広島発3ピース the奥歯's、パンクで叫ぶ等身大の“優しさと弱さ” THE BLUE HEARTSや銀杏BOYZから受けた衝撃も
「愛されたいと思いながらバンドをやってる」（シュント）
――制作はどのように進めているんですか？
ハルマ：今回のアルバム含め、毎回めっちゃケンカしながら作ってます。曲を書いているのはシュントだけど、僕も意見をめっちゃ言うので。シュントが作ってきた曲がよくなかったらよくないって言うし。
シュント：そうだね。
ハルマ：シュントに作ってもらったメロディを、何個か合体させながら1つの曲にしていくんですよ。僕はメロディを聴いて組み合わせの案を考えて、スタジオで「こうしたらいいと思うんだよね」と伝えるんですけど、シュントにも「いや、こうしたいんだよね」という言い分があるからケンカになるんです。
シュント：兄ちゃんから「こうしたい」って言われたら、俺が30分ぐらい不機嫌になって、「じゃあやるか」って再開して。そしたらまた「こうしたい」って言われて、30分ぐらい不機嫌になって……。
ハルマ：そうやってケンカを繰り返しながら毎回作っていくという。
ジン：僕はそれをただ見守ってる（笑）。
ハルマ：あはは！ でも最終的に多数決なので、「ジンはどう思うの？」ってなるんですよ。だから実はわりと決定権を握ってるというか。
ジン：多数決になったらもちろん自分の意見を伝えるようにしてるんですけど……これは初めて言うけど、「どっちもいいな」と思ったら、ちょっとかわいそうな方に味方しちゃう（笑）。
ハルマ：やさしいヤツだな（笑）。曲はそうやってスタジオで組み立てるんですけど、歌詞はレコーディング当日までできてないこともめっちゃありますね。今回のアルバムも、半分くらいの曲はそうだったんじゃない？
シュント：そうですね。学生時代から、ずっとこういう性格なので。
ハルマ：宿題とか後回しにしてたタイプだろ？
シュント：そう。夏休みが始まった時は「最初にやっちゃおう！」と思って1～2ページ進めるんだけど、残りをやるのは結局最後になっちゃう。
――そういうタイプだったんだろうなと、「詩の歌」を聴くとなんとなく想像できます。
シュント：この曲を書いた時はもうギリギリすぎて、「歌詞を考えて書くのは、一旦やめよう」と思って。
――考えるのをやめた結果、サビでは〈愛して殺して／僕は僕でいたいんだよlove me〉と歌っていますね。
シュント：僕、「人から嫌われたくない」という気持ちが強い人間だし、愛されたいと思いながらバンドをやってるので。ライブ中とか突き抜けた瞬間には「もうなんでもいいや」って気持ちになれるんですけど、そういう時にはここで歌っているようなことばかり考えてますね。
――今回のアルバムには、“大人になれない／なりたくない”という感覚を歌った曲が多いですよね。「トラッシュチルドレン」では〈鉄パイプ／ぶん回し／子供みたいに泣いて誰も構っちゃくれねぇ〉と歌っているし、「レツパン」では〈鉄格子ん中起死回生／うるせいジジイに用はねぇ〉と歌っている。「パジャマのままで飛んで」や「ティンカーベル」は『ピーター・パン』をモチーフとした曲かと思います。
シュント：自分このまま“大人子ども”になっていくのかな？ と思うと、恥ずかしいんですよね。さすがに大人になっていかなきゃって、最近思い始めてるんですけど。
―― どんな時に「まだまだ子どもだな」と感じますか？
シュント：やっぱり人と会話している時ですかね。あと、時間にルーズだし。ドデカミンとか駄菓子がいまだに大好きだし。そういうところは、変えたくないけど変えなきゃなって思います。
ハルマ：えっ？ 変えなくていいでしょ！ ドデカミンが好きでいいし、駄菓子も好きでいい。
ジン：素敵だと思うよ。
シュント：いやー……。2人に甘えすぎちゃってるんですよ。ちゃんと怒ってくれるし受け止めてくれる、父と母みたいな存在だから。
ハルマ：いや、兄だけどな（笑）。
――ハルマさんとジンさんは、シュントさんの書く曲をどのような気持ちで受け止めているんですか？
ハルマ：シュントの書く曲はおもろいなって思ってます。僕は今回のアルバムの中だと「ハニーハニー」が好きなんですけど、〈たやすく眠れたかい〉っていい歌詞ですよね。確かに好きな人には「ちゃんと眠れててほしい」と思うよなって感じたし。
シュント：恥ずかしい……。
ハルマ：曲を聴いて、「シュントはこういう感情になっているんだ」と知れるのがおもろい。それに僕は自分の弱みを人に見せられないところがあるので、曲を聴いて「あっ、俺は今、こういう気持ちなのかもしれない」と気づかされることもあります。
ジン：僕はライブでコーラスをしている時に、シュントの感情に共感しながら声を重ねている感覚があって。昔からずっと自己表現が苦手だったんですけど、今はthe奥歯'sの音楽を通して、自分の伝えたいことをちゃんとアウトプットできているように思います。それが僕のモチベーションになってますね。
初ワンマンへ意気込み「抱きしめるつもりでやります」
――いいバンドだし、いいアルバムだなと思いました。今後の活動も楽しみですが、まず、5月6日に、渋谷CLUB QUATTROで初のワンマンライブが開催されますね。会場の規模も過去最大級です。
ハルマ：小バコでかますみたいなことは得意になってきたし、今回のアルバムには、ちゃんと遠くまで飛ばせる曲が入っていると思うので。ここからもっと大きいバンドになりたいと思っていますし、クアトロワンマンは成功させたいですね。
シュント：登竜門のようなライブハウスだと思っているので、「やるぞ！」って気持ちです。
――そして5月11日には、ホームのライブハウス・広島ALMIGHTYでのワンマンライブがあります。
シュント：広島ALMIGHTYは、the奥歯'sの結成と同じくらいのタイミングでできたライブハウスです。一緒に成長してきたと思っているし、店長の今谷（修司）さんにはめっちゃお世話になっていて、ALMIGHTYでワンマンができるのは本当に嬉しい。ソールドアウトさせたいし、恩返しができたらいいですよね。当日は「本当にありがとうございます」という気持ちが伝わるように、今谷さんを抱きしめるつもりでやります。
ハルマ：それとお客さんもね。初期から来てくれているお客さんは、僕らが広島でライブをすると今でも来てくれたりするから、この日もきっと来てくれるだろうと思っていて。そういう人たちにも「ありがとう」と伝えられたらと思ってます。
シュント：でも、ワンマンって1時間半くらいですよね？ 今は「疲れないかな」と心配で。
――初めてのことですもんね。
シュント：だから当日に備えて走ろうかなと思ってます。2ビートの曲もいっぱいあるしね？
ジン：確かに。僕も走るか……。最近、2ビートを叩くのが楽しくなってきたんですよ。最初は苦手意識があったんですけど、尊敬する先輩にコツとかを聞いているうちに合点が行くことが増えてきて、面白さに気づけたんです。今はグルーヴを上手く出せている気がして、それがすごく気持ちいい。ワンマンでも楽しく叩けたらと思います。
――今後どんなバンドになりたいですか？
ハルマ：アルバムを出して、ライブで曲を成長させて、もっと“奥”に伝わるバンドになりたいなと思いますね。あと、フェスとかにちゃんと出られるバンドになりたい。
シュント：僕はこのバンドのことをみんなに好きになってほしいな。
ジン：僕はバンドを長く続けられたらそれでいいです。
ハルマ：それ、めっちゃいいな。
シュント：俺もそう思う。
――長く続ける中で、今後どんな曲が生まれるのか楽しみにしてます。
ハルマ：はい。僕たちも楽しみです。
シュント：僕らは結構飽き性だから、作る曲も変わっていくかもしれないけど、その変化も愛してもらえたら嬉しいです。
◾️リリース情報
the奥歯's 2ndアルバム『光のハミング』
2025年4月2日（水）発売
＜収録曲＞
1.パジャマのままで飛んで
2.レツパン
3.デスキス
4.スパイキーハート
5.君のままで
6.ティンカーベル
7.風になれたら
8.アラウンド・ザ・ワールド
9.さらば、地球星人
10.メランコリックナイト
11.詩の歌
12.トラッシュチルドレン
13.ハニーハニー
◾️ツアー情報
『the奥歯's 旅するニートツアー』
05.06（火祝）東京 渋谷CLUB QUATTRO★ [SOLD OUT]
05.08（木）福岡 天神Queblick★
05.11（日）広島ALMIGHTY★ [SOLD OUT]
05.28（水）三重 松阪M'AXA
06.04（水）宮城 仙台enn 2nd
06.06（金）北海道 札幌BESSIE HALL
06.14（土）群馬 高崎the Groove TAKASAKI
06.15（日）神奈川 横浜F.A.D YOKOHAMA
06.17（火）東京 八王子RIPS
06.19（木）茨城 水戶LIGHT HOUSE
06.22（日）岩手 盛岡the five morioka
06.24（火）愛知 名古屋シャングリラ★
06.25（水）大阪 心斎橋BRONZE★
07.03（木）岡山CRAZYMAMA 2ndRoom
07.08（火）兵庫 神戸MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
07.16（水）大分CLUB SPOT
07.17（木）福岡 小倉FUSE
07.22（火）長野 松本ALECX
07.23（水）岐阜 柳ヶ瀬ANTS
07.25（金）静岡UMBER
07.29（火）京都MUSE
08.01（金）香川 高松RIZIN'
08.06（水）千葉LOOK★
08.09（土）広島CLUB QUATTRO★
（★：ワンマン公演）
