『プロセカ』MORE MORE JUMP!が描く“アイドル”の奥深さ 聴き手の心情に寄り添う葛藤や成長の物語

 今年9月30日に3周年を迎え、リズムゲームとしてだけでなく多彩なストーリーが描かれる青春譚としても楽しまれているスマートフォン向けゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下、『プロセカ』)。

 異なる音楽性を持つ5つのユニットの物語がときに交差しながら描かれる『プロセカ』だが、その中でも王道アイドルの立ち位置を担っているユニットが「MORE MORE JUMP!」(以下、モモジャン)だ。

 モモジャンは、それぞれ人気アイドルとして活躍した過去がある桐谷遥、桃井愛莉、日野森雫の3人と、アイドルに憧れを持つ花里みのりの4人からなるフリーのアイドルグループ。その特性上、ゲームに実装されている楽曲は明るくポップなナンバーが中心となっている。既存のボーカロイド楽曲では「どりーみんチュチュ」(emon(Tes.))、「ビバハピ」(Mitchie M)、「ハッピーシンセサイザ」(EasyPop)など、書き下ろし楽曲であれば「アイドル新鋭隊」(Mitchie M)、「モア!ジャンプ!モア!」(ナユタン星人)などが挙げられる。そういった明るく可愛らしいアイドル像を投影した楽曲がある一方で、彼女たちが舞台裏で抱えている心情を描いた楽曲も見逃せないポイントだ。

 メンバーの過去や、クリエイター/アーティストとしてステップアップしていくことで生まれる葛藤をはじめ、周囲の人間との確執も描かれる『プロセカ』のイベントストーリー。そこでは、ストーリーに沿った、キャラクターの内なる思いを反映させたようなオリジナル楽曲が実装されている。

 モモジャンのストーリーでは、アイドルとして明るく、外向きの姿を崩さないように努めるメンバーの姿が描かれる。特にキーキャラクターであるみのりが憧れの人物として挙げている遥は、いつ誰に見られてもアイドルとして恥じないように気を遣う姿が印象に強く残る。しかし、モモジャンの舞台裏を描くストーリーやそこで実装された楽曲では彼女たちの不安や悩みが吐露され、それを乗り越えていく強さに触れることができる。現実に存在するアイドルの場合、ファンがメンバーのそういった一面を見ることは難しいかもしれない。しかし、彼女たちの心情に沿った楽曲とともに、そんな成長の過程を味わうことができるのが、モモジャンの魅力にも繋がっている。

はぐ / MORE MORE JUMP! × 鏡音レン

 直近で行われたモモジャンのイベント「その手導くぬくもりは」では、雫がかつて所属していたアイドルグループにまつわるエピソードが明かされる。そこで実装された楽曲「はぐ」(MIMI)は、雫が責任感と使命感で走り続けたゆえに孤独にさいなまれることになってしまった過去と同時に、それを乗り越えた彼女の温かさと優しさが感じられる歌詞になっている。

チームメイト / MORE MORE JUMP! × 鏡音レン

 アイドルとして本格的に活動を始めたみのりが、友情と芸能活動のどちらを取るかで揺れ動くイベント「STEP by STEP!」に書き下ろされたのがHoneyWorksによる「チームメイト」。彼女が下す決断に至るまでの不安、友情を信じる強い思いやアイドル活動への高いモチベーションなど、みのりがイベント時に持ち合わせていた感情が全て詰め込まれたような楽曲だった。

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