柚希礼音、“元宝塚”の責任を背負い歩んだ道 豪華キャスト&ゲストと作り上げる『REON JACK5』への想い

柚希礼音、“元宝塚”の責任を背負い歩む道

 1999年に宝塚歌劇団で初舞台を踏み、6年ものあいだ星組のトップスターとして活躍。退団後もさまざまな舞台やミュージカル、ドラマなどで活躍している柚希礼音が、今年芸歴25周年を迎えた。

 近年も、演出家・小池修一郎が手掛ける新作ミュージカル『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』や、ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』など話題作が続き、舞台俳優としての存在感に磨きをかけている。一方、ダンサー/パフォーマーとしての柚希を堪能できるのが、2016年にスタートしたコンサート『REON JACK』だ。過去4回、錚々たるダンサーやゲストを迎えて夢のステージを繰り広げてきたが、約3年ぶり、そして25周年アニバーサリーに行われる『REON JACK5』は、さらにスペシャルな公演となるに違いない。

 『REON JACK5』への意気込みはもちろん、宝塚時代の思い出や退団後の戸惑い、変わらぬ舞台への想いまで、じっくり語ってもらった。(後藤寛子)

「自分は一生“元宝塚”なんだ」という責任を死ぬまで背負っていく

柚希礼音

ーー宝塚入団から25年を迎えますね。

柚希礼音(以下、柚希):はい。初舞台のラインダンスから25年。あっという間にも感じるけど、いろいろなことがあって、中身の濃い25年を過ごしました。

ーーこれだけ舞台に立ち続けるとは思っていなかったですか?

柚希:思っていなかったです。クラシックバレエから宝塚の道に進んでーークラシックバレエだったら、1年の稽古を経て1分半で舞台の出番が終わって、また来年まで稽古……ということも珍しくないのに、宝塚だと毎日公演ができて。それだけでも「なんて最高なんだ!」と思っていたけれど、退団して今も舞台に立ち続けられるとは思っていなかった。でも、どれだけ舞台に立ってもずっとゴールが見えないから、もっと磨こうと思って歩き続けてきた結果という感じですね。時には「今日の公演はいい感じかもしれない!」と思える時もあるけど、それを次の日にも継続できるわけではないので。何の力も入れずにストンと役としていられるようになりたいと思いながら続けてきました。

ーー退団後、さまざまなジャンルの舞台作品に出演されていて、常に挑戦されていますよね。

柚希:まさに、5月に終わったばかりの『カム フロム アウェイ』がすごい挑戦でした。でも、いつも目の前の作品に全集中で向き合っていたら次につながっていった人生なんですよ。柚希礼音といえば華やかなイメージがあるかもしれないけど、あえてそうじゃない役をいただいたり、「この役、私にできるかな?」という役でも、それを観ていた方がまた違う役をくださったり。最近はいろいろな役をできるようになってきて、すごく面白いです。

ーー退団当初は、壁にぶつかることもありましたか?

柚希:いつもいつも壁にぶち当たってはコケての繰り返しですよ(笑)。特に宝塚では男役を追究して……最初は硬かった男役がだんだん“柚希礼音”と同化していって、本名の自分に戻るにも戻り方がよくわからないというくらいまで同化していたので。退団したあとは、「女性役ってどうしたらいいの?」というところから始まりました。そもそも芝居と歌を始めたのが男役からなので、「~だわ」というような女言葉の語尾だけでもちょっと恥ずかしくて(笑)。イチから学んで、だんだん“女性としての柚希礼音”が不自然じゃなくなってきた感じです。さまざまな役を演じるなかで、役から女性を教わってきた部分は大きいと思います。

 宝塚時代に培ったものは、もう全部が身に染み込んでいますね。もちろん舞台での芸事もですけど、マナーや、周りの方々との関係性の作り方など、生きていくうえで大切なことを全部教わったので。先輩方には「退団したら重たい荷物が下ろせて楽になるよ」と言われていたんですけど、実際、退団したあとのほうが「自分は一生“元宝塚”なんだ」という責任を感じるようになりましたね。死ぬまで背負っていくんだなと思います。

ーー『カム フロム アウェイ』で安蘭けいさんと共演したり、今回の『REON JACK5』で宝塚時代の後輩の方々と共演したり、縁がずっと続いているのも素敵です。

柚希:宝塚OGの方々はみなさん活躍されているから、やっぱり作品で出会えるんですよね。安蘭けいさんとは、15年ぶりにご一緒しました。宝塚では(星組の)トップと二番手だったので、今でも無意識にトップだった瞳子さん(=安蘭けい)の斜め後ろに立っちゃったりして(笑)。「共演者なのにまた後ろに立ってしまいました」って。

ーー体に染みついたものが(笑)。

柚希:そう(笑)。でも、こうして時を経て、一緒に作品を作ることができるのは嬉しかったですね。自分もトップを経験したあとにご一緒できて、あらためてお芝居のこととかを話したりして。毎日「今日はどこにごはん食べに行きますか?」とお互いに誘い合って、ずっとふたりで一緒にいました。宝塚って、みんなすごく密な青春時代を過ごしているから、久しぶりに会っても、まるで昨日まで一緒にいたみたいに話が尽きないんですよ。

柚希礼音

ーー素敵な関係性ですよね。そして、25周年アニバーサリーとして開催されるのが『REON JACK5』。『REON JACK』は退団翌年から始まって、今回5度目となります。

柚希:本当は『5』を早くやりたかったんですけど、25周年に合わせようと思って待っていました(笑)。でも、『REON JACK5』まで続くなんて、もう『1』の時からは考えられないですよ。私に限らず、周りも含めて退団後にコンサートをする流れもあるけれど、ここまで続くとは。来てくださる皆様やスタッフの方々のおかげですね。

ーー『REON JACK』は、柚希さんにとって大事な場所になっていますか。

柚希:ミュージカルや舞台作品でのお客様と私の関係性とはまた違って、コンサートならではの今の自分自身を見せられるし、ファンの方々とのキャッチボールもできる。毎回、すべての打合せに参加して、細かいところまでこだわりまくっています。宝塚時代の『REON!!』から始まって、退団後は“お客様の心をジャックする”ということで『REON JACK』なんですよ。今回も、いろいろな意味でお客様の心をジャックしていきたいですね。

ーー演じることとダンスでの表現は、全然違うものですか?

柚希:全然違いますね。宝塚時代は常にお芝居とショーの両方があったので、たくさん踊れて最高だったんですけど、実は舞台やミュージカルには踊る作品というものが少なくて。私のルーツは踊りから始まっているし、大切にしたい部分でもあるので、『REON JACK』ではしっかり踊るようにしています。毎回、もう大挑戦と言ってもいいレベルの踊りを踊ってきました。『4』まではダンサー界のモンスター級の方々に出ていただいてやってきたんですけど、『5』は25周年ということで宝塚OGのみんなにも出てもらって、さらに男性ダンサーふたりもすごく踊れる方。今回ならではのダンスが盛りだくさんだと思います。

ーーキャストは毎回豪華ですが、今回も超豪華ですよね。宝塚時代の後輩が集結するというのは、どういう発想から実現したんですか?

柚希:芸歴25周年記念だから、私の宝塚時代から今、そして未来へ向かうものを表現したいと思ったんです。それこそ『1』では宝塚OGの方(陽月華/音花ゆり/鶴美舞夕)に出てもらって、ファンの方に「退団して遠く離れたように感じるかもしれないけど、近くにいるよ」と思ってほしいというコンセプトでやったんですよね。だから、改めて『5』は『1』の雰囲気も含ませようと思って、OGの4人(汐月しゅう/天寿光希/麻央侑希/綾凰華)にお願いしました。宝塚時代の曲も披露したりしようかなと。

ーー今回の4名は、みなさん現役時代に一緒にステージに立たれた方ですよね。

柚希:そうです。それぞれの舞台は観に行ったりしていましたけど、共演は退団後初なのでめちゃめちゃ楽しみです。4人はかなり緊張していて、「想像しただけで汗だくです」って言っていたんですけど、「もう怒ったりしないし、怖くないよー!」って(笑)。

ーーオフィシャルサイトのコメント動画では、「柚希さんの背中を追いかけてきた」とみなさんが口々におっしゃっていて。

柚希:トップになった時、「もっとこうしたほうがいい」「ああしたほうがいい」って周りにいろいろと言っていたんですよ。最初はそれにみんながあんまりついてこなくて、途中から「人のことばかり言っていないで、もう自分のことに集中しよう」と思って、とにかくお客さまのほうに向かって自分のことをやっていった。そうしたら、みんながついてきてくれたんです。自分も先輩方にたくさん教わったから、なるべく早い時点で教えたほうがタメになると思っていたけど、結局タイミングが合わないと相手には刺さらないんだなって。「なるほど、“背中を見せる”ってこういうことなのか」と実感したのを覚えています。

ーーそうなんですね。あらためて、宝塚男役スターのダンスの魅力をどういうところに感じますか?

柚希:本当に独特の文化なので、ただ踊りが上手くても宝塚の男役でかっこよく踊れるわけじゃないんですよね。私もずっとバレエをやってきたけど、宝塚に入ったら「バレエが上手くても宝塚の男役としてはかっこよくない」と言われて、どうやったら男役としてかっこよく踊れるのかを研究してきましたから。宝塚は、伝統はもちろん、今のダンスまで幅広く取り入れているので、そこも魅力ですよね。

柚希礼音『REON JACK5』30秒SPOT

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