Apes、インナージャーニー、Kanna、メとメ、板歯目……『次世代pre. NEXT GENERATION LIVE 2025』出演8組を徹底解剖
Creepy Nuts、羊文学、ハンブレッダーズ、Survive Said The Prophet、w.o.d.など、オルタナティブな感性とキャッチーなソングライティングを兼ね備えたバンド/アーティストが多数所属する音楽プロダクション&マネージメント・株式会社次世代。同社主催の新人コンベンションライブ『次世代pre. NEXT GENERATION LIVE 2025』が1月31日に新宿LOFT&BARにて開催される。
2022年に配信ライブ形式で行われて以来、約3年ぶりの開催となる今回。2021年に次世代が初めて開催したオーディションでグランプリを獲得し、昨年メジャーデビューを果たしたApes、映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』やNHK土曜ドラマ『パーセント』などの主題歌も担当してきたインナージャーニーをはじめ、Kanna、メとメ、カラコルムの山々、板歯目、Chim Chap、Black Leechといった期待の8組が登場する。開催に向けて、各アーティストの魅力やライブでの注目ポイントなどを紹介していく。(信太卓実)
インナージャーニー
心の隙間にさらりと浸透する優しくも力強い歌と、余計な装飾なしでその良さを際立たせるアンサンブル。そんな信頼関係の上に成り立つシンプルさこそがバンドの醍醐味なのだということを、インナージャーニーは思い出させてくれる。カモシタサラ(Vo/Gt)が10代限定フェス『未確認ロックフェスティバル2019』でファイナリストになったことをきっかけにサポートメンバーで結成され、現在は3人組として活動中。バンド名の通りandymoriが共通のルーツのようだが、憧れを追うだけはなく、カモシタの詞を通して“オールライト”を届けるのがインナージャーニーの核。広い宇宙や世界の果てに思いを馳せたり、〈もしもね、僕が死んだら〉(「グッバイ来世でまた会おう」)という一見突拍子もない言葉から歌が始まったりするが、最後は自身の足元を見つめて前へ進むべく、胸の奥に炎を灯していく。囁くような歌に宿る、未来を目指すしたたかな意志。その温度感がとても心地いい。躍動感溢れるギターソロやロックンロールな演奏で魅せるステージも目が離せないこと間違いなし。
Kanna
もしJESSE(RIZE/The BONEZ)やアンソニー・キーディス(Red Hot Chili Peppers)やR-指定(Creepy Nuts)のいいとこ取りをしたラッパーが、ロックの名リフの上で暴れ回ったとしたら? そんな妄想を具現化してみせた「Boys&Boys」は衝撃だった。〈HiphopからRockまで俺らの土俵〉というのはまさにその通りで、90’s〜00’s直系のロックを鳴らしてるのに、こんなにもシームレスに時代とジャンルを飛び越えられるのは、サンプリングやDTMで遊ぶかのように自由に音を紡いでいるから。窮屈なルールやコンプラ、下を向く日々に“Take It Easy”を差し出しつつ、〈誰に何言われようともGoing〉としっかりセルフボースト。脱力したラップをリズミカルに繰り出す実力派MC Nouchiと、エディ・ヴァン・ヘイレンからジョン・フルシアンテまでヒーロー譲りのギターをテンポよく聴かせるKoshi(Gt)。ネットやバーチャルが遊び場となった令和の感性でミクスチャーロックを甦らせる、2001年生まれの最強コンビだ。どこか懐かしいのに明らかにフレッシューーこの楽しさはライブハウスでさらに増幅するに違いない。
メとメ
あるある! 男の筆者でも思わずそう叫びたくなった〈毎日開催女子会議/恋愛は団体戦〉(「過去たらし」)のひと言。そんな老若男女誰もが共感してしまうささやかな出来事を歌うのがメとメだ。本音と呼ぶのも堅苦しいほどさらりと聴ける日記のような歌詞は、ファミレスでドリンクバーでも飲みながら和気藹々と書き綴ったみたいに自然体。和歌山・長野・愛知と異なる場所で生まれた3人は偶然にも名古屋で出会い、SNSより、三度の飯よりも、真っ直ぐに音楽を信じている。やり切れないことばっかだけど、クソってほどではないよなーーそんな普通の日々の歌って意外となかったんだなと気づかされた。日常をほんの少しの非日常へ昇華するのがライブハウスだとしたら、今こそ見たいのはこんなバンドかもしれない。感情と演奏が直結してるから、ギターの1ストローク、ドラムの1ビートだけでもスカッと気持ちいい。匿名のタイムラインより、目と目を合わせた体温の通ったロックを。フロアで音に合わせて好きなフレーズを口ずさんだ瞬間、ちょっとだけ生活が楽しくなりそうだ。
板歯目
ザ・クロマニヨンズのような猪突猛進さとUNISON SQUARE GARDENのようなテクニカルな演奏力を合わせ持ち、張りのある真っ直ぐな叫び声で〈固定概念をぶっ壊せ!〉(「地獄と地獄」)とぶち込む。原生生物以前に存在していた生物群・“板歯目”を掲げることで、決まり事ばかりで本音が押し込められた社会、人々の往来が孤独を浮き彫りにする都会の冷たさに対して、牙を剥き出しにしているかのようだ。聴き手の野生的思考にガンガン訴えかけるその姿勢は、人間の根源的欲求こそが芸術や音楽を形作っていることを今一度想起させる。閉塞感にはっきりと中指を立てる「でっかいサンダル」から、言葉の勢い1つで突っ走る「アンチョビットマシンガン」「dingdong jungle」まで、どれも皮肉が効いてて最高だ。3ピースとしての活動が長かったものの、ここ1年ほどは千乂詞音(Vo/Gt)、庵原大和(Dr)の2人編成で活動中。サポートベーシストを入れてのライブになるが、パワフルかつ技巧的な演奏から生まれる爆発力がとにかく見もの。令和版爆走ガレージパンクを体感せよ。