クレナズム「音楽で恩返しする」 万感の思いで迎えた結成5周年ツアー国内ファイナル公演

クレナズム、5周年ツアー国内ファイナル

 福岡在住の4人組バンド、クレナズムが結成5周年を機に行った『春のバリよかワンマンツアー2024~ハートがうごく5周年~』の国内ファイナル公演が渋谷クラブクアトロで行われた。

 SEでオーディエンスをクレナズムの世界観に引き込んだ後、地元KBC九州朝日放送創立70周年を記念して書き下ろした「ホーム」からライブはスタートした。萌映(Vo/Gt)の清涼感溢れる歌声が場内に響く中、サビでバンドのアンサンブルは4つ打ちに展開。オーディエンスの腕が一斉に上がった。〈叶えたい願い事も 見つけたい僕らしさも この街で探している〉というフレーズには、地元・福岡に力をもらいながら夢に向かってバンド活動を続けるクレナズムの姿が浮き上がっていた。

クレナズムライブ写真
萌映
クレナズム けんじろう
けんじろう
クレナズム まこと
まこと
クレナズム しゅうた
しゅうた

 青白い照明の中「キミのいない世界」を演奏し、萌映が囁くように、感謝の気持ちを込めて「ありがとう」と口にして、ひっそりと「酔生夢死」へ。Aメロを歌って、一気にアンサンブルがスパーク。まこと(Ba)は頭を激しく振りながら、シャープなギターを叩きつける。ダークなギターロックから、サビでは一気に開けたアンサンブルでオーディエンスを引っ張る。“シューゲイザーとJ-POPの融合”を掲げるクレナズムならではの楽曲だ。最後、萌映とけんじろう(Gt)とまことがしゅうた(Dr)が座るドラムセットの方を向いて、ジャーンと弦を鳴らすと大歓声が上がった。

 萌映が『春のバリよかワンマンツアー2024 ~ハートがうごく5周年~』というツアータイトルを噛み締めるように口にし、感慨深そうに「今日は国内ファイナル、渋谷クラブクアトロ編ということでみんな来てくれてありがとうございます! 今日は5周年記念ということで今までのクレナズムをぎゅっと閉じ込めたセットリストになっています。ぜひ最後まで楽しんでもらえると嬉しいです」と宣言。

 続いて、萌映が「夏に入ったばかりですので、次からは夏の曲を演奏しようと思います。アップテンポな曲をやるのでついてきてくれますか?」と言って、「ナツメクル」へ。アップテンポに疾走するバンドアンサンブルに〈夏が始まったようです 僕はこもったまんまで あいつらと格差がついてばっかで 苦しいけど〉という歌詞が乗る。クレナズムには夏の曲がいくつかあるが、決して夏を歓迎しているわけではなく、「ナツメクル」は夏が始まったことでやけくそになっている情景が描かれている。モチーフになっている感情はダークだが、それを極上のキャッチーさを持つギターリフを宿したポップなサウンドに仕上げるのがクレナズム流だ。

クレナズム

 照明が明るくなり、たくさんのオーディエンスの姿が目に入った。その光景を見たまことが「いっぱいだね。みんなクレナズムを知ってくれてるんだって」と、嬉しそうに手拍子をした。クレナズムにはどういう曲が多いかという話題が上がったことが明かされ、「失恋してる曲が多いから、そろそろ明るい恋愛の曲が作りたいっていう話になったんだけど、次やる曲は失恋の曲」と楽しそうに語られた後、「木村 楓」を披露。グローバルリリースされたばかりの台湾のドリームポップバンド、I Mean Usとのコラボ曲だ。萌映はハンドマイクで、ゆらゆらとループするグルーヴに合わせて、体を気持ちよさそうに揺らしながら歌唱。切なくも透明感溢れる歌が浮遊感を高めていく。

クレナズム

 萌映が「クレナズムが生まれて5年が経ちました。まっすぐがむしゃらに走ってきた5年間だったけど、後ろを振り返ったらみんなに支えてもらってました。帰ってこれる場所がいつもここにあること、忘れないでいてください。あなたに寄り添うことができるのなら私たちは歌い続けます」と言って、空間を切り裂くようなギターのノイズからスタートする「ふたりの傷跡」へ。ヘビーなアンサンブルとところどころドスを効かせたような迫力のある萌映の歌が、深い傷を少しずつ癒すかのように響いた。

 しゅうたが「5周年って早かった? 短かった?」と問いかけると、萌映が「私は長かったな。内容がぎゅっと詰まってるというか」と答えた。そして、下北沢THREEで行った東京での初めてのライブで今のマネージャーと出会ったことを楽しそうに話しながら、「5年間も一緒にいてくれてありがとうございます」と感謝を伝えた。萌映が「私たちは福岡のバンドだけど、県外のアーティストからすると、東京は登竜門みたいなもので、(地元からは)離れてるので、お客さんが来てくれるのかなっていう気持ちを背負って毎回来てたんですが、今日は過去最高のお客さんが今目の前に来てくれていて、もう信じられないです」と話し、感極まったような表情を浮かべると、温かい拍手が送られた。

 しゅうたが「僕たちの5周年ということで、次のブロックからは盛り上げていきたいんですけど」と言うと、言葉に詰まり、照れ笑いを浮かべた。この初々しい人間臭さもまたクレナズムの魅力だ。萌映が「ラストスパートなので、もうばばばばばって立て続けにやろうと思ってます」とフォロー。8月に公開される映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』主題歌の「リベリオン」をいち早く披露。萌映が「ラストスパート! みんな本気見せてくれますか?」と呼びかけた後、カラフルな演奏が始まる。オーディエンスのハンドクラップが映えるアップテンポの楽曲で、歌詞も萌映の歌もまっすぐに響いていた。

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