SARM、冨田恵一とのタッグで開いた“世界”への新たな扉 「Tefu Tefu」の底知れない神秘性

SARM、冨田恵一とのタッグで開いた新たな扉

 一聴すれば只者ではないことがわかる“ヴィンテージボイス”を持つシンガーソングライター、SARMが2024年第1弾となるデジタルシングル「Tefu Tefu」を公開した。

 同曲のプロデュースを務めるのは、昨年活動20周年を迎えた冨田ラボこと冨田恵一。思わず身を乗り出してしまうような刺激的な組み合わせだが、実際この曲はSARMのキャリアにおける大きなターニングポイントになりそうな、そんな予感がしている。

SARM『Tefu Tefu』
『Tefu Tefu』

 ジャニス・ジョプリン「Summertime」を聴いて歌い手としての心得を悟り、ニーナ・シモン「Feeling Good」をライブのレパートリーにしていたこともあるSARMは、ブルース、ソウル、ジャズなどからの影響に基づくスモーキーなボーカルを本分としているが、多大なインスピレーションを得たシンガーのひとりとして美空ひばりの名を挙げているように、“和”の情緒を自身の表現の重要な柱に置いている点が、彼女の歌に唯一無二の独自性をもたらしている。そもそも、SARMには家族が三味線を嗜んでいたことで幼少期から日本の伝統音楽に慣れ親しんできたというバックボーンがあり、2023年11月に立ったBLUE NOTE PLACEでのステージでは、ギタリストであり和琴奏者としても活躍する高谷秀司とのコラボレーションを実現させていたりもする。

 こうした自らのルーツを懐古主義としてではなく、あくまで現代のサウンドを通して打ち出すことがSARMの掲げる音楽的コンセプトになるわけだが、新曲の「Tefu Tefu」ではそんな彼女のビジョンがついに理想的な形で結実したと言っていい。今にして思えば、ここに至る兆候はAI、Ms.OOJA、THE BOYZなどのプロデュースワークで名高いJiNと昨年ともに制作した2曲のシングルですでに表れていた。

SARM - BONBON GiRL (Lyric Video)

 バイラルヒットした「BONBON GiRL」に象徴される和製エイミー・ワインハウス的な作風から一転、現行R&Bサウンドへの大胆な接近を図った「D♡VE QUEEN」と「Ai ga shitaino」。特に前シングルの「Ai ga shitaino」は、ジャージークラブや三連符フロウを取り入れるなど、新境地の開拓に果敢に挑んだ意欲作で、SARM自身もその成果について「今までの曲は強くて、形で言うと四角みたいなハッキリした感じだったが、「Ai ga shitaino」は包み込まれた時の温かくて丸い感じを表現した」と語っていたのが印象的だった(※1)。生命の本質に触れる精神世界を深く掘り下げた歌詞、それを具現化したと思しきアートワークやビジュアルイメージもまた、彼女のネクストレベル突入を強く意識させるに十分なインパクトがあっただろう。

SARM- AI ga shitaino (Lyric Video)

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