清水翔太は言葉にならない想いに歌で寄り添う 第二の故郷に“ただいま”を届けた武道館公演

清水翔太、“ただいま”を届けた武道館公演

 最新ナンバー「PUZZLE」を歌う際には、25キロ近いダイエットに成功したことを報告。今の体重は約50キロで、一番痩せていたデビュー当時よりも痩せていると満足げ。またダイエットが成功したのは、地元・大阪に拠点を移したことで、安心感によるものが大きいとも話した。現在は、自身の制作の傍ら、大阪にある母校・キャレスボーカル&ダンススクールで特別講師を務めるなど、後進の育成にも尽力している。「PUZZLE」は、そんな清水を育んだ大阪への恩返しの気持ちで制作したという。

 「人は未来に向かって進む生き物で。この子たち(キャレスの生徒)は未来に向かってキラキラしていて、この子たちが僕を救ってくれました」「大切なものを失った経験を持つ全ての人にとっても、お守りのような曲になればいいなと思って作った」と、涙を堪えながら思いを話した清水。大阪からサプライズで登場したキャレスの生徒たち総勢45名を呼び込んで、一緒に歌いつないだ「PUZZLE」ではハンドクラップとコーラスが融合し、最後はゴスペルソングならではのスケール感で会場が一つになった。

 そして本編最後には、東京にも思い出がいっぱいあるし、大切な人もいっぱいいるから、大阪に引っ越したことは寂しいと話し、「大阪に住んでいる今だからこそ、今日の武道館で歌いたいと思い選んだ」という「Tokyo」を披露した。上京した頃に感じた、東京に対するアツく切ない思いを歌詞に託した同曲。胸を叩いたり客席を指したりしながら淡々とラップし、堪え切れず男泣きした。2017年の日本武道館以来の披露となった同曲。当時も歌いながら感極まる場面があったが、同じ涙でもその時とは意味が大きく異なっていただろう。大阪に拠点を移した今の清水にとっての東京は、孤独に震えながら夢だけを頼りに自分を奮い立たせていたあの頃の東京ではない。“アーティスト 清水翔太”を鍛え、様々なことに気づかせ、大切な人たちと出会わせてくれた街。第二の故郷、東京への敬意と感謝に満ちあふれていた。

 アンコールでは「Baby I love you so」など3曲を披露した清水。ブルージーに歌い上げた「花束のかわりにメロディーを」は、この日の清水の思いを実に素直に言い表した楽曲だった。思いを言葉にすることも大事だが、どうしても言葉にできない思いもある。また言葉にすることで壊れてしまうものもある。それでも伝えたい気持ちがある。歌というものはきっと、そんなもどかしさを埋めるために生まれたのかもしれないと思わせてくれた。

 終始、優しく温かいムードでステージを展開した清水。少年のような屈託のない笑顔。ブルージーでエモーションにあふれた歌声。エバーグリーンで胸に染み渡る楽曲の数々。ベスト盤のように新旧の楽曲を披露し、16年経っても変わらない魅力に心酔した2時間半だった。また最後に、大阪に拠点を移し活動のスタンスが少し変化したことに不安を抱えていたファンを気づかい、「俺がどこにいたとしても心の距離は変わらない。いつでも会いに来るよ」と、添えた言葉には、清水の優しさと愛があふれていた。

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