スピッツ、『ひみつスタジオ』とともに“今”を示した究極のツアー 日本武道館公演を観て

スピッツ『ひみつスタジオ』ツアーを振り返る

 ほかにも、すでに新たな代表曲としての風格が備わっていた「美しい鰭」、メンバー全員がボーカルを取る「オバケのロックバンド」(草野→﨑山→田村→三輪の順でボーカルを繋ぐパフォーマンスがめちゃくちゃ新鮮)なども。アルバム『ひみつスタジオ』の魅力をダイレクトに体感できることこそが、今回のツアーの醍醐味だったと断言したい。

 安定感と奔放さを兼ね備えた演奏力、バンドの塊感と一つひとつの音を的確に聴き取れる音のよさ、ステージを取り囲むように置かれた花道を使ったステージング(特に田村はいつものように動き回り、観客とバンドの距離を近づける役割を果たしていた)、メンバー同士の気の置けない関係を実感できるMCなど、「ここがよかった!」というポイントを挙げればキリがないが、特筆したいのは新曲と既存曲が何の違和感もなく混ざり合っていたことだ。

 セットリストには「チェリー」「みなと」「楓」「8823」「涙がキラリ☆」といった代表曲も入っていたが、何度も聴いたことがある名曲がまるで新曲のように響き、アルバム『ひみつスタジオ』の楽曲と意義深いケミストリーを生み出していた。

 過去のヒット曲に頼るわけでもあえて切り離すわけでもなく、新作と旧作をひとつのライブで自然に一体化させることによって、“今”のスピッツを表現する――このバンドが30年以上にわたって支持され続け、今も音楽的な向上を続けている理由もおそらくそこにあるのだろう。

(もうひとつだけ余談を。開演前のBGMが素晴らしく、楽曲を検索しまくってしまった。ギターポップからオルタナカントリーまでジャンルはいろいろだったのだが、メンバーのみなさんも普段こういう音楽を聴いてるんだろうな……と楽しくなりました)

■セットリスト
01. めぐりめぐって
02. ときめきpart1
03. けもの道
04. 跳べ
05. 紫の夜を越えて
06. 大好物
07. チェリー
08. 青春生き残りゲーム
09. 手鞠
10. i-O(修理のうた)
11. みなと
12. 楓
13. サンシャイン
14. 未来未来
15. 夜を駆ける
16. 俺のすべて
17. 美しい鰭
18. オバケのロックバンド
19. 甘ったれクリーチャー
20. 8823
21. 涙がキラリ☆

EN1. 僕の天使マリ
EN2. 醒めない

スピッツが届けるノスタルジーではない煌めき “二人だけの国”を飛び出し、万人に開かれた草野マサムネの言葉

ノスタルジーは美しいけれど残酷なほど人を選ぶ。それは若きスピッツの曲を聴くたびに思うことだ。煌めきをちりばめたギター、軽やかで爽…

スピッツ、BUMP OF CHICKEN、椎名林檎.....なぜアーティストは”生き物”に歌を託すのか? 猫ソングが人気の理由も分析

去る5月22日、国際連合が制定した「国際生物多様性の日」に合わせ、電気グルーヴが「CREATURES of DENKI GROO…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる