三浦大知、ミセス 大森元貴、King Gnu 井口理…自在なハイトーンで魅了するボーカリストたち
次に取り上げるのは、男女ツインボーカルを擁する6人組バンド Penthouseの浪岡真太郎(Vo/Gt)である。各サブスクリプション音楽配信サービスが独自の視点でトレンド曲をまとめたプレイリストの常連でもあるPenthouse。2023年12月上旬現在、Spotifyでは「City Pop: シティ・ポップの今」「Soul Music Japan」「都会の空と音楽と」「夕方ジェネレーション」など、実に多くのプレイリストに名を連ねている。これは、そのまま彼らの音楽性の幅広さ、並びに彼らが多様なニーズにマッチしたサウンド作りをしている証拠と言っていいだろう。浪岡のハイトーンは、ソウルというよりもハードロックのシャウトに近く、ミックスボイスのような迫力がある。中低音~中高音では綺麗な声で聴かせることもあるが、高音になると地声自体が骨太になるのも特徴的だ。「アイデンティファイ」は軽快で洒脱なファンクナンバーだが、高音のロングトーンでも綺麗に抜けるように歌っている部分があり、ボーカリストとしての幅を広げようとしている姿が窺える。浪岡はバンドのSNSで邦楽のトレンド曲を英詞にしてカバーする動画を定期的に投稿しているが、ジャンルを問わずチョイスする楽曲、そして訳詞に、日本語と英語の語感を飛び越えようとする意欲とボーカリストとしての探求心を感じる。
最後は、最新曲「Sheep」でハイトーンの域を超越したハイトーンを聴かせている三浦大知に触れたい。三浦大知はスキルの宝庫だ。歌、ダンスに加え、ピアノ、ギターを弾き語り、ドラムを叩きながらの歌唱、さらにはAbleton Pushを駆使したパフォーマンスと、長い活動の中でそのスキルは増え続けている。彼のルーツの根本はブラックミュージックだと思うが、リズムやメロディに対してのボーカルアプローチが実に多角的だ。スキルを研磨し続けることで、新たなスキルを開拓している。2024年1月24日に発売される7thアルバム『OVER』から、11月15日にデジタルシングルとして先行配信された「Sheep」は、前述した“自己開拓”の象徴のような1曲。かなり攻めた革命的な曲だが、軸にあるのはあくまで三浦のボーカルである。エレクトロニカ色が強く音数の少ないバックトラックに、歌い出しから高音をメインにした三浦のボーカルが漂うように進行。1曲を通してほとんどファルセットで歌い、短いフレーズを繰り返しながら、さらに高音へと移行していくなど、三浦のスキルが強烈なフックとなっており中毒性も高い。曲によりいろいろな声を使い分けることができるのも真骨頂だが、「Sheep」では、三浦の柔らかく芯のある高音の魅力が改めてよくわかる。
2023年もさまざまな楽曲に心を揺さぶられたが、音楽のスタイルがますます多様になっていく中で、こうした圧倒的な歌唱力で聴き手の心を掴む楽曲が音楽シーンを盛り上げているのは素晴らしいことだ。2024年はどんな音楽に心を揺さぶられるのか、楽しみでならない。
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