中森明菜、令和でも存在感を示す歌声 時代を超えてZ世代に響く“明菜ビブラート”

 作曲家・林哲司のデビュー50周年記念企画作品『50th Anniversary Special A Tribute of Hayashi Tetsuji – Saudade –』がリリースされた。同作には中森明菜が参加し、名曲「北ウイング」を現在の歌声で収録。SNSでは「生きる伝説だ」「明菜様の今の歌声が聴ける日がくるなんて幸せ」「活動休止直前の時よりはるかにレベルアップされている」などのコメントでファンが沸いている。

 1982年に「スローモーション」でデビューした中森明菜。同年にデビューした小泉今日子らと「花の82年組」と呼ばれ80年代のアイドルシーンを牽引し、80年にデビューした松田聖子とは人気を二分。90年代にはドラマ『素顔のままで』(フジテレビ系)で安田成美とW主演を果たすなど、女優としても活躍した。2022年デビュー40周年を迎え、それに伴い今年4月には1989年に開催されたデビュー8周年目のアニバーサリーライブ『AKINA INDEX-XXIII The 8th Anniversary』が、『中森明菜イースト・ライヴ インデックス23 劇場用4Kデジタルリマスター版』として劇場公開された。そして今回の『50th Anniversary Special A Tribute of Hayashi Tetsuji – Saudade –』への参加と、話題が続いている。

 同作は、作曲家・林哲司の50年のキャリアで初となるトリビュートアルバム。松原みき「真夜中のドア~Stay With Me」、杏里「悲しみがとまらない」、竹内まりや「September」など手がけた世界的にも有名なシティポップをはじめ、上田正樹「悲しい色やね」、菊池桃子「卒業-GRADUATION-」など、林の代表曲を新たなアレンジで収録。中森明菜をはじめ稲垣潤一&小柳ゆき、上坂すみれ、原田知世、松本伊代、中西圭三など林と縁のあるアーティストがカバーした。

北ウイング-CLASSIC- Covered by 中森明菜- 林哲司トリビュートアルバム『Saudade』【ティザー】

 中でも話題を集めているのが、中森明菜が歌う「北ウイング -CLASSIC-」だ。原曲である「北ウイング」は、康珍化の作詞、林哲司の作曲・編曲で、1984年にリリースされた中森明菜7枚目のシングル表題曲。様々なチャートで1位を獲得した他、第13回『FNS歌謡祭音楽大賞』最優秀ヒット賞などその年の賞レースも賑わせた。康と林の起用は中森自らの指名であり、「北ウイング」という漢字+カタカナの曲名も、松任谷由実の「中央フリーウェイ」から影響を受け中森自身が考えて付けたという。

 原曲での歌声は、ウィスパー気味のボイスで歌う低音のAメロ、Bメロ。サビは一転して壮大なハイトーンを繰り出し、まさしく滑走路からテイクオフするかのよう。サビの終わりのロングトーンも印象的で、いわゆる「明菜ビブラート」の片鱗を感じさせる、圧倒的な歌唱力で確固たる存在感を発揮した。またサビを締めくくる〈少し不安よ〉という一言はまるで語りかけるセリフのようで、当時テレビの画面から上目使いで送られてくる彼女の視線に、思わずドキッとしたファンも多かった。

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