アソビシステム発のエンタメは若者と海外になぜ刺さる? 新しい学校のリーダーズ、FRUITS ZIPPERの成功にある潮流を読む力
KAWAII LAB.の新グループとしては、2024年3月にSWEET STEADY、2024年8月にCUTIE STREETがデビューした。特にCUTIE STREETは、デビュー曲「かわいいだけじゃだめですか?」がチャートを席巻。SpotifyのVIRAL TOP 50 最高1位(9月26日付)、CDがオリコンデイリー初登場3位(11月13日付)を記録したほか、MVが公開から34日で1000万回再生を突破し、執筆時点で1800万回以上、TikTokでは楽曲再生数29億回に達し、Billbord|Billbord JAPAN Hot 100では最高2位(11月20日付)を記録するなど、まさに破竹の勢いだ。2025年2月2日に豊洲PITで開催される『CUTIE STREET 1stワンマンライブ』のチケットは、一般発売開始後、1分で完売したという。
KAWAII LAB.が原宿を起点としていることや、カラフルな衣装などは、これまでのアイドルシーンにおいて決して目新しいものではない。ただ、「わたしの一番かわいいところ」「かわいいだけじゃだめですか?」がともに自己肯定感を上げる方向に機能する楽曲であることは、時代の趨勢を鋭く読んでいることを感じさせる。KAWAII LAB.関連のYouTube動画のコメント欄では、運営にメンバーへの愛があることをファンが喜んでいる声も目にする。生きていてなかなか肯定されない時代にフックしたのがKAWAII LAB.の楽曲である。それをTikTokというプラットフォームで一気に広めていく戦略も見事だ。TikTokの短い動画は「かわいい」というシンプルな魅力を見る者に訴求しやすく、それがうまく音楽の魅力と重なれば、さらに強い訴求力を持つ。それゆえにKAWAII LAB.の強みがもっとも発揮される場となっている。
加えて、今年10月から来年1月15日までアソビシステムとTGCによる発掘プロジェクト『ASOBISYSTEM × TGC KAWAII LAB. AUDITION 2024』も開催中だ。これはアソビシステムと、「東京ガールズコレクション」を企画制作するW TOKYOが、新たな才能を発掘・育成するプロジェクトを九州エリアを対象にして開催するというもの。福岡出身でFRUITS ZIPPERのメンバーである月足天音がアンバサダーに就任し、地域を盛り上げ、世界へ羽ばたくことのできるアイドルの育成を目指している。
発足から2年強で4グループをデビューさせ、加速度的に規模を拡大しているKAWAII LAB.が、今回は首都圏ではなく地方に視線を向けていることも注目点だ。アジアの玄関口でもある九州でのオーディション開催はKAWAII LAB.の全国展開、ゆくゆくはグローバル展開につながる新たな一歩になるかもしれない。
なお、2024年6月15日に開催されたガールズファッションフェス『ミュゼプラチナム Presents OKINAWA COLLECTION 2024』には、アソビシステムが企画制作として参加している。これはエンターテインメントの力で沖縄の持続的発展を目指すイベントで、FRUITS ZIPPERも出演しパフォーマンスを披露。次回は2025年6月21日に『OKINAWA COLLECTION 2025』の開催が決定している。また、各地の地方自治体と協業し、地域の魅力を世界へ発信するコンテンツの開発やプロデュースにも注力している。
一方で、新会社や新プロジェクトを数多く始動させていることも見逃せない。
秋元康とWeb3起業家の渡辺創太らが集まり、グローバルなエンターテインメントプロジェクトとして男性アイドルグループの創出と育成をする新会社が株式会社YOAKE entertainmentだ。これはアソビシステム、TWIN PLANET、W TOKYO、Y&N Brothersなどによる合弁会社。秋元康が総合プロデュースを手がける次世代型メンズグループオーディション『MEN’S YOAKE AUDITION 2024』がすでに行われている。
さらにアソビシステム、Activ8、ポニーキャニオンの3社による共同新規事業の「W KAWAII」プロジェクトの立ち上げも発表された。このプロジェクトは、「リアルでもバーチャルでも活躍する、W(ダブル)でKAWAII(かわいい)世界制覇を狙うアイドルグループ」を創出するというものだ。Activ8は、Kizuna AI(キズナアイ)をはじめとしたバーチャルIPのプロデュースに強みを持つ会社である。
ポイントを絞って2024年のアソビシステムを振り返ったが、新しい学校のリーダーズやFRUITS ZIPPERの大ブレイクで浮き足立つどころか、むしろ全方位に新しいプロジェクトを展開している点が印象的だ。キーワードを挙げるなら「グローバルとローカル」「リアルとバーチャル」だろう。海外進出をしながら九州や沖縄でもプロジェクトを始動し、さらにリアルとバーチャルの両方に目を向けている。
2010年代にきゃりーぱみゅぱみゅによっていち早くグローバルへの扉を開き、今もなお時代の流れに敏感な動きを見せ続け、新しい学校のリーダーズやFRUITS ZIPPERといったヒットを生み出しているアソビシステムに、2025年も注目したい。
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