米津玄師×羽生結弦「BOW AND ARROW」対談から見るアーティスト&アスリートの価値観、相反性と近似性

米津玄師と羽生結弦が語る“幸せ”と“犠牲” 彼らの共通点とは?

 そんな中、対談終盤の「“幸せ”と“犠牲”」にまつわる話題では、そこまでの印象から一転、非常に近しい価値観で2人が内省的に自身の内面を語り合う姿が映し出された。『メダリスト』作中でも“幸せ”と“犠牲”に関する考え方は明浦路司と夜鷹純という2人のキャラクターをもって対比的に描かれており、米津と羽生がそのどちらにも理解を示す点も印象的だ。

 その後も、犠牲を犠牲と思わず、ともすればそこまで何かにのめり込むこと自体に幸せを見出し、時には半ば自分を追い詰めるように己の存在証明を図る価値観にも揃って強く同調する2人。畑は違えどその道を極める両者の近似性、もとい彼らの危うさとも呼べる一面が、ここで明瞭に浮き彫りになったと言えるだろう。苦労を苦労と思わない、あるいは楽な道を採る選択肢もある中で、それでも脇目も振らず自ら望んで茨の道を突き進むような。ある種不器用な人間としてこの世に生まれ落ちた上で、そんな己の生きる道を「楽しい」と確かに肯定する。そのような成熟した人間性も彼らの共通点であり、大きな魅力なのだと強く感じさせるワンシーンだった。

 あらためて思い返せば、今回の『メダリスト』アニメ化、ひいてはフィギュアスケートや「BOW AND ARROW」を取り巻く場においては、実にさまざまな人々の縁や出会いが交錯していたように思う。スポーツ、、そして音楽。普段はジャンルやカテゴリもまったく異なる面々だからこそ、一連の邂逅は非常に尊く貴重な機会でもあったはずだ。今後もそれぞれのフィールドで、きっと彼らは今以上に多くの人々へ多大な影響を与えていくに違いない。

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