AKB48と乃木坂46の“センター像”の違いを考える 新メンバー抜擢の狙いと効果とは

 7月17日に発売されるAKB48の64枚目シングルのセンターを17期生の佐藤綺星が務めることが発表された。今年3月に正規メンバーに昇格したばかりの17期生のメンバーがシングル表題曲のセンターを務めるのは初めてということもあり、ファンからは驚きの声が上がっている。

 佐藤は2022年5月に17期生研究生としてお披露目され、同年の『THE MUSIC DAY 2022』(日本テレビ系)には17期生として唯一出演、さらに60thシングル『久しぶりのリップグロス』でシングル表題曲の選抜メンバーに選ばれるなど、早くから頭角を現してきた。劇場公演でもMCを務めることが多く、AKB48と一般応募者が競い合うオーディション番組『OUT OF 48』(日本テレビ系)でもチームリーダーを務めており、彼女のリーダーシップはセンターでこそと思っていた。だからこそ、今回のセンター就任は満を持しての登場となり、彼女ならば次世代のセンターとして躍動してくれるだろうと思っている。

【MV full】サステナブル / AKB48 56th Single[公式]

 だが、これまでのAKB48の歴史を見た時にAKB48加入から約2年、正規メンバーに昇格してから約3カ月という短いスパンでセンターに選ばれたメンバーは指で数えられるほど。振り返っても10thシングル『大声ダイヤモンド』(2008年)の松井珠理奈がSKE48オーディション合格後3カ月、44thシングル『翼はいらない』(2016年)の向井地美音が正規メンバー昇格後2年に、56thシングル『サステナブル』の矢作萌夏が正規メンバー昇格後9カ月でそれぞれセンターを務めたくらいだろう。

 それに対して、もともとAKB48の公式ライバルとして発足した乃木坂46ではここぞというタイミングで加入から間もない新メンバーをセンターに抜擢するケースが恒例となっている。本稿では乃木坂46で新人をセンターに置くことの作用を踏まえた上で、今回、AKB48のセンターに選ばれた佐藤がグループにもたらすものを考えていきたい。

乃木坂46 『バレッタ』Short Ver.

 まずは、乃木坂46に関して言うと、デビューシングル『ぐるぐるカーテン』(2012年)でセンターに選ばれた生駒里奈を除けば、7thシングル『バレッタ』(2013年)では加入初年度だった2期生の堀未央奈がセンターに抜擢されたことに始まり、新人がセンターを務めることがいわば伝統になっていく。18thシングル『逃げ水』(2017年)ではダブルセンターで前年に加入した3期生大園桃子と与田祐希がセンターを務め、24thシングル『夜明けまで強がらなくてもいい』(2019年)でも加入から約1年で4期生の遠藤さくらが単独センターに立ち、29thシングル『Actually…』(2022年)では加入したばかりの5期生・中西アルノがグループ史上最速でセンターに抜擢。

 乃木坂46ではこのように伝統的に新人をセンターに起用してきたが、ここで何が起こるのかというと、グループ内の新陳代謝が生まれること、そして最も重要視されるべきは、世間に強烈なインパクトを与えることができることだろう。多くのメディアに出演するアイドルであるがゆえに、彼女たちの動向は常に世間へと拡散される。乃木坂46はその特性を逆手にセンセーショナルな起用を実行してきた。実際に、まだ国民的アイドルと称されるようになる以前の2013年、7thシングル表題曲「バレッタ」で堀がセンターに抜擢された際には賛否両論が巻き起こり、様々なメディアを通じて乃木坂46という存在が認知されていった。必ずしも好意的な声ばかりが聞こえてくるわけではないが、話題性という意味では非常に大きな効果が生まれている。

 AKB48では、IZ*ONEの元メンバーであり、AKB48のセンターを務めたこともある本田仁美や、グループ在籍17年の柏木由紀が卒業したタイミングということもあり、今回の楽曲をリリースするタイミングで大きな話題がほしかったと考えるのが自然だろう。その意味で、センター経験者である小栗有以や千葉恵里ではなく、経験の浅い17期生の佐藤がセンターに選ばれたことは、AKB48ファンの間でも賛否両論が巻き起こり、乃木坂46でいう「バレッタ」的現象が起こっていると言える。

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