朝ドラ『ブギウギ』でも話題の足立紳監督作『雑魚どもよ、大志を抱け!』 インナージャーニーが主題歌「少年」で歌う“人生”

インナージャーニーが「少年」で歌う“人生”

 いつの時代も普遍的に人の胸に残るのは、歌いたくて、伝えたくてたまらない気持ちから生まれる音楽だろう。インナージャーニーというバンドは初めて聴いた時からそんな純粋な表現欲求を感じるバンドだと思っている。

 2019年結成のインナージャーニーはカモシタサラ(Gt/Vo)、本多秀(Gt)、とものしん(Ba)、Kaito(Dr)による4ピースバンド。全国のサーキットイベントや『VIVA LA ROCK 2021』にも出演し、着実に活躍の幅を広げている。昨年9月には1stアルバムをリリースし、3月15日にリリースした新曲「少年」は、足立紳監督の新作映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』の主題歌として書き下ろした。

2023年3月24日(金)公開 映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』予告篇

 足立紳は2023年度後期のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の脚本を櫻井剛と共に担当。近年ではドラマ『拾われた男』(NHK BSプレミアム/Disney+)も話題になっている。彼が手がける映画作品も名作揃いだ。そしてその主題歌といえば、登場人物の行き場のない気持ちを代弁する曲が多い。2014年に脚本を手掛けた『百円の恋』は怠惰な生活を送る主人公がふとしたきっかけでボクサーを目指す物語。主題歌であるクリープハイプの「百八円の恋」は情けなさと苛立ちを綯い交ぜにした歌詞と、ヒリヒリとしたバンドサウンドによってエンドロールの最後まで映画の熱気を途切れさせない。尾崎世界観の絞り上げるような歌声の捲し立てが作品を忘れがたく印象づける。

クリープハイプ -「百八円の恋」(MUSIC VIDEO)

 また2016年の初監督作『14の夜』は中学生男子たちの性にまつわる悶々とした気持ちと思春期特有の葛藤が交差する青春映画だった。この物語に寄り添った主題歌がキュウソネコカミの「わかってんだよ」。弱者の叫びや皮肉を笑いをまじえて歌うことの多いバンドだがこの曲は一段とシリアスだ。映画はコメディだがエンディングにこのエモーショナルなロックナンバーが流れることで切ない余韻を強調する。物語のその先で、登場人物たちと肩を組むような頼もしさで作品に寄り添っていた。

キュウソネコカミ - 「わかってんだよ」MUSIC VIDEO

 その他にも、成り上がりヤンキー映画『デメキン』(2017年・脚本)はLEGO BIG MORLの攻撃的なダンスロック「一秒のあいだ」、ボクサーたちの群像劇『アンダードッグ』(2020年・脚本)は力強い石崎ひゅーいの歌謡ロック「Flowers」と、主題歌と作品の呼応性が常に高い足立紳の映画たち。『雑魚どもよ、大志を抱け!』は少年たちが徐々に大人になる現実に直面していく、痛くほろ苦いティーンズムービーだ。シリアスなエピソードも散りばめられており、インナージャーニーの音楽性とはやや距離があるように思っていたのだが、エンドロールで「少年」を聴くとその起用に強く納得した。

2023年3月24日(金)公開 映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』主題歌:インナージャーニー「少年」リリックビデオ

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