Chilli Beans. MCほぼなし、楽曲のみで全うした潔さ 初の日本武道館をソールドアウトする勢い

 開演時刻になり場内が暗転すると、ステージ両脇に用意されたスクリーンに、カラフルな子供部屋の映像が映し出される。ぬいぐるみやおもちゃが散らばる部屋に、子供の笑い声。すると映像が終わり、スモークのたかれたステージにMoto(Vo)、Maika(Ba/Vo)、Lily(Gt/Vo)がゆっくりと登場。ステージ後方には窓枠を思わせる演出と共に、先ほどまでスクリーンに投影されていた映像が映し出され、観客からは思わず「おお!」と歓声が上がる。シンプルなセットながらも趣向の凝らした舞台演出もChilli Beans.らしい。

Chilli Beans.

 定位置につくと、バンドは言葉なしに、「Hello bad boy」の演奏を始める。そう、つまりこのお城は“bad boy”お断りだ。しっかり“bad boy”を追い出したところで、2曲目「Welcome」へ。Motoはキュートな歌声を聴かせながらステージ上を動き回り、カラフルな照明が場内を彩る。窓には「WELCOME」と掲げられ、Chilli Beans.が色鮮やかな夜へと誘っていく。華やかな世界へと連れて行かれたかと思えば、歪んだギターから「neck」へ。MaikaとLilyは向かい合い煽り合うように演奏し、熱量をさらに高めていく。さらに観客の歌声も借りた「rose feat. Vaundy」では、MotoとMaikaのハーモニーが心地よく場内に広がった。

Moto

 ステージが暗くなり、スクリーンに「My life is ...」と書いては消してが繰り返される。するとMotoが一人で〈My life is 最高だから〉と歌いながらステージへ。気だるさと皮肉めいたメッセージを、打ち込みとラップ調のボーカルのみで1曲歌いきってしまうステージングに、彼女たちの音楽性の幅広さとパフォーマンスの多彩さも感じさせる。一方で「See C Love」や「This Way」では、芳醇なバンドサウンドをしっかりと聴かせていく。「duri‐dade」では3人がドラムセットに集まり、一斉にタムやバスドラムなどを叩いて躍動感と高揚感を生み出す一幕も。音楽を鳴らすこと、ライブという空間を作り出すことが楽しくて仕方ない。そんな喜びを全身からたちのぼらせる。さらにコールアンドレスポンスも煽り、開放感と一体感も同時に生み出した。

 スクリーンに、子供部屋のおもちゃやぬいぐるみが一斉に動き出したり、時計の針が逆走したりと不思議なアニメーションが映し出されたあと「aaa」が届けられる。Motoの息を多く含んだ歌声やコーラスワークにより、場内は不穏なムードが漂った。しかし次の瞬間にはMotoのタイトルコールから「lemonade」が選曲されるなど、様々な感情の楽曲を、間髪入れずに届けて行くことにより、さらにChilli Beans.の世界の奥深くへと連れて行かれる。

 その後も子供部屋の様子を映し出した映像を挟みながらライブが進行していく。しかし、その子供部屋は、決してかわいさや楽しさだけを表しているわけではない。例えば、子供が楽しくミニカーで遊んでいたところ、そのミニカーが倒れてしまい、まるで大事故のような恐怖を感じさせたところから、ひりつくように「doll」「stressed」へとつながれると、場内は一気に緊迫感に包まれた。

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