連載『lit!』第57回:Juice=Juice、文坂なの、HiiT FACTORY、放課後プリンセス……夏を見据えたアイドルの勝負作
今年も夏がやってきました。アイドルにとっては、とりわけ特別な季節です。特に夏フェスなどの大型イベントはアイドルファンに自らの魅力をアピールする大きなチャンスであり、ファンとのひと夏の思い出を作る場でもあります。この時期の新譜は、そんな夏のイベントラッシュを見据えた勝負作揃い。予習も兼ねてチェックしておきましょう!
『プライド・ブライト/FUNKY FLUSHIN'』Juice=Juice
結成10周年を迎えたJuice=Juiceが2023年第1弾シングルを両A面でリリース。「プライド・ブライト」はギターのカッティングとシンセのフレーズが耳に残るロックナンバーです。ハロプロ作品ではすっかりお馴染みの山崎あおいが作詞作曲を手がけており、〈あなたにだって奪えなかった プライド〉といったワードに象徴されるような意志の強さだけでなく、その裏で抱える葛藤も含めて豊かに描き出す表現力が光ります。
もう1つの表題曲「FUNKY FLUSHIN'」は山下達郎が1979年にリリースした楽曲のカバー。現在でもライブの定番曲として愛され続けているほか、かつて少年隊がカバーしたことでも知られています。近年「プラスティック・ラブ」(竹内まりや)や「DOWN TOWN」(シュガー・ベイブ)といったシティポップのカバー曲では大人っぽさを打ち出してきた彼女たちですが、今回のMVはプールサイドで眩しい笑顔を見せるアイドルらしい仕上がりに。ディスコでの夜を描いた原曲のイメージともひと味違うものになりました。本作を携え、この夏は4年ぶりに『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』への出演が決定、新曲の披露にも期待がかかります。
『C級noロマンティック』文坂なの
関西を拠点に活動しジワジワと注目を集めているソロアイドル・文坂なの。ニューシングル表題曲「C級noロマンティック」は1980年代のテクノ歌謡をアップデートしたサウンドが気持ちいい1曲です。歌詞においてもちょっぴりレトロな言語感覚が目立つ一方、巧みな押韻は現代的で、懐かしさと新しさが絶妙な塩梅で融合しています。MVはカップリングの「ため息さえも」と合わせて2曲分制作されており、往年のアニメのオープニングとエンディングを思わせる世界観が素敵です(フォントのセンスも最高!)。プロデュースはレコライドや月刊プロボーラー(現ゲッカンプロボーラー)での活動のほか、KOTOをはじめとした数々のアイドルソングでも知られる佐々木喫茶が手がけています。
ここ数年、シティポップブームの発展とともに80年代女性アイドルの楽曲についても再解釈が進んでいる感がありますが、その多くはソロアイドルによるもの。文坂なのによるネオ80'sサウンドも令和のシーンにどこまで広がっていくか、注目したいところです。