初音ミク生誕の地でメモリアルな歴史的瞬間が幕開け “雪ミク”も駆けつけた『初音ミクシンフォニー』札幌夜公演

『初音ミクシンフォニー』札幌公演レポ

 初音ミクをはじめとしたバーチャルシンガー楽曲をオーケストラ演奏で楽しむという画期的な趣向をこらす『初音ミクシンフォニー』は、2016年に東京で初開催されて以来、好評を博している。2025年で10周年を迎え、初開催地となる札幌でメモリアルな歴史的瞬間が幕を開けた。2月11日に行われた『初音ミクシンフォニー2025 10th Anniversary』札幌夜公演をレポートする。

 歌声合成ソフトウェアとして企画・開発された初音ミクは、札幌に本社を置くクリプトン・フューチャー・メディア株式会社が手掛けたことから、札幌にゆかりの深いキャラクターとして知られている。北海道唯一のプロ・オーケストラである札幌交響楽団と念願の初共演が実現し、札幌交響楽団の本拠であり、世界屈指の音響空間を誇る札幌コンサートホールKitaraが会場となった。オープニングを飾った曲は、北海道の雪景色が浮かぶ「ステラ」。ウィンドチャイムが雪粒のような音色を伝える。初音ミクのキャラクターボイスを担当する藤田咲がMCとしてステージに登場し「みなさんこんばんは」と発した瞬間、会場全体から感動の声がもれる。客席とのコールアンドレスポンスが自然と生まれ、会場外の寒気を忘れて客席が徐々に温まる。

 2曲目「Loading Memories」は、『初音ミク「マジカルミライ」10th Anniversary楽曲コンテスト』でグランプリを受賞したせきこみごはんによる楽曲。打楽器の力強い同音連打が、メモリアルな本公演を前へ進める。演奏リクエストが多かった「インタビュア」が続き、ピッコロの軽快な音色とチェロのピチカートがアコースティックらしい温かみを感じさせる。楽器も温まってきたところでMC藤田が「みなさん準備はいいですか?」と呼びかけ、「エゴロック」の演奏に入る。栗田博文の指揮もアグレッシブに熱が入る演奏が終わった瞬間、脊髄反射的な万雷の拍手。次の「ヘッジホッグ」では、強くもやわらかなピアノの打鍵と原曲のリズムをオーケストラに導入するスネアのビートにあわせて圧巻のトランペットソロが用意されていた。栗田の明確な指揮でコントロールされた各楽器がどんどん色づき、息づく。

スペシャルゲスト登場

 ここで、MC藤田がスペシャルゲストをステージ上に呼び込む。初音ミクの生みの親であり、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表取締役である伊藤博之が登場。会場全体がどよめく。伊藤が「落ち着いて、落ち着いて」と客席をなだめ、続いて呼び込まれた「雪ミク」がステージから四方へ手を振る。公演当日は「さっぽろ雪まつり」最終日だった。雪ミクは、2010年の雪まつりで披露された初音ミク雪像から着想された。北海道だけでなく、全国各地から駆けつけた観客が、雪ミクの登場を歓待。10周年のメモリアルな瞬間らしい粋な演出を「楽しんでいただけましたでしょうか?」と伊藤。大きな声援と拍手を受けた伊藤が「冬の北海道の情景を思い浮かべながら」と曲紹介するのが、雪ミクとのコラボレーションがテーマである「SNOW MIKU 歴代公式テーマソングメドレー」だ。

栗田博文
栗田博文

 楽しげなアレンジで身も心も軽く、先ほどまでステージ上にいた雪ミクとともに雪景色の中を駆け回りたくなる。メドレーを締めくくる「ハッピーチートデー」は、ウィンター感を醸すスレイベルが鳴らす4拍子がご機嫌。休憩を挟み、『初音ミクシンフォニー』初代テーマ曲「未来序曲」が演奏される。2016年にMitchie Mが作曲。同年、ショートバージョンが演奏され、2017年にフルバージョンが完成した。金管楽器による導入部が華麗な「序曲」感を提示する。初音ミクと「ピアプロキャラクターズ」を形成するMEIKOとKAITOによる「私の恋はヘルファイア」はジャジーな異国風で軽やか、美しい旋律のヴァイオリンなど各ソロパートが印象的な「スノーマン」で、それぞれのアレンジスタイルの2曲が続く。

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