香取慎吾が萩本欽一を連れて帰ってきた『仮装大賞』 面白さと優しさ、トニセン参戦……放送に寄せて
いよいよ今夜1月13日19時より、萩本欽一と香取慎吾が司会を務める『欽ちゃん&香取慎吾の第100回全日本仮装大賞』(日本テレビ系)がオンエアされる。「欽ちゃん」の愛称で親しまれてきた萩本によって同番組がスタートしたのは1979年12月のこと。第65回から参加した香取の生まれた年が1977年であることを踏まえると、どれだけ長く、そして深く愛されてきた番組かがわかる。
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そんな『仮装大賞』が100回という大きな節目を迎える。欽ちゃんは83歳になった。若き日の欽ちゃんは、坂上二郎とともにコント55号としてステージをめいっぱい使ってお笑いを披露してきた。体をめいっぱい使って笑いを取ってきただけに、年を重ねて思うように動けなくなったことは、誰よりも自分自身が悔しい思いをしてきたに違いない。
実際、欽ちゃんは1985年に当時のレギュラー番組をすべて降板して、休養を宣言している。それでも唯一『仮装大賞』の司会を続けてきたのは、この番組の主役が仮装作品を披露する視聴者たちであるとプロデューサー陣から言われたことが大きかったという。欽ちゃんはその主役たちに寄り添って司会をしているのであって、勝手に「辞める」とは言えない立場だ、と。
だが、そうして続けてきた『仮装大賞』も、ついに限界を迎える。2021年2月に「今回でね、私この番組終わり。長い間、ありがとう」と勇退を宣言したのだ。「体力的に無理だった」と日本テレビ側と相談する前に、収録中の本番でぶちまけてしまったというのも欽ちゃんらしいエピソードだ。
そこから日本テレビ側の3、4年がかりの説得により、欽ちゃんの気持ちは少しずつ変わっていく(※1)。そして2024年に放送された第99回でステージに戻ってくると、客席からは「欽ちゃん!」という声も飛んできた。そして「慎吾に番組を置いて去ったつもりだったの」という欽ちゃんに、香取は「僕、大将がやらないなら、やんないからね」と言われてしまったとも。涙を浮かべて「だから、来た」「来て、よかった」の言葉に、こちらまでグッと込み上げるものがあった。
その回の『仮装大賞』は、「慎吾が相当頑張ってくれた。覚悟を決めたみたいだった」「『欽ちゃん任せとけ。いつもと違うよ』っていうのを感じた」と言い、「今まででいちばん面白い」と香取に告げたとも。香取は、本番でなるべくカメラからフェードアウトしようとする欽ちゃんを引っ張り出すような仕草をしていた。「来るな」と拒む欽ちゃんに、食らいついていく香取。その遠慮のないやりとりに思わず笑ってしまった。
きっと欽ちゃんの“面白い”のなかには“優しい”の成分がふんだんに含まれているのだろう。第100回の『仮装大賞』に先駆けて、1月5日に放送された特番『83歳の欽ちゃん!最後の新番組 あの場所に1000人で集まろうか?』(日本テレビ系)では、欽ちゃんがどんな思いでテレビやお笑いに向き合っているのかを知ることができた。
今のテレビについて「みんなすごく作り方がうまくなった」と心配する必要がなくなった一方で「悪く言えば古典に入った」と感じていること。思い描いていた結果に繋がらないと思われたら、すぐに切ってしまう。それが世の中をつまらなくしている。「ダメなやつのダメな部分が長所になると考える大人がいない」「人生は困ったり誰も相手にしてくれないところから、這い上がるのが面白いんだよ」と次々に出てくる名言に感服した。
なかでも印象に残ったのが「優しくないと面白くなれない」の言葉だ。頭が真っ白になってしまったという新人に対して「次に出すのはやめよう」というのは簡単だ。でも、欽ちゃんはそうは言わない。「こういう舞台は失敗がないから。好きなようにやれば大丈夫」と言い、結果が出せなかったとしても、「人間ってここからが面白いんだよ」と逆転の物語を紡ぎ出そうと瞳を輝かせる。