クレナズム、ライブアレンジの妙と熱量 今伝えたいことをやり切った『冬のバリよかワンマンツアー』東京公演

クレナズム『冬のバリよかワンマン』レポ

 けんじろうがギターをテレキャスに持ちかえクリーントーンで聴かせるグルーヴチューン「木村楓」、近しいトーンの16ビートでゆったり聴かせる「あの人の好きな音楽を聴いた」はバースでの萌映の話し声に近いロートーンもいい。若干BPMは上がるが、隙間多めなアンサンブルの「眩しくて」はグルーヴィな曲のセクションに自然に馴染む。切なさが曲全体に滲む中、ズンと響くまことのベースが効いている。実に多彩な音楽的レンジを持ちつつ、軸にあるオルタナティブロックのマインドが曲に透明感を堅持しているのも彼らの特徴だと感じた。これがブラックミュージック由来のミュージシャンだときっとより肉感的になるはずだからだ。

クレナズムライブ写真

 最後のMCでは萌映が2024年を振り返り、国内外ともにとにかくライブをした年だったと話し、新曲も数多く作ることができたという。ただ、順調に見える活動の中でも悔しさやもっとやれたのかもという思いは残ると話し、その思いを「わたしの生きる物語」に託していく。序盤のシューゲイズサウンドが再び到来し、まるで自分たちの軸であると明言しているような選曲だ。そして落ち着きのある赤い照明にメンバーのシルエットが浮かび上がる中、苦い後悔を歌う「花弁」。出口を求めて叫ぶようなノイジーなギターはライブアレンジならではだ。4人それぞれのバックボーンの違いを歌が表現するところを目指して一つになるスタンスは特に終盤の選曲に顕著に思え、ラストの「エピローグまで」の輝度の高い上モノとどこまでも深い低音のコントラストに魅せられた。

クレナズムライブ写真

 新曲も披露し、続くツアーと年内最後の海外(台湾)公演に弾みをつけた4人。アンコールでは誕生日が近いまことと萌映にお祝いの声が贈られ、いい初日を過ごせたムードが充満する。本編で今伝えたいライブをやり切った彼らは潔く「白い記憶」1曲を渾身の演奏で聴かせて終演。音源では軽々とジャンルを超えていく器用な印象も与えるが、リアルで目にする人間くささや熱いライブアレンジに、いい意味で印象が変わる。2025年はどこに向かうのか注目していきたい。

■セットリスト
1.新曲
2.あなたはさよならをここに置いて行った
3.鯨の鳴き声
4.夜に溺れて
5.月のようで
6.ホーム
7.酔生夢死
8.新曲
9.ヘルシンキの夢
10.リベリオン
11.杪夏
12.ひとり残らず睨みつけて
13.木村楓
14.あの人の好きな音楽を聴いた
15.眩しくて
16.わたしの生きる物語
17.花弁
18.エピローグまで

■ライブ情報
『クレナズム 夏のバリよかワンマンツアー 2025 〜夏空に夢を追いかけて〜』
6月7日(土)福岡 LIVE HOUSE OP's
6月14日(土)心斎橋 Music Club JANUS
6月15日(日)名古屋 CLUB UPSET
7月6日(日)東京 CLUB QUATTRO

■関連リンク
クレナズム オフィシャルサイト
https://www.culenasm.com/

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