アニメ『ガールズバンドクライ』劇中バンド・トゲナシトゲアリの実力は? 歴史の第一歩を踏み出した初公開練習ライブを観て

トゲナシトゲアリ、初ライブレポ

 東映アニメーション、agehasprings、ユニバーサル ミュージックジャパンの共同企画によるオリジナルアニメ『ガールズバンドクライ』の劇中バンド、トゲナシトゲアリが9月14日に『トゲナシトゲアリ修行中 公開練習ライブ』と題した初ライブを代官山SPACE ODDにて行った。今年5月に初のオリジナル曲「名もなき何もかも」がデジタル配信&MV公開、7月に1stシングル『名もなき何もかも』、8月には2ndシングル『気鬱、白濁す』を立て続けにリリースし、話題を集めつつあるトゲナシトゲアリ。結成間もない彼女たちが初めて観客の前で演奏する機会ということもあり、会場には抽選で招待されたファンが多数駆けつけ、歴史が動き始める瞬間を見届けた。

トゲナシトゲアリ
トゲナシトゲアリ

 定刻通りに会場が暗転すると、場内に雑踏の音が流れるなかメンバーがひとり、またひとりとステージに現れ、フロアからは早くも歓声が湧き起こる。続いて、ステージ後方のスクリーンにトゲナシトゲアリのキャラクターが街中を歩き回るアニメーション映像が映し出され、早くも会場は『ガールズバンドクライ』独特の空気に包まれていくことに。そして、ドラムのカウントとともにライブは「理想的パラドクスとは」から勢いよくスタート。美怜(Dr/安和すばる役)と朱李(Ba/ルパ役)が繰り出すグルーヴィーでパワフルなリズムに、夕莉(Gt/河原木桃香役)の煌びやかなギターフレーズ、凪都(Key/海老塚智役)が生み出す軽やかなピアノサウンドが重なり、安定感の強いプレイで高い演奏技術が求められるアレンジが施されたこの曲を見事に表現していく。そして、客席をまっすぐ見つめる理名(Vo/井芹仁菜役)は小さな体からパワフルで素直な歌声を発し、その存在感の強さを会場中にアピール。彼女たちが揃ってからまだそれほど時間が経っていないにも関わらず、ずっとこの5人でバンドを続けてきたかのような不思議な説得力が伝わる、観る者の感情に訴えかけるパフォーマンスに早くもノックアウトされたのは、きっと筆者だけではなかったはずだ。

理名
夕莉
美怜
凪都
朱李
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理名
夕莉
美怜
凪都
朱李
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 そのまま「気鬱、白濁す」へと続くと、観客のボルテージがさらに高まっていくことが手に取るように伝わる。フロントに立つ理名のオーラも曲を重ねるごとにどんどん強まっているように感じられ、その一方でソロパートでは夕莉がステージ中央で堂々とギターソロを披露する。彼女のみならず、複雑なアンサンブルを時に堂々と、時にはがむしゃらさを感じさせる表情でこなすメンバーの姿から、自信や技術力などを超越して思いの強さですべてを乗り切ろうとする初期衝動のようなものすら感じ取ることができた。これも初ステージだからこその光景だろう。

 2曲を終え「ありがとう」と挨拶した理名は、続けて「今日は公開練習ライブということで、みなさんにこれまでの練習の成果をお見せする機会をいただきました。私たちのはじまりの目撃者になってください」と力強く宣言。続くMCパートでは演奏中のシリアスさから一変、オーディエンスの歓迎モードを前に5人は和やかな空気感を放ちつつ自己紹介をしていく。

 初々しいトークで場の空気が和らいだところで、ライブは再開。最初こそ若干緊張気味だったメンバーから柔らかな笑顔が溢れるなか、初お披露目となる新曲「黎明を穿つ」で再び会場の熱気を高めていく。緩急にアレンジが施されたこの曲を通して、5人は心の内に秘めた熱をどんどん解放させていき、彼女たちならではのグルーヴでフロアを包み込む。続く「偽りの理」ではエモーショナルさを爆発させた歌と演奏で、聴き手の心を鷲掴み。MVが200万回再生を突破したばかりの「爆ぜて咲く」では、観客のクラップが加わることでフロアとの一体感が急速に高まる。会場がひとつになっていることが感じられたのか、理名はメンバー1人ひとりとアイコンタクトを取りながら笑みを浮かべる場面も見受けられた。

 そして、理名の「私たちのはじまりの歌」という言葉に続いて、この日のラストナンバー「名もなき何もかも」に突入。ステージ上の5人とスクリーンに映し出されるMVの中のキャラクターたちが重なったかのような錯覚に陥るなか、クライマックスに相応しい、熱量の高い全力のパフォーマンスが展開され、フロアの熱気が頂点に達したところで約30分にわたるトゲナシトゲアリの初ステージは幕を下ろした。

 全6曲を完走した5人の表情は、最初にステージに登場したときよりもさらに自信に満ちた、晴々としたものに変わっていた。この“はじまりの一歩”で得たものを胸に、彼女たちはここから前進を続けていくことになる。その先にはどんな未来が待ち受けているのか……正直、この日のステージを目撃した限りでは希望しか感じられなかった。まだスタートしたばかりのバンドだが、ここからどんな成長を遂げるのか、その動向に注目しておいて間違いなさそうだ。

■セットリスト
『トゲナシトゲアリ修行中 公開練習ライブ』
2023年9月14日(木)代官山SPACE ODD 

1.理想的パラドクスとは
2.気鬱、白濁す
3.黎明を穿つ(新曲)
4.偽りの理
5.爆ぜて咲く
6.名もなき何もかも

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