いきものがかり、挑戦を重ねながら老若男女を楽しませる歌の力 地元を沸かせた『こんにつあー!! 2025 ~ASOBI~』

いきものがかりの最新ツアー『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2025 〜ASOBI〜』の最終公演が7月19日・20日、横浜アリーナで開催された。
最新アルバム『あそび』を携えた今回のツアーは有明アリーナ、Aichi Sky Expo、大阪城ホール、横浜アリーナで計8公演開催。アルバムの楽曲はもちろん、ライブの定番曲や未発表の新曲などを交えたセットリスト、観客との一体感を生み出す演出、そして、“1曲1曲を大切に届けたい”という意思を感じる演奏を含め、今のいきものがかりの魅力を存分に味わえるステージが繰り広げられた。
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前日の18日に関東地方の梅雨が明け、この日の横浜の最高気温は33度。開演30分前に会場に入ると、そこには子どもからお年寄りまで、幅広い年齢層のファンが笑顔でいきものがかりのライブを待っていた。ゆったり感と期待感がちょうどいい感じで混ざり合う、本当にいい雰囲気だ。
18時に客席の照明が落とされると、吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(Gt/Pf)とバンドメンバーが円陣を組んでいる様子がスクリーンに映される。吉岡が「横浜、中華街があるからね。ちゅーか、最高のライブになるよ!」と叫んで気合いを入れ、2人揃ってステージへと向かう。メインステージの真ん中から登場した吉岡と水野は観客に挨拶しながら客席に降り、センター席の中央に設置されたサブステージ(メインステージの他、3つのサブステージが用意されていた)へと移動。


「ペンライト、売り切れちゃいましたね。すごい売れてるんだなーって思われるかもしれないけど、僕の発注ミスです(笑)」「『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2025 〜ASOBI〜』スタートです」(水野)というトークから、『あそび』に収録された「コイスルオトメ - From THE FIRST TAKE」へ。水野のピアノ、吉岡の歌がゆったりと広がり、観客の心を一瞬で惹きつける。2番からは水野がギターを持ち、バンドメンバーと一緒にドラマティックな盛り上がりを演出。続く「気まぐれロマンティック」ではファミコン風のアニメ映像とともに心地よい高揚感が広がり、吉岡と水野はセンター席の前方に置かれた別のサブステージに移動。一緒にジャンプしたりしながら、揃いの振付で一気にテンションを上げていく。


「勇気を出して言っちゃうよ。“地元”神奈川、横浜公演です!」(水野)という挨拶、「みなさん! こんにつあー!」の大合唱の後は、モータウン系のリズムが楽しい「キミがいる」。楽しく盛り上がりながら2人はメインステージへ。冒頭3曲でオーディエンスとの距離をしっかり近づけ、ナチュラルな一体感を生み出してみせた(ステージの上、バンドメンバーの後ろにも“オンステージシート”に座る観客がおり、水野曰く、「尊敬する小田和正さんの真似をしました」だそう)。
「いつだって僕らは」で爽やかかつ力強いバイブレーションを描き出したあと、いきものがかりの奥深い音楽性をじっくり堪能できるシーンが続いた。

アルバム『あそび』収録曲「彩り」では、レコーディングに参加した小田急沿線大学の学生たちの合唱の音源を使い、“大切な人を想う”というメッセージを手渡す。続く「ありがとう」はライブ前半のハイライト。何度もライブで聴いてきた楽曲だが、一つひとつのフレーズに生々しい感情を吹き込む吉岡のボーカルによって、新鮮な感動が伝わってきた。

「『あそび』はいろんなチャレンジをしたアルバム。次の曲は初めて、メンバー以外の人に歌詞を書いてもらいました。ツアーでやればやるほど(歌詞の)物語を解釈する時間になっています」(水野)と紹介されたのは、蓮見翔(ダウ90000)の作詞による「あの日のこと meets 蓮見翔」。車の中の2人のやりとりを描いた歌詞は間違いなく、いきものがかりの新機軸だ。
新曲「生きて、燦々」(10月からNHK総合で放送されるTVアニメ『キングダム』第6シリーズオープニングテーマ)のコーラスパートを約1万人の観客が合唱し、それをCD収録音源としてレコーディングするというコーナーを挟んでから演奏されたのは、「帰りたくなったよ」。上白石萌音のカバー(コラボレーションアルバム『いきものがかりmeets』収録)に影響を受けたという特別アレンジで披露され、原曲の新たな魅力を引き出していた。さらに吉岡の作詞・作曲による「夕焼けが生まれる街」へ。ハンバート ハンバートとのコラボで制作されたこの曲には、吉岡自身の地元での思い出が色濃く反映されている。様々なアーティストやシンガーとの出会いによって、いきものがかりの音楽世界はどんどん広がっているーーそのことを実感できたのも、今回のツアーの大きな収穫だったと思う。本間昭光(Key)を中心にしたバンドの演奏も絶品。室屋光一郎率いる弦カルテットを交えたアンサンブルが、今のいきものがかりの音楽をしっかりと支えていたことも記しておきたい。


後方のサブステージに再び移動し、「ブルーバード」からライブは後半へ。本間のハーモニカの音色が印象的だった「うるわしきひと」、ラテンのフレイバーをたっぷり注いだ「うきうきぱんだ」(ストリングス隊の4人が“パンダの頭”をかぶって踊った)、オーディエンスがタオルを回しまくった「じょいふる」とアッパーチューンを続け、圧倒的な解放感を生み出した。

「みなさん、お楽しみいただけましたでしょうか? 横浜アリーナ、すごい久しぶりで。みんなに甘えちゃって、温かいライブになって……。結成したときは地元の駅で(ストリートライブをやって)止まってくれる人が0だったときもあったのに、こんなにいろんなところから来てくれて、本当に夢みたいです。こんなに素敵なライブをありがとうございました」
目をウルウルさせながら吉岡が語った後、本編最後は「笑顔」。いろんなことが起きる日々を見つめながら〈でもぜんぶ笑えたらいい〉〈そうやって生きていこう だから僕は強くなりたい〉というフレーズを手渡す場面は、すべての観客の記憶に強く刻まれたはずだ。


アンコールを求める大歓声のなか、再びステージに姿を見せた吉岡と水野。「自分たちのライブを特別なものにしてくれるのが地元の公演なんだなって思いながら、アンコールの声を聞いていました。ありがとうございます」(水野)と感謝を言葉にした後、「YELL」を2人だけで披露。2人体制になってから始まった「水野のピアノ、吉岡の歌」による演奏も、今回のツアーによってさらに深みを増したようだ。

さらに『あそび』の収録曲「遠くへいけるよ」、そして「前に進んでる姿を見てもらいたくて、一番最後は新曲をやろうと思います」(水野)という言葉に導かれた「生きて、燦々」を奏で、ライブはエンディングを迎えた。
これまでの曲を大切にしながら、新しいことにも意欲的にチャレンジし、誰もが楽しめるライブへと結びつけるーーいきものがかりの真っ当で真摯なスタンスをたっぷりと実感できる、充実のステージだった。「生きて、燦々」の素晴らしさを含め、この先の2人の姿を想像できたことも今回のツアーの大きな意義。どんな人も心から楽しめて、いつだって新しい。こんなグループは他にないと本気で思う。


























