Mrs. GREEN APPLE 大森元貴、バラードで発揮する真骨頂 聴き手を幸福にする歌声の効能
ミセスには他にもバラードの名曲がたくさんある。例えばバイラルヒットも記録した「僕のこと」。 TikTokの投稿でも多くのユーザーが楽曲を起用し、〈ああ なんて素敵な日だ〉というサビだけでも耳にしたことがある人は多いだろう。「ああ」のふた文字だけで、大森の歌唱力が並大抵ではないことがわかる。あの高音をサビ頭からきれいに伸ばせるだけでも脱帽だが、サビ中にはこの曲の最高音のhiGが登場する。人気曲であるが故にカバーに挑戦する人もよく見かけるが、やはりこの高音に苦戦する人が多いようだ。一見、大森はなんてことのないように歌っているように聞こえてしまうかもしれないが、実はハイレベルなことを成し遂げているのだ。
次に「Soranji」に注目してみる。本曲でも見事な高音や伸びのある歌声は堪能できるのだが、ここでは大森の表現力の高さに今一度注目してもらいたい。生きることの尊さや喜びを込めて歌われるAメロは、優しく語りかけるようにしてリスナーに歌声を届けていく。発せられる言葉ひとつひとつの減衰も美しく、大森が丁寧に言葉を紡いでいる姿勢が伝わってくる。バックで流れるストリングスも相まって、イノセントな雰囲気に仕上がっている。生きている人間を誰ひとり置いていかない温かな歌に、救われたリスナーも多いことだろう。
今回は3曲をピックして紹介したが、ミセスには他にも「They are」「光のうた」「鯨の唄」などバラード曲が数多くある。バラード曲はゆったりしたテンポだからこそ、ボーカルの表現力が際立つ。歌詞やメロディ、楽器のサウンドによって表情が変わる歌声は何度聴いても心に響くものがあるし、聴き手の気分によっても感じ方が変わってくるのも面白いところだ。時には聴き手を前向きにし、時にはそっと隣にいてくれる優しさがある。本稿を書きながら、改めて大森元貴というボーカルの偉大さを実感した。
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