斉藤和義、ライブ映像で楽しみたい数々の“発見” 抜群の演奏から名曲オマージュまでを解説

斉藤和義、ライブで楽しみたい“発見”

 斉藤和義が、自身のデビュー30周年を記念し昨年行ったツアー『KAZUYOSHI SAITO 30th Anniversary Live 1993-2023 30<31 〜これからもヨロチクビーム〜』。そのファイナル公演となる東京国際フォーラム ホールA公演でのアンコール含む演奏を完全コンプリートした映像及び音源作品が3月27日にリリースされた。

 このツアーは昨年8月24日の愛知県・名古屋国際会議場 センチュリーホール公演を皮切りに、全国7カ所10公演を回ったもの。同年4〜7月には通算22枚目のアルバム『PINEAPPLE』を携え、同じバンドメンバーで33カ所35公演のツアーを行ったばかりの斉藤。それゆえこのツアーでは、これまでのキャリアを総ざらいするような全25曲を最高のコンディションで披露している。

 なお、特典映像には東京公演では演奏されなかった神戸、福岡公演での「日替わりコーナー」(弾き語り)の3曲(「郷愁」「Summer Days」「アゲハ」)を収録。さらにライブのオープニング映像と、3頭身のCGキャラに変身(!)した斉藤がダンスを踊る「問題ない」のライブで使用された映像も収録。CDは初回限定盤のみ、日替わりコーナーの上記3曲に「空に星が綺麗」「愛に来て」「Endless」「tokyo blues」「蝉」の5曲を追加した計8曲入りの特典DISCがついた3枚組仕様となっている。

斉藤和義 -『KAZUYOSHI SAITO 30th Anniversary Live 1993-202330<31 〜これからもヨロチクビーム〜 Live at 東京国際フォーラム』ティザー映像

 音源をCDでじっくりと聴き込むのももちろん楽しいが、ライブの感動をより深く追体験するなら、まずはやはり映像作品を観てほしい。まるで映画『ブレードランナー』の世界を彷彿とさせる猥雑なネオン街(ひしめく店の看板が、すべて斉藤の楽曲にちなんだ名前になっている)を抜け、そびえ立つ高層ビル群へ走り抜けていく車からの映像がステージ後方の巨大LEDモニターに映し出される。そんなワクワクするようなオープニングから、途中メンバーとのユルユルとしたおしゃべり、そしてTシャツ姿でアンコールに応え再登場した5人の晴々とした表情まで、ほぼノーカットで収められているからだ。

 前述したように、3頭身キャラになった斉藤が踊りまくる「問題ない」の映像など演出にも趣向を凝らしているが、やはり主役は5人のアンサンブル。ステージ中央にギュッと集まり、時おりアイコンタクトを交わしながら演奏する姿は、「斉藤和義とサポートメンバー」ではなく完全に「5人組のバンド」だ。そして、そんな彼らの姿を、時に客席からのオーディエンス目線やステージ上からのメンバー目線で、時にステージから客席を仰ぎ見るような俯瞰で、臨場感たっぷりのアングルによって捉えた映像は、ライブの感動を何度も蘇らせてくれる。

 今さら言うまでもないが、斉藤和義のライブの魅力として挙げられるのは、まずその楽曲である。The BeatlesやThe Rolling Stones、ボブ・ディランなど彼が愛してやまない1960年代〜1970年代ロックのイディオムを踏襲しつつ、現代にアップデートしたサウンドプロダクション。歌詞は解釈の幅が広いものからストレートでメッセージ性の強いものまで、どこかユーモアを交えながら等身大の視点で綴られている。個人的には、彼が楽曲の中に忍ばせる過去の名曲のオマージュを探し当てながら聴くことも、楽しみの一つだ。

 たとえば「Baby, I LOVE YOU」で、エンディングのコードに6度のテンションノートを入れるのはThe Beatlesの得意技だったし、「底無しビューティー」ではそのThe Beatlesが「Back In The U.S.S.R.」で披露した、The Beach Boys風のコーラスを無邪気に取り入れている。「やぁ 無情」では、フィル・スペクターのウォールオブサウンドまでライブで再現したかと思えば、The Damnedの「Neat Neat Neat」を思い出さずにはいられない「FISH STORY」を、バンドメンバー全員でヘッドバンギングしながら演奏する。先人たちへの深いリスペクトを込めたそんな数々のオマージュは、ロックはもちろんリズム&ブルースやモータウン、レゲエなどジャンルも様々。元ネタを知っていればいるほど楽しめるのだ。

斉藤和義 - やぁ 無情 [Music Video Short ver.]
斉藤和義 - 「底無しビューティー」Music Video

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