連載『lit!』第122回:米津玄師、BUMP OF CHICKEN、Official髭男dism……海外/ドーム公演を控えるアーティストの注目作

BUMP OF CHICKEN『Iris』

 2019年リリースの『aurora arc』以来、約5年ぶりのフルアルバム。タイトルは“虹彩”を意味し、ギリシャ神話でのイリス(伝える神様)を語源とする言葉。藤原基央(Vo/Gt)はインタビューで、自分たちの歌を見つけてくれた人たちが集まるのがライブだということ、リスナーと自分たちが音楽を真ん中にして見つめ合えたことを考えた時に、このタイトルに辿り着いたと話している。

BUMP OF CHICKEN「Small world」

 13曲中11曲がシングル曲であり、5年間のベスト的な性格を持ちながらも、収録曲には「Small world」の〈君を見つけて 見つけてもらった僕は/僕でよかった〉や、「窓の中から」の〈ああ 君と出会えて良かった/きっとずっと出会いたかった〉など、出会えた喜びを歌うフレーズがいくつか見られる。この5年間といえば、ちょうどコロナ禍が含まれる。“ライブ”というファンと直接会える場を失ったことで、自分の存在意義を問うアーティストは少なくなかっただろうし、それは彼らも例外ではない。新曲の「青の朔日」でも〈明日が全てを失っても あなたの鼓動だけは歌ってほしい/ならば私は戦える〉と、大切な人の存在が生きる活力になることが歌われている。「誰かに聴いてほしい」あるいは「曲を聴いてくれるあなたと出会いたい」――そんな作り手として素直な想いが感じられるアルバムだ。

米津玄師『LOST CORNER』

 先日、Netflixシリーズ『さよならのつづき』の主題歌として新曲「Azalea」が発表されるなど話題が尽きない米津玄師だが、8月末には約4年ぶりのフルアルバム『LOST CORNER』がリリースされた。来年1月からは自身初のドーム公演を含む『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』も始まるので、本作をあらためて取り上げておきたい。

米津玄師 - がらくた Kenshi Yonezu - Garakuta JUNK

 4年間のリリース作品に新曲を加えた、全20曲の大ボリューム。それらを自然な流れで繋ぐ巧妙さにも舌を巻くが、アルバム内でも特に重要な立ち位置の楽曲が、次のツアータイトルにもなっている「がらくた」だろう。映画『ラストマイル』の主題歌でもある同曲では、柔らかな音像にのせて〈例えばあなたがずっと壊れていても 二度と戻りはしなくても/構わないから 僕のそばで生きていてよ〉と歌われている。世間から見たマイノリティ=がらくたでもいいのだと、包み込んでくれるような優しさがあるのだ。加えて、タイトル曲でもある「LOST CORNER」で〈生き続けることは失うことだった〉と歌っているのも印象的。生きていればどうしたって、変化や喪失は避けられない。しかし、それを悲観的に捉える必要はないのだと、このアルバムでは教えてくれているように感じられる。

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