Lucky Kilimanjaro、2度目の日比谷野音公演も雨と共にダンス 未来を見据えた“今”を提示したステージ

ラッキリ、2度目の日比谷野音を観て

 ラッキリが、自分たちの音楽を聴く人々に向けて「あなたたちが主役なんだ」というメッセージを込めた「後光」は本当のそのメッセージの通りの響き方をしていた。そしてTikTokで一躍有名曲になった「Burning Friday Night」を演奏する時に熊木は「Lucky Kilimanjaroで『Burning Friday Night』」と真っ直ぐに曲紹介をし、「この曲歌える?」と呼びかけ、合唱が起こった。熊木は自分たちの曲で巻き起こった現象……それも自分たちが意図していたものではなかったであろう現象に対しても、目を背けるわけではなく、乗っかるわけでもなく、しっかりと向き合うという姿勢を持っているようだった。その清々しさが心地よかった。「KIDS」でも観客たちも巻き込んだ合唱が起こった。

Lucky Kilimanjaro

 ドラムとパーカッションの重なりが、不思議とダブのようなサウンドに聴こえた「Do Do Do」、穏やかなファンクサウンドが心地いい、DISH//への提供曲でもある「SAUNA SOUNG」(曲の終わりに熊木は「DISH//の北村匠海くんに捧ぐ」と言っていた)、温かくロマンチックな世界を演出した「MOONLIGHT」など、ラッキリらしいゆったりとしたスピード感の曲たちが投下された後半のセクションも素晴らしかった。熊木がステージの前方に腰掛けながら歌い始めた「咲まう」は、愛する人と一緒にいる時間が幸福で、その時間の流れを味わっていたら段々と会話すらいらなくなっていくような……そんな豊かな時間の流れが見事にバンドサウンドで表現されていた。特に、ゆったりとリズムを刻みながら段々と音が小さくなっていくような柴田のドラミングは本当に絶妙な力加減で「沈黙の味わい」というべきものすら表現していた。ラッキリにとってダンスミュージックを楽しむことは、ただ激しく踊ることだけがすべてではない。むしろ、その本質は「自分の体の使い方を知る」ということにこそあるのではないかと思う。力んでばかりいなくていい。時には力を抜いたっていい。そして、自分の小さな声に、誰かの小さな声に、耳をすませること。ラッキリが表現する「ダンス」にはそんなことも含まれている。だからラッキリは伝え続けるのだーー「日々を踊ろう」と。

Lucky Kilimanjaro

 ライブの終盤にもなるともう雨もかなり強くなっていたが、「ここからてっぺんまで、行けますか?」ーーそんな熊木の言葉を合図にライブの盛り上がりは爆発を見せる。「Kimochy」に「果てることないダンス」、「踊りの合図」、そもそもはシングルのカップリングだったが、もはや怪物的な盛り上がりを見せるライブアンセムと化している「でんでん」。それに、この時点ではまだリリースされていなかった新曲の「実感」。「無限さ」に「HOUSE」。畳み掛けるように投下されていくキラーチューンたち。「実感」の歌詞は〈踊れない夜は/100年の春を浮かべて〉と歌い出される。今年結成10周年を迎えるラッキリだが、そんなタイミングで熊木は、もはや10年というレベルを超えた遙かな時間の流れをイメージさせる〈100年〉というフレーズを楽曲に盛り込んできた。そして思えば、このライブの舞台となっている日比谷野外大音楽堂も去年(2023年)、開設100年を迎えている。不思議な合致だ。そしてラッキリが見つめるのは、100年という悠久の時間の流れの中にある「今」である。

 アンコールでは「太陽」、「雨が降るなら踊ればいいじゃない」(この曲を作ったことにこれほど意味が生まれるとは、熊木も思っていなかっただろう)、「Call Me Baby」、「君が踊り出すのを待ってる」が披露された。「Call Me Baby」も『FULLCOLOR』収録の楽曲である。バンドはこの日、来年2月にバンド史上最大規模となる会場の幕張メッセでワンマンライブを開催することも発表した。さらに大きな会場で、ラッキリの音楽と一緒に生きることの喜びを分かち合うのが、今から楽しみだ。

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