Little Black Dress「本当に夢のような日」 林哲司をゲストに招き名曲披露した『CITY POP NIGHT』第4回
Little Black Dressによるカバーライブシリーズ『CITY POP NIGHT』の第4回が、7月20日に東京・Billboard Live TOKYOで開催された。同ライブは、シンガーソングライターとして活動するLittle Black Dressこと“Ryo”が、幼少期より愛して止まないシティポップをテーマに名曲をカバーするシリーズ。この日は、現在のネオシティポップブームの立役者である作編曲家・林哲司をゲストに迎え、世界を席巻する林哲司ワールドの魅力を届けた。
林へのリスペクトを込め、中森明菜の「北ウイング」でライブがスタート。「今日はシティポップの世界を存分に楽しんで帰ってください!」とRyo。続く大橋純子の「シンプル・ラブ」では一転、軽快なリズムに乗せてソウルフルにフェイクやアドリブを効かせ、その歌声に会場には拍手と歓声が沸き起こった。
「SUMMER CITY POPメドレー」のコーナーでは、夏を感じさせるナンバーをお届け。まずは夏と言えばこの曲、山下達郎の「SPARKLE」を繰り出した。まるでギラギラとした太陽のような、ギターのカッティングによるイントロが会場を一気に夏の海へと誘う。続いてパーカシッブなリズムが印象的な南佳孝の「モンロー・ウォーク」。大瀧詠一の「君は天然色」はオルガンを効かせたエンディングで締め、そして大瀧詠一つながりで、メドレーの最後は吉田美奈子の「夢で逢えたら」。同曲を甘く歌い上げたRyoの声に、コーラスや手拍子が加わり、会場にはドリーミンな空気が流れる。楽しそうに楽曲を次々と繰り出し、Ryoは「私が大好きなシティポップばかり選曲しちゃいました!」と、はにかむ。
その後は6月にリリースしたLittle Black Dressのアルバム『SYNCHRONICITY POP』から、「マロニエの花」を披露。「シティポップはノンジャンル。ムードを示す言葉。オシャレで、都会的で、70~80年代のAORやジャズなどがベースに作られた音楽。アルバム『SYNCHRONICITY POP』には、いろんなジャンルの曲を詰め込みました。その中から、80年代のAORから影響を受けて作った曲をお届けします」。グルーヴィーなリズムと春の穏やかな空を感じさせるサウンド。エモーショナルなボーカルが、ムーディーなサックスと交錯し、実にドラマチックに楽曲が繰り広げられた。
そしてお待ちかねの「林哲司コーナー」では、林哲司とトークを交えながら、演奏にも本人がギターやコーラスで参加するという豪華な内容でお送りした。
林哲司は、Ryoが1曲目に歌った「北ウイング」を始め、松原みきの「真夜中のドア~Stay With Me」、竹内まりやの「September」など数多くのヒット曲を世に送り出したシティポップの立役者。Little Black Dressとは、彼女の2022年の楽曲「逆転のレジーナ」を書き下ろしている他、昨年1月に開催されたイベント『The シティポップ in 六本木』や、11月に開催された『ザ・シティ・ポップ・クロニクル 林哲司の世界 in コンサート』などでライブ共演もある。そんな恩師のような存在を前に「林哲司さんは昨年、デビュー50周年を迎えられました。50周年おめでとうございます。今日は本当に夢のような日です!」と、林を紹介した。
このコーナーの1曲目には、林哲司の楽曲で大橋純子が歌ったことで知られる「Rainy Saturday & Coffee Break」をデュエットで披露。実はイベント『The シティポップ in 六本木』には大橋純子も出演しており、この日の2曲目に歌った「シンプル・ラブ」をLittle Black Dressが以前からカバーしていることについて、「この曲は、あまり誰もカバーしてくれないから、歌ってくれてうれしい」と、言葉をかけてもらったというエピソードも明かされた。巡り合わせの妙に、林も「非情に縁を感じます」と感慨深げにコメントした。
そんなトークを経て歌われた「Rainy Saturday & Coffee Break」は、ミディアムのゆったりとしたビートが秀逸なAORサウンド。林の方を向いてどこか無邪気に歌うRyo、そんな彼女の手を優しく引くような、林の温かい歌声。外の酷暑を忘れさせる、涼しげな空気感が会場を包み込んだ。
MCでは「逆転のレジーナ」を書き下ろしてもらった経緯のトークも。2021年4月に開催された『ザ・ヒット・ソング・メーカー 筒美京平の世界 in コンサート』にLittle Black Dressが出演しており、それを観た林が「この若手は誰なんだろう?」と気になっていたそう。「書くか書かないかまだ分からないけど、とりあえず打ち合わせしましょうか、というかたちで会ったんだけど、帰りには一緒に写真を撮って、家に帰ってギターを構えたらもうできちゃっていた(笑)」と林。彼もまた、人懐っこい笑顔と誰にも負けないシティポップ愛あふれるRyoの魅力に、ハマった1人だった。