多彩な表現と出会いが交差する機会となった。























