山下達郎と中野サンプラザ、矢沢永吉・THE YELLOW MONKEYと武道館……アーティストにとっての“聖地”としてのライブ会場
あなたにとって特別なライブ会場は、どこだろう? 初めてライブに行ったあの会場。足繁く通ったあの会場。忘れられないライブを観たあの会場。さまざまな想いのこもった特別なライブ会場があるかもしれない。もちろん、我々オーディエンスだけでなく、アーティストたちにとっても特別なライブ会場が存在する。そんなアーティストそれぞれにとっての特別な、いわば「聖地」のようなライブ会場についてフォーカスしていこう。
まず最初の「聖地」は、この夏、半世紀の歴史に幕をおろした中野サンプラザホール。この会場を愛してやまないのは、山下達郎である。このホールの音響を非常に高く評価する山下は、ツアーのたびに中野サンプラザホールをほぼ必ずスケジュールに組み込んできた。その偏愛のあまり同会場での最多公演アーティストだという。今年7月の中野サンプラザ閉館に際しては、閉館前最終日を自らのライブで締めくくり、消えゆく「聖地」に最後の演奏を捧げた。
1973年にオープンした中野サンプラザホールより歴史が古く、伝説的な「聖地」と言えるのが、日本武道館である。1966年にThe Beatlesが来日公演を行ったことでも有名な日本屈指のライブ会場、日本武道館。この日本武道館を「聖地」とするアーティストは数多く存在するが、そのなかでも真っ先に思い浮かぶのは、矢沢永吉である。2023年10月現在、通算149回ものライブを日本武道館で開催し、史上最多公演アーティスト記録を保持する矢沢。日本武道館の天井に掲揚された日の丸に向かって投げられる“YAZAWAタオル”が印象的だ。
また、THE YELLOW MONKEYも武道館を「聖地」とするアーティストである。1995年に『TOUR '95 "LOVE COMMUNICATION" SPECIAL ~LIVE at BUDOKAN~』で初めてそのステージに立って以降、通常のツアーだけでなく、バンドの重要な節目にも日本武道館でライブを行ってきた。彼らが大切にするバンドの誕生日12月28日に開催されてきた『メカラ ウロコ』と題されるスペシャルライブは、基本的には日本武道館で開催されており、バンド解散後も、吉井和哉のソロプロジェクトで2006年から2015年にかけて毎年12月28日に日本武道館でライブを行うなど、同会場への想いの大きさを感じることができる。そして、今年の12月28日にもTHE YELLOW MONKEYとして日本武道館公演が予定されていたものの、吉井の喉頭癌によって歌唱準備が不十分であることからライブの中止が発表された。ライブ中止の知らせと同時に喉頭癌の根治という快報も届いており、日本武道館で吉井の完全復活を目の当たりにできる日が待ち遠しい。