YOASOBI、Mr.Children、あいみょん、Vaundy、Tani Yuuki、『ブギウギ』主題歌……注目新譜6作をレビュー

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はYOASOBI「勇者」、Mr.Children「Fifty’s map 〜おとなの地図」、あいみょん「ノット・オーケー」、Vaundy「ZERO」、Tani Yuuki「最後の魔法」、中納良恵(EGO-WRAPPIN')、さかいゆう、趣里「ハッピー☆ブギ」の6作品をピックアップした。(編集部)

YOASOBI「勇者」

 3rd EP『THE BOOK 3』の冒頭を飾る一曲で、TVアニメ『葬送のフリーレン』(日本テレビ系)OPテーマへの書き下ろしでもある。〈悪を討ち取りし勇者〉などストーリーに沿った言葉が次々と飛び出す歌詞は、さすが“小説を音楽にするユニット”の面目躍如。オリエンタルなフレーズが断片的に飛び交うトラックと、余韻も残さず次のメロディへと駆け続けるikuraのボーカルは、実際のテンポとは別に、凄まじいスピード感を運んでくるもの。疾走感というよりは、次に、次に!と追い立てられる焦燥に近いかもしれない。無敵に見えるYOASOBIの連続ヒットは、この「次に!」を煽る感覚がキモではないだろうか。聴いても聴いても渇きが止まらない。むしろ次がどんどん欲しくなる。(石井)

YOASOBI「勇者」 Official Music Video/TVアニメ『葬送のフリーレン』オープニングテーマ

Mr.Children「Fifty’s map 〜おとなの地図」

Mr.Children 「Fifty's map ~おとなの地図」MV

 21作目の最新オリジナルアルバム『miss you』収録曲。「Fifty’s map 〜おとなの地図」という曲名の由来は、桜井和寿(Vo/Gt)もフェイバリットに挙げている尾崎豊の代表曲「十七歳の地図」だろうか。ゆったりとリラックスした雰囲気を感じさせるバンドの演奏をストリングスが美しく彩り、大らかで温かいボーカルが広がっていくミディアムチューンだ。

 耳触りのいい音像のなかで紡がれる歌詞は、タイトル通り、50代の大人の現在地。社会に出て30年以上が過ぎ、自分の能力の限界や先行きも見えてきた。ときどき“独りになりたい”と思ったりするが、当然、すべてを投げ出すことはできないし、どこにも逃げ場はない。それでも桜井はこの曲を通して、〈似てる仲間が/ここにもいるよ〉と呼びかける。年齢を重ねることの機微を描き出す、豊かで奥深い名曲だと思う。(森)

あいみょん「ノット・オーケー」

NOT OK

 4カ月ぶりの新曲。歌い出しは〈想像ができる/ひとりで居ること/2日目の湯船も/透き通っているんだろう〉。終わりゆく恋、とっくに破綻して戻らない二人暮らしの風景を、こんな言葉で歌にする才能に頭を垂れる。恋人を追うでもなく、悲しみに酔いしれる様子もなく、〈ダメに成る時は成るでしょう〉と口にしてみせる感覚もいい。優れたフォークシンガーに必要不可欠な言語感覚を継承しつつ、従来のウエットな情念や女らしさの定義から自由でいるところが、あいみょんの強さであり面白さだろう。ストリングスやエレキギターが彩りを添えているが、基本はアコギ一本で成立しそうなフォークソング。どこか昭和っぽい懐かしさ、落ち着いた歌唱もクセになる。(石井)

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