YOASOBI、宮本浩次、Nulbarich、なとり、Chilli Beans.、くじら……注目新譜6作をレビュー
なとり「Cult.」
TikTokを中心に音楽活動を始めた20歳のシンガーソングライター。似たような出自の若手の歌い手が珍しくない時代だが、昨年からヒットを連発しているなとりに関しては、「新世代」という言葉がいい意味でしっくりこない。声を張り上げない唱法、甘く憂いを帯びているけれど自己陶酔は感じない声質、かなり低いキーも難なく歌える音域などが魅力的だ。初めて聴いたのに初めての気がしないうえ、そういえばこういう歌声に出会いたかった、とハマっていく感覚はよくわかる。特定のジャンルにこだわらないマルチタイプのアーティストである印象を受けるが、この最新曲は跳ねる鍵盤とアコースティックギター、あとは手拍子が印象的なアップテンポ。後半に激しく動くベースラインも聴きどころ。(石井)
Chilli Beans.「doll」
2ndアルバム『Welcome to My Castle』からの先行配信曲。始まりはギターのカッティング。〈ぐちゃぐちゃな期待にまた応える為 私暗いとこから笑ってるの〉という歌い出しで、そのまま心の闇を全部吐き出すのかと思いきや、曲は甘くとろけるソウル調に。全体を引っ張るのはゆったりしたキックとグルーヴィーなベースである。スリーピースのバンドは昔から星の数ほどあるが、同じ楽器と編成で、ギターを主役とするロック的発想を軽々と超えていける3人の感性に脱帽する。〈maybe I’m Sick girl〉〈ころして〉などの不穏な言葉が、透明なハーモニーによってゆらゆらと重なっていくさまは、白昼夢の中で窒息していくような幻想美の世界。すごい曲だ。(石井)
くじら「FRIENDLY・NIGHTMARE」
ボカロPとしての作品、yamaやAdoなどをフィーチャーした楽曲、SixTONES、DISH//らへの楽曲提供といった活動を経て、2021年に自らの歌唱曲を発表し始めたくじら。2ndアルバム『野菜室』の1曲目に収められた「FRIENDLY・NIGHTMARE」は、ネオソウル〜チル系R&Bの雰囲気を感じさせる、ゆるいグルーヴのミディアムチューン。強張った心と体をほぐしてくれるようなボーカルも魅力的だが、特筆すべきは歌詞の質の高さ。全く先が見えず、良くなる気配もない社会を背景にしながら、〈帰りの道の さみしい ごと愛したい!〉というフレーズをあくまでも軽やかに伝えるリリックは、世代や音楽の趣味を超え、多くの人の心を捉えるだろう。ボーカルと絡むホーンの響きも心地いい。(森)
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