K-POPアーティスト、“大規模公演は必ず満席”の時代は終わり? ドームクラス成功に必要なものとは
それにはチケットの値段や公演の頻度・規模のバランスが重要だ。元々「海外アーティスト」でもあるK-POPではコロナ禍前から1万円を超えるチケット代金は珍しくなかった。しかし、K-POPファンと他のジャンルを掛け持ちすることが珍しくない日本のファンダムカルチャーでは、K-POPだけではなくさまざまなジャンルと競合しなければならない。また、ファンの中にはわざわざ海外公演にも行くという層も珍しくはないが、実際は「海外まで行くことはできないが、日本公演があれば必ず行きたい」という層が最も多いのではないだろうか。そのあたりのファンにとっては、あまりに生公演の機会が少なく見る機会がないと、やはりモチベーションを保つのが難しくなるかもしれない。そしてコアファンダムには「全公演あるいはなるべく多く公演を見たい」人が多く、特にライブパフォーマンスが売りのグループであればそのようなファンの比率は高そうだ。そのようなコアなファンのモチベーションが下がる理由としては、チケットが高額だったり人気公演でチケットが取れないということ以上に場所や日程の関係、あるいは「公演数が多すぎる」ことで自分が公演に「入りきれない」ことが考えられる。さらに、それによって「客席が埋まらない」という事態が発生することではないだろうか。競争率が高すぎてチケットが取れないことはグループの人気の証明であり、ポジティブな側面も含んではいる。一方で、ある程度の人気があるのは確実ながら会場の客席が埋まりきらないというのは公演を手配する側の問題であり、本来ポジティブなものでしかないコンサート公演に参加したファンに対し、ネガティブな感情による精神的疲労を与えかねない。また、ファンダムの拡大や大規模会場での公演に欠かせないライト層は基本的に会場の雰囲気を重視したり、「わかりやすく人気があるグループ」を好んだりすることが多く、そのような層を離れさせる原因にもなるかもしれない。
日本でのコンサート規模を拡大するには、単純にCD売り上げやチャート成績の推移を見るだけでなく、このようなデリケートなファンダム側の事情を汲んで計画を立てる必要があるだろう。今現在東京ドーム公演を成功させているグループは、これらの問題をタイミングよく無理せずにクリアし、人気の規模や勢いを最大限そのままコンサート規模にうまく反映できていると言える。
世界で人気を拡大するK-POPだが、2023年度は音盤売上でもストリーミング回数でも1位だった日本が最も重要な海外市場のひとつであるという点は今も変わらないだろう。しかし、K-POPグループの活動が長期化することでグループの数が増え、特に日本国内ではK-POPをベンチマークしたグループ等、他ジャンルの競合も増えてきている。さらに円安の影響によるチケット代高騰などもあり、単純にパフォーマンスのクオリティが高ければ公演を打つほど観客が来てくれるという時代でもなくなってきていることは確かだ。ファンダム規模だけでなくアイドルファン界隈での注目度や日本での大衆認知度、タイミング、公演規模や回数・公演期間など、より細かい部分でファンダムと観客も負担を強いないようなツアー計画が求められる時代になっているのかもしれない。
※記事初出時、本文に誤りがありました。以下訂正の上、お詫び申し上げます。(2024年1月22日21:10、リアルサウンド編集部)
誤:2023年度は音盤売上でもストリーミング回数でも1位を獲得した国のがだった日本だったグループも多く、が日本が最も重要な海外市場のひとつであるという点は今も変わらないだろう。
正:2023年度は音盤売上でもストリーミング回数でも1位だった日本が最も重要な海外市場のひとつであるという点は今も変わらないだろう。
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