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Feid「SORRY 4 THAT MUCH」

Feid - SORRY 4 THAT MUCH (Official Video)

 昨年はSZAやラナ・デル・レイらを抑えてSpotifyの年間最多ストリーミングアーティストの一人に名を連ね(グローバル6位)、バッド・バニーやJ・バルヴィンといった多くのトップアーティストとの共演でも知られるコロンビア出身のレゲトンシンガー Feid。多作で知られる彼だが、今回の新曲が特にスペシャルなのは、意中の人物に浮気されたことによる傷心を相手への感謝の想いへ何とか変換しようとする自身の姿が率直に描かれたリリックと、その複雑な感情が隅々まで染み込んでいるかのような感傷的なサウンドと力強いビートにどうしようもないほど魅了されるからだろう。自身の武器でもあるエモーショナルなメロディセンスは今回も見事に炸裂しており、聴くたびにどうしようもない気持ちになってしまう。

 本楽曲のもう一つの特徴は、なんとMVが全編日本で制作されているという点だ。それも、いわゆる観光感のある映像ではなく、しっかりと楽曲のムードを投影した仕上がりになっていることにも、Feidのこだわりを強く感じることができる(妙に朝の番組の解像度が高いのもポイントだ)。米ビルボードのラテンチャートでも(客演なしの楽曲として)自身最高位の4位を記録するなど、今のFeidはさらに自身のキャリアのピークを更新しようとしている。ここまで日本への愛を示してくれているのだから、勢いに乗る今だからこそ、願わくば待望の来日公演を実現してほしいところだ(なぜか今年4月にMARVEL STOREでのサイン会のみ実現している)。

Eminem「Houdini」

Eminem - Houdini [Official Music Video]

 帰ってきた、いや、「きやがった」と言うべきエミネムの悪名高いオルターエゴことスリム・シェイディ。「Without Me」などの自身の大ヒット曲を楽曲やMVの随所に引用していることや、全体を覆う自虐的なムードなどからも分かるように、今回のエミネムは明確に自身の全盛期と、あれから約20年を経てすっかり時代やシーンに馴染めなくなった自分自身の姿の対比を描いている。そうしたテーマ自体は近年の楽曲でも取り扱ってきたものだが、今回はスリム・シェイディという存在そのものを引っ張り出すことによって、その構造をさらに分かりやすく浮き彫りにしている。

 近年の作品ではどこか無理をしているような印象もあったエミネムだが、サウンドやライム自体が原点回帰しているということもあってか、本楽曲における彼のラップは聴いていてとにかく気持ちが良く、久しぶりの大ヒットを達成したことも頷ける(全英1位/全米2位)。一方で、差別的な内容満載のリリックに関しては「酷すぎる」の一言なのだが、本人としては(これまでもそうであったように)本心で言っているのではなく、「もし、スリム・シェイディが現代にいたらどんなに面倒か(≒過去の自分がいかに厄介か)」をある種のコメディとして出したつもりなのだろう(何せ、MVの後半では現代の「白人の悪ガキ」を代表するピート・デヴィッドソンと自身の姿を重ねている。もちろん、だからといって肯定できるわけではないが)。だが、その反響を眺めていると「よくぞ言ってくれた!」という感想も少なくはなく、「それって『サウスパーク』のカートマンや『ザ・ボーイズ』のホームランダーを本気で崇めるようなものなのでは?」という疑問が頭から拭えないが、それもまた今のシーンの実情なのかもしれない。

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