『ソニック』シリーズが音楽面で起こし続ける“革新” 中村正人や瀬上純らクリエイターの功績

『ソニック』シリーズ音楽の“革新性”

 10月17日、セガは『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズの最新作『ソニックスーパースターズ』をリリースした。

 同作が目指したものは「クラシックソニック」の進化。メガドライブで発売された『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(1991年)をはじめとするドット絵のクラシックシリーズのタッチ&フィールはそのままに、グラフィックスを3Dにするという目標を持って始まったプロジェクトだという。2022年6月に発売された『ソニックオリジンズ』は、メガドライブ並びにメガCDで展開されたクラシックタイトルのコンピレーションだが、今作は完全新作の2D横スクロールゲームである。そのほか、新要素として「エメラルドパワー」や「協力プレイ」などが追加。様々な試みにより、『ソニックスーパースターズ』には新しさと懐かしさの両方が感じられる。

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 音楽面にもそれは反映されており、1990年代のドラムンベースやテクノ、ファンクのニュアンスが随所に感じられ、そもそも音の鳴り方もメガドライブ風である。元祖『ソニック・ザ・ホッグ』の発売から実に30年以上が経った今、こういった作品をリリースすることに作為的なものを感じる。

『ソニックスーパースターズ』オリジナルサウンドトラック トレーラー -PINBALL CARNIVAL ZONE・ACT1-

 音楽面においても非常に多くの示唆がある同シリーズ。

 なぜ、我々はソニックの音楽に30年以上も惹かれ続けてしまうのだろうか。本稿では、同作サウンドプロデューサーの瀬上純氏のコメントと共に、改めてその革新性について触れてみたい。

ドリカム 中村正人がゲーム音楽に起こした革新

 『ソニック』シリーズの音楽において、特筆すべきユニークな点はいくつもある。しかしその中でも驚天動地クラスの革新が大きく分けて2つあったように思われる。この2点に関しては、ゲーム音楽がその枠を完全に超えた瞬間だった。まずはひとつ目、DREAMS COME TRUEの中村正人が手掛けた『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のサウンドトラックだ。その影には、FM音源が6チャンネルも搭載されたメガドライブの登場など、ハードウェア側の進化がある。

 『スーパーマリオブラザーズ』の対抗馬として企画された『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』は、メガドライブ用のゲームソフトとして1991年に第1作目がリリースされた。メガドライブの発売は1988年。ハードとしての比較対象はファミリーコンピューター(ファミコン)だったが、メガドライブのサウンド面における性能は当時としては破格であった。

 ファミコンに搭載されたPSG音源(いわゆる“ピコピコ音”)でなく、メガドライブには音色数が段違いのFM音源が6チャンネルも内蔵されていた。これにより、同機では楽器に近いサウンドが表現できるようになったのである。

 そこで白羽の矢が立ったのが、当時『卒業』(TBSドラマ)の主題歌「笑顔の行方」(1990年2月リリース)でブレイクしたばかりの中村正人だった。

 同氏は当時の様子について度々インタビューで語っているが、この時期については2021年にテックメディア「ギズモード」にて「ドリカムもすぐに売れるわけではないと思っていたので、アルバイト感覚でいろんな音楽を作っていた」と回想している(※1)。『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の発売は1991年だが、制作はドリカムがブレイクする前からスタートしていたのかもしれない。

 そして、同氏は本作に対し“ゲーム音楽”の作り方を持ち込まなかった。以下、同インタビューから引用する。

「1980年以降『フットルース』とか『フラッシュダンス』とか、音楽からヒットが生まれる(映画)作品がすごく流行っていたんです。『ストリート・オブ・ファイヤー』とか。そうした映画のサントラ盤がグレイテスト・ヒッツになるくらい売れていた時代で、ソニックの音楽もそういう風にしたくて、僕が作った音楽をまとめたサントラがグレイテスト・ヒッツみたいになって売れてくれればいいなという想定で作りはじめました」(※2)

 当時、中村がヒントを求めたのは「映画」だった。結果的にこれが広範囲に影響を与え、今もなお同作のサウンドトラックは評価され続けている。もはやアンセムと化した「Green Hill Zone」はYouTubeやSoundCloud上に無数にリミックスが存在し、数百万再生を稼ぐものがいくつもある。アメリカの著名ベーシスト・Thundercatなども、折に触れて中村を絶賛している。

 そして2021年9月、ついに公式から「次のせ~の!で - ON THE GREEN HILL –」がリリースされた。作編曲を中村が担当し、作詩を吉田美和が担ったこの曲は、まさしく30年来の答えとして珠玉の輝きを放っている。また、翌2022年には映画『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』の日本版主題歌である「UP ON THE GREEN HILL from Sonic the Hedgehog Green Hill Zone」も発表された。

DREAMS COME TRUE 「UP ON THE GREEN HILL from Sonic the Hedgehog Green Hill Zone」

 ゲーム音楽から始まった物語は、その枠に収まらず映画的ニュアンスを含み、海を超えて各世代のミュージシャンに多大な影響を与えてきた。やがて本当に映画と結び付いてしまうのだから、ソニックの、延いてはドリカム中村の辿ってきた道のりに途方もないスケールを感じる。ソニックと共に走り続けてきた夢が、ひとつ完結した瞬間だった。

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