トゲナシトゲアリ、無謀な挑戦を乗り越えたバンドの力 アニメ放送への弾みをつけた初ワンマン

トゲナシトゲアリ、初ワンマンレポ

 続くMCパートでは、テレビアニメ『ガールズバンドクライ』で5人が演じるキャラクターを、キャラクターPVと合わせて紹介していく。ここでは理名のみならず、ほかのメンバーも自身の担当キャラクター紹介とアニメ放送に向けた意気込みを口にしていくのだが、緊張からか、話そうと考えていたことを途中で忘れてしまう場面も。そんな微笑ましいMCでフロアに笑みが溢れたかと思えば、続く「理想的パラドクスとは」では再び空気が一変。4つ打ちビートに乗せて、ギターとピアノがユニゾンプレイでソロを繰り出し、フロアは熱気に包まれていく。そこから間髪入れずに「黎明を穿つ」へなだれ込むと、その熱量はさらに高まっていき、理名が前に伸ばした手で何かを掴む仕草で曲はエンディングを迎えた。

 ステージ後方のスクリーンにテレビアニメ『ガールズバンドクライ』の本予告映像が上映されたあとには、メンバーが声優初挑戦について振り返った。理名の「難しくて大変だったんですけど、やっているうちにキャラクターのことがどんどん愛おしくなってきて。なので、大変さよりも充実感のほうが上回っていた」という言葉に、頼もしさを覚えた観客も多かったことだろう。

 その後、「サヨナラサヨナラサヨナラ」をライブ初披露。前のめりな演奏で表現されたライブ映えするこの曲を前に、オーディエンスも瞬時に熱いリアクションを送る。「気鬱、白濁す」「極私的極彩色アンサー」と、曲を重ねるごとに会場の熱気は再び高まっていき、「運命に賭けたい論理」ではその盛り上がりが最高潮に到達。理名の動きに合わせて観客が手を左右に振る場面もあり、この日一番の一体感を味わうことができた。

トゲナシトゲアリ

 フロアに向けて理名が「アニメがスタートするということは、オープニングテーマがあるわけですよね?」と問いかけると、客席は期待に満ちた歓声を上げる。すると、『ガールズバンドクライ』オープニング主題歌として制作された新曲「雑踏、僕らの街」を初公開。このサプライズに、フロアからはより一層の声援が湧き上がる。「雑踏、僕らの街」は、これまでのトゲトゲらしさをにじませつつもさらに高い演奏力が求められる1曲であり、強い疾走感の中に4分の3拍子を取り入れたり、ワウペダルを使用したギターソロが飛び出すなど、バンドの新たな表情を見せる要素もふんだんに用意。そんな楽曲に5人が全力で向き合うことで、フロアはカオティックな様相を見せる。さらにその熱をキラーチューン「爆ぜて咲く」で引き継ぎ、大盛り上がりの中ライブ本編は幕を下ろした。

トゲナシトゲアリ

 アンコールを待つ間、スクリーンでは5人が初めて顔を合わせた瞬間から今日までに経験した、さまざまな「初めて」が紹介されていく。映像が終わるとメンバーが再び姿を現し、「まだ終わりたくない」など名残惜しい気持ちを口にする。すると理名が「みなさん、今日のライブの目撃者になりましたね。みんな共犯だよ!(笑)」と笑みを浮かべ、もうひとつのサプライズとしてテレビアニメ『ガールズバンドクライ』のエンディング主題歌「誰にもなれない私だから」をプレゼント。少し落ち着いたトーンで彩られたこの曲からは、切なさやエモーショナルさもしっかり伝わり、バンドとしての表現力の幅広さも感じられた。オンエアではどんな映像が乗るのかも楽しみだが、この曲がセットリストに加わることで緩急の幅も広がり、今後のライブの見せ方にも期待が高まる。

 最後に、トゲトゲの原点である「名もなき何もかも」をもう一度披露することに。ここではスマホ撮影OKという最後のプレゼントも用意され、5人は新曲初披露を終え安堵の表情を浮かべながら、リラックスモードで最後の1曲を心の底から楽しんでみせた。すべての演奏を終え、メンバーが笑顔でステージを去っていくと、さらにダメ押しのプレゼントとして、アニメ第1話のイントロダクションとオープニング映像をサプライズ上映。至れり尽くせりなトゲトゲ初のワンマンライブは、こうして大成功のうちに終了した。

 約一年をかけて助走を続けてきたトゲナシトゲアリが、テレビアニメ放送開始前最後の難関として挑んだ今回のライブ。ここで得た手応えが今後彼女たちにどんな影響を及ぼすのか、そして番組がスタートしてから改めて寄せられる注目や期待に、彼女たちはどのように応えていくのか。ここからが真のスタート、快進撃の始まりだ……そんな未来に期待したい。

※1:https://realsound.jp/2023/09/post-1440171.html

■セットリスト
トゲナシトゲアリ『1st ONE-MAN LIVE “薄明の序奏”』
2024年3月16日(土)1000 CLUB

01. 名もなき何もかも
02. 偽りの理
03. 傷つき傷つけ痛くて辛い
04. 理想的パラドクスとは
05. 黎明を穿つ
06. サヨナラサヨナラサヨナラ
07. 気鬱、白濁す
08. 極私的極彩色アンサー
09. 運命に賭けたい論理
10. 雑踏、僕らの街
11. 爆ぜて咲く

<アンコール>
12. 誰にもなれない私だから
13. 名もなき何もかも (reprise)

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