今最も熱いアイドル Juice=Juice、なぜ再評価フェーズに? 「盛れ!ミ・アモーレ」バズの理由、楽曲の強さを解説

「盛れミ」に内在する幾多の“フック”

 では、なぜ「盛れ!ミ・アモーレ」がこんなにも盛り上がっているのだろうか。理由はいくつか考えられる。まずは、楽曲が持つフックの多さだろう。「盛れ!ミ・アモーレ」という曲名を耳にしたとき、往年のアイドルファンなら中森明菜のシングル曲「ミ・アモーレ [Meu amor e...]」を想起する人も多いのではないだろうか。この曲は、1985年の『第27回 輝く!日本レコード大賞』(TBS系)で大賞を獲得している、中森の代表曲のひとつだ。そのため、「盛れ!ミ・アモーレ」という楽曲タイトルは、「え、中森明菜の曲? カバー? 違うの?」など最初の掴みになるだろう。「ミ・アモーレ [Meu amor e...]」もラテン調のサウンドであり、オマージュの意味が込められていると想像できる。なお、作詞作曲は、ハロプロへの楽曲提供も多数ある女性シンガーソングライターの山崎あおいが担当している。

Juice=Juice『盛れ!ミ・アモーレ』Promotion Edit

 次に〈盛れ!〉というキーワードだが、これだけ聞くと、盛り文化のことを指しているのではと連想するのではないだろうか。平成であればプリクラでのデカ目、令和の今ならSNSでの自撮りにおける化粧や自動エフェクトによるInstagram映えなど。歌詞を読んでみると、確かにそういった盛り文化のことを歌ってはいるのだが、そこにはちょっとしたストーリーがあり、恋する相手に〈一番の私を見て〉ほしいと願っている女性が主人公だ。〈ありのままなんて/愛させたげない〉と思っており、〈火花みたいな今を……/盛れ!!!〉と彼女は心で叫んでいる。〈ありのままなんて/残させたくない/現実以上 でいいの〉と、加工主義には肯定的だ。しかし終盤では〈私のもとを 去るのね〉と、相手にふられる結末が示唆される。〈悲しいエピソードって/後味が悪い/めちゃくちゃにして話そう/盛れ!!!〉と、別れ話を盛りまくってすべらない話にしちゃおうというオチが最後につくのだ。現代性を保持しつつ、ひねりも加わっている、よくできた歌詞だと言えるだろう(ハロプロファンなら、つばきファクトリー「Just Try!」でつんく♂が作詞した〈ガセネタより厄介なのは/事実ありきの盛り話〉というフレーズも連想されるのではないだろうか)。

 さらに、ダンスにもフックがいくつか見られる。前述した通り、サビ直前では〈油断できないわ/シャッターチャンス〉という歌詞とともにメンバーが片足を大きく振り上げて開脚する動きがある。サビでの腰のグラインドも含めて、セクシーでありながら、昨今のK-POPシーンをはじめとしたダンスとの同時代性とも捉えることができる。さらに言えば、セクシーな振り付けというのはハロプロにおいて伝統的なメソッドでもあり、人々の印象に残る振り付けというのは多少過剰さが必要なのかもしれない。そもそも、OCHA NORMAメンバーが“隙アモ”で真似していたのはサビの腕を組んで自分を指差す部分であり、ここも可愛らしくて特徴ある振り付けだ。

Juice=Juice『盛れ!ミ・アモーレ』-Dance Practice ver.-

 さらに、前述したファンによるコールの熱さやOCHA NORMAメンバーによる“隙アモ”が口火を切ったことなど、さまざまな要素の集積によって、「盛れ!ミ・アモーレ」は大きな広がりを見せているのではないだろうか。もちろん、その大前提にはJuice=Juiceのグループとしての魅力がある。現在のJuice=Juiceメンバーの中心となっているのは、リーダーの段原瑠々とサブリーダーの井上玲音という2トップの存在だろう。彼女たちの歌唱力の高さが、“実力のJuice=Juice”という以前からのグループの伝統を今も守り、そして受け継いでいる。

@juicejuice_uf 2025/10/8 Release 「四の五の言わず颯と別れてあげた/盛れ!ミ・アモーレ」 #juicejuice #盛れミアモーレ #隙アモ #helloproject ♬ オリジナル楽曲 - Juice=Juice

 工藤由愛、松永里愛という、数年前はグループの末っ子的存在だった彼女らも、今ではグループの中核を担うポジションに成長した。「盛れ!ミ・アモーレ」冒頭の迫力ある歌い出しは工藤によるものだ。ほかにも、2023年に加入した川嶋美楓は、今回の「盛れ!ミ・アモーレ」のMVサムネイル画像で顔のアップショットが採用されて、あらためてそのビジュアルが強調された形に。このように注目メンバーが多くいるのが、現在のJuice=Juiceである。

 YouTube上では、楽曲MVのほか、ライブ映像、ダンスプラクティス動画など複数の「盛れ!ミ・アモーレ」の映像がアップされており、さまざまな角度から楽しむことができる。中でも、埼玉・戸田市文化会館大ホールにて開催された『Juice=Juiceスペシャルライブ2025 ~10月10日はJuice=Juiceの日~』からのライブ映像では、生バンド編成による「盛れ!ミ・アモーレ」を聴くことができる。バンドアンサンブルとの相乗効果でさらなるポテンシャルを発揮した瞬間が記録されている。

Juice=Juice『盛れ!ミ・アモーレ』BAND Live Ver.

『THE FIRST TAKE』で代表曲を披露

 この盛り上がりの帰結のひとつとして、『THE FIRST TAKE』へのJuice=Juice出演決定があったのも確かだろう。11月7日には「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」、11月19日には「盛れ!ミ・アモーレ」のパフォーマンスが公開された。

Juice=Juice - 「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの? / THE FIRST TAKE

 「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」は2019年リリースの楽曲で、当時は宮本佳林をはじめとしたオリジナルメンバー5人が在籍していた。発表当時から人気が高く、特に女性リスナーへ刺さる歌詞が評判を呼び、MVは1000万回再生を超えている。作詞作曲を担当したのは、「盛れ!ミ・アモーレ」と同様に山崎あおい。彼女のハロプロ楽曲ヒットメーカーとしての地位がこれによって確立したのは間違いないところだろう。

Juice=Juice - 盛れ!ミ・アモーレ / THE FIRST TAKE

 そして11月19日、再びJuice=Juiceが登場し、「盛れ!ミ・アモーレ」の一発録り公開された。ちょうど同日は『Juice=Juice Concert 2025 Queen of Hearts Special Flush』と題した日本武道館ワンマンコンサートの日でもあった。オリジナルメンバー在籍時の代表曲と、現在のメンバーたちが作り上げた新たな代表曲が、こうして『THE FIRST TAKE』の場で続けて披露されたのだ。

 SNS発の盛り上がりからライブ会場での熱狂、そして『THE FIRST TAKE』という舞台での証明。多方向から光が差し込む現在地を経て、ここからさらにJuice=Juiceのバズと勢いは広がっていくのか、引き続き注視していきたい。

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