生田絵梨花、全方位に成長を遂げたパフォーマンス力 新たな挑戦欲も垣間見せたツアー『capriccioso』
昨年のツアーファイナルとなった東京国際フォーラム ホールAでの公演で、生田は何度も「挑戦」という言葉を口にしていたが、その姿勢は今も健在……どころか前のめりにすらなっている。バイオリンでの演奏に成功した昨年の「ビートDEトーヒ」を経て、今年はアコースティックギターに挑戦。生田にとってアコギは、乃木坂46時代にコロナ禍で行われた『乃木坂46時間TV』で触れて以降、家のどこにあるかも分からない状態だったという。先生として成長を見守っていた今野均(Violin)が認めるほどに、生田のアコギの演奏は“お手のもの”といった印象。濱家のパート(生田にとってはキーが低い)も生田が歌っており、〈ここで登場MC生田/クッキングはちょっと苦手〉といった歌詞アレンジもファンにとってはニヤリとさせられる嬉しいポイントだ。
「ビートDEトーヒ」を筆頭にして、ライブ全体における生田のパフォーマンスから伝わってくるのはツアーの一公演ごとに成長を遂げてきたのだということ。それが顕著に現れていたのが、生田本人も驚くほどの飛距離を見せたピック投げというのがまた面白い。EP収録のカバー曲「ELEVEN」(IVE)との流れを組む、「HIP」(MAMAMOO)は生田にとってダンス曲としてのチャレンジ枠に当てはまる(これまでとは言語、節回しの全く異なる部分も挑戦と言える)。MCで生田が触れていたように、現在『Venue101』(NHK総合)の企画で進行中のハマいくとして第2弾となる新曲制作で、生田は未経験のエレキギターに悪戦苦闘中だ。それでも「ビートDEトーヒ」にてドラム、ウッドベースにチャレンジし、ゆくゆくはステージを駆け回りながら全ての楽器を弾きたいと、生田の挑戦が終わりを迎えることはなさそうである。
過去の経験全てを糧にしながら、生田が見据えるのは常に未来だ。『素晴らしき哉、先生!』の撮影を終え、現在は12月に上演を控えるミュージカル『レ・ミゼラブル』の歌稽古中。生田にとっては初挑戦となるコゼットの母・ファンテーヌの歌唱曲「夢やぶれて」を堂々と披露。次曲にはツアーを通じて、生田が作詞を手がけた新曲「シンフォニー」を初披露した。バンドメンバーの伊賀拓郎(Key)が作曲を担当した裏拍のリズムが特徴的であるが、生田が伝えているのは、ライブには会場に集ったみんなで一緒に奏でているという感覚があるということ。会場の3階まで思いを、歌を届けようとする、その心の距離の近さは、昨年のツアーから変わっていない。そして、ライブを通じてファンの最高の表情を見ることが、生田自身にとっても喜びとなっている。
「今日みたいな時間を共有した時に、その思い出がみなさんの日常の中で浮かぶと幸せだなと思う」「進んでみようと思えるきっかけになれたらいいなと願っています。『大丈夫だよ』と言える存在になれたらと思うし、その道を歩んでいって、みなさんと景色を共有できたら嬉しいです」と自分なりの真っ直ぐな言葉を伝え、生田は「だからね」を本編ラストに優しく、祈るように歌唱していた。
終演後、会場の出口付近で生田がデザインされた「アデカレー」をもらい、「やったー!」と静かに喜んでいる女性2人組を見て、「だからね」の歌詞が脳裏に浮かんだ。前回のツアーから感じていたことだが、生田のライブには同世代もしくはそれより若い女性ファンが多くいる。『ウィッシュ』が入口になっていたり、グループ時代からのファンというのもあるのかもしれないが、生田のパフォーマンス性や挑戦し続ける姿、そしてファンを思い、寄り添う人柄が同性にも支持される魅力に繋がっているのではないかと感じる。ライブから日常へと戻っていく狭間で、“ぬくもり”だけはじんわりと一人ひとりに残り続ける、そんな未来が見えた気がした。
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