LINKIN PARK、新体制で示した揺るぎないアイデンティティ 歓喜の声で溢れた来日公演を観て

2024年もっとも衝撃的だった出来事のひとつにLINKIN PARKの再始動がある。このバンドを象徴する“顔”であり“声”だったチェスター・ベニントンが他界したのは2017年7月のこと。それ以降、21世紀に入ってからの音楽シーンを牽引してきたこのバンドは沈黙を続けてきたが、昨年9月に新体制での活動を公式にスタートさせ、11月には『FROM ZERO』と銘打たれた通算8作目のオリジナルアルバムを発表。そのタイトル自体が原点からの再スタートを思わせるものだったが、同作登場から3カ月経たないうちに実現に至った先頃のジャパンツアーは、彼らのアイデンティティの揺るぎなさ、そして新たな進化がすでに始まりつつあることを印象づけるものだった。

2月11日、会場となったさいたまスーパーアリーナは超満員。公演チケットは事前にソールドアウトになっており、ここ日本での注目度と期待感の高まりを実感させた。開演定刻の午後6時を6分ほど過ぎた頃、場内BGMの流れが一転し『ポケットモンスター』関連の楽曲が流れると、客席には楽しげなどよめきが起きる。するとほどなく場内が暗転し、神秘的な照明が交錯するなかオープニングSEが流れると、LINKIN PARKの名を連呼する声が広がっていく。

いつのまにかステージ上の配置に就いていた6人が最初に披露したのは、『METEORA』(2003年)から生まれた代表曲のひとつ「Somewhere I Belong」だった。いわゆる爆発力の強い楽曲ではないが、このバンドのシグネチャーサウンドともいうべき音像に、長きにわたり失われていたものを取り戻すことができたかのような感動を覚えずにいられない。しかも〈I want to heal, I want to feel/Like I’m close to something real/I want to find something I’ve wanted all along/Somewhere I belong〉「癒されたい、感じたい/真実に近付いているように/ずっと求めていた自分の居場所を手に入れたい」と繰り返される歌詞は胸に迫るものがある。場内は当然のように大きな歓声に包まれていた。それは文字通り、LINKIN PARKとの再会に歓喜する声の渦だったように思う。


そのまま曲は「Crawling」、「New Divide」と続いていくが、序盤から馴染み深い楽曲が続く展開にオーディエンスも一体感を増していく。そして4曲目には早くも「The Emptiness Machine」が登場。『FROM ZERO』のリリースに先がけて最初に公開されたこの楽曲は、この場に居合わせるほぼすべての人にとって「新生LINKIN PARKとの出会いの曲」であったはずだ。この曲を初めて耳にした際、より厳密に言うならば2コーラス目でエミリー・アームストロングの歌唱が聴こえてきた瞬間には鳥肌が立つような興奮をおぼえたものだが、この夜のライブにおいてもまさにその箇所で歓声の音量が最高潮に達していた。


実際、会場を埋め尽くしている人たちの多くが、このバンドに新たな“顔”と“声”をもたらしたエミリーの存在について高い関心を寄せていたはずだし、彼女のボーカルパフォーマンスがどれほどのものであるかを見きわめてやろうという気持ちを少なからず抱いていたことだろう。そして結果的には、誰もが納得以上の肯定に至っていたのではないだろうか。そう思えるほどに彼女の歌唱は新鮮であり、『FROM ZERO』におけるその見事さがフロック(まぐれ)ではなかったことを証明するに足る説得力を持ち、しかも過去の楽曲にも無理なく溶け込んでいた。























