中森明菜はなぜ特別な存在であり続ける? 20年ぶりのライブツアーを叶える、アイドルとしての揺るぎない姿勢

 中森明菜が2月13日、東京、大阪、愛知の3都市をめぐるライブツアー『AKINA NAKAMORI LIVE TOUR 2026』の開催を発表した。ホールでの中森の歌唱姿は、2006年に全7都市8公演が行われた『AKINA NAKAMORI LIVE TOUR 2006 〜The Last Destination〜』以来、20年ぶりとなる。中森本人がステージ演出やセットリストのプランニングにも参加することも伝えられ、ファンのみならず音楽リスナーにとっても垂涎の公演になりそうだ。

 2010年に体調不良で芸能活動の休止を発表した中森だが、2014年には『第65回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に企画ゲストとして出場。その後に歌手活動を再開し、新曲の制作に加えて、作品リリースやディナーショーイベントも開催した。2018年から再び活動を休止したが、その間に個人事務所を設立。2023年に本格的に活動を再開させ、2024年と2025年にはファンクラブ限定のスペシャルライブイベント『ALDEA Bar at Tokyo』を行ったほか、2025年には『ジゴロック2025 ~大分”地獄極楽”ROCK FESTIVAL~ supported by ニカソー』で初の野外ライブ出演を果たした。

 その一挙手一投足に注目が集まる中森。彼女はなぜこれほど心待ちにされる存在となったのか? 一番の理由は、やはり音楽性であるだろう。ただ、それは単純に「楽曲がいい」というだけではない。「中森明菜が歌ってこそ成立する」ものばかりなのだ。

Shojo A (2014 Remaster)

 その象徴的な楽曲のひとつは、やはり1982年発表の2nsシングル表題曲の「少女A」である。空前のアイドルブームとなった1980年代。中森もその中の一人として、1982年にデビューを飾った。当時、多くのアイドルは“第二の松田聖子”というようなキャッチコピーが付けられることが少なかった。一方で、中森の存在はそういった王道的なアイドル像のアンチテーゼとして見られていたことも事実だろう。そのため、1970年代を風靡した存在でもある山口百恵に比喩されることも多く、“第二の山口百恵”と囁かれるような存在だったと記憶している。

 いつの時代も先達と重ねられたり、比較されたりするのは、アイドルやアーティストにとってある意味では宿命だ。だが、中森は「少女A」で〈私は私よ 関係ないわ〉と歌ったのだ。自分の存在意義について歌うアイドルは、現在はそう珍しくない。しかし、1980年代という時代において、中森の歌唱は真に迫るものが感じられた。

 その背景には、当時の中森に植え付けられたイメージが影響している。筆者も幼心の記憶として、当時の中森はそれまでのアイドルたちのようにきらびやかに、にこやかに歌う雰囲気ではなく、どこか陰を感じさせる姿が残っている。そしてそれが、彼女の不良少女的な印象につながっていったのだろう。奇しくも1980年代は、若者の非行と校内暴力がクローズアップされた時期。実際に、新聞などが校内暴力などを報じる際に該当生徒を“少年A”、“少女A”としていたことから、若者の非行を連想させたリスナーも少なくなかったはずだ。

②【公式】中森明菜/少女A (イースト・ライヴ インデックス23 Live atよみうりランドEAST, 1989.4.29 & 30) AKINA NAKAMORI/Shojyo A

 しかし、中森の活動を追ってみると、彼女の気持ちの繊細さ、感性の敏感さ、丁寧な受け答えに気づく。そのどれをとっても、そこに映し出されるのは人間味にあふれる、しかしどこか不器用な中森の姿だ。何より「少女A」は、どこにでもいる、特別ではない17歳の〈ワタシ〉について歌ったものだった。“第二の松田聖子”にも、“第二の山口百恵”にも属さない、“中森明菜”としての姿がそこにはある。中森に魅了されたリスナーはきっと、自分の意に沿わないレッテルやイメージが貼られがちな時代の中で、〈私は私よ 関係ないわ〉と毅然と歌う中森の姿が心にずっと刻まれているのではないだろうか。だからこそ、2度の活動休止を挟んでもなお中森は心から離れない、特別な存在になったのだと考察する。

中森明菜「ビター&スウィート(1985サマー・ツアー)」【フル】 AKINA NAKAMORI / BITTER & SWEET 1985 SUMMER TOUR

 また中森は、自分から表立って多くを語らない存在だった。しかし、近年のファンクラブイベントの充実度や力の入れ方を見れば分かるが、中森とファンはまさに一蓮托生の関係性で結ばれている。中森が長年、自分のペースで活動ができているのは、ファンと互いに支え合い、信じ合っているからこそだろう。

 『AKINA NAKAMORI LIVE TOUR 2026』で、中森明菜はどんな歌を届けてくれるのか。その歌声が再びホールに響く瞬間を、多くの人が心待ちにしている。

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