中森明菜という唯一無二のボーカリストを堪能できるライブ7本一挙放送 珠玉の映像で味わう鮮烈なパフォーマンス
1982年にデビューした中森明菜が今年40周年を迎えた。そんな記念すべき年に、突如本人からのメッセージがTwitterにて届けられ、再始動を待ち望むファンを沸かせたのは記憶に新しいだろう。中森明菜というと、デビュー当時こそ人気アイドルとして数々のヒット曲を生み出したが、その歌唱力やステージングが徐々に評価されていったこともあり、今では日本を代表するトップボーカリストといっても過言ではない。特にライブでのパフォーマンスには定評があり、ツアーごとに変わる選曲や演出もファンにとっては楽しみだった。そんな彼女の1990年代から2000年代にかけての珠玉のライブ映像がWOWOWで10月28日に7本一挙放送される。このタイミングだからこそ、まさに必見の特集といってもいいだろう。
まず観ておきたいのが、『中森明菜 TRUE LIVE』だ。1995年12月に発表した新録メインのベストアルバム『true album akina 95 best』リリースに伴うツアーの様子を収めたものである。この時は神戸と横浜で合わせて3公演のみという貴重なコンサートだったこともあり、ファンの間でも伝説化している。ここでは1995年12月16日のパシフィコ横浜国立大ホールでの模様を観ることができる。
前半は当時人気の高かった4人組ロカビリーバンドのMAGICがサポートしているのが珍しい。おそらくStrayCatsのブライアン・セッツァーがプロデュースしたシングル「Tokyo Rose」の作詞に、ボーカル&ギターの上澤津孝が参加した縁なのだろう。グレッチのセミアコギターとウッドベースによるビートに乗ってシャウトする「飾りじゃないのよ涙は」や「TATTOO」はとにかくエモーショナルでかっこいい。たった3曲なのが残念だが、オープニングアクト的に盛り上げてくれるのだ。
そしてここからは、吉田建バンドを従えたフルバンドセットに切り替わる。ここからのパートは同年7月にリリースされたオリジナルアルバム『la alteración』からの楽曲をメインに、新旧の代表曲を織り交ぜて進んでいく。神秘的なイントロの後、白いウィッグ姿で熱唱する「GAIA〜地球のささやき〜」からダンサブルな「愛撫」、しっとりとスパニッシュ風に始まる「ミ・アモーレ[Meu amor e…]」といった流れで早くもピークを迎える。
緩急を自在に歌いこなす彼女の歌唱力はもちろん、一曲ごとに変わる衣装も見どころだが、特に後半のバラードが続くパートは圧巻だ。歌の合間に見せる一筋の涙には思わずもらい泣きしてしまうだろう。吉田建(Ba)の他、江口信夫(Dr)、島健(Key)、旭純(Key)、鈴川真樹(Gt)、成田忍(Gt)、山口とも(Per)、新居昭乃(Cho)という凄腕ミュージシャンたちの卓越した演奏もまた聴きどころのひとつ。大人っぽいバラードが続いた後に、アイドル期最初期の名曲「セカンド・ラブ」と「スローモーション」で締める構成も見事だ。アンコールでは再びアップテンポで盛り上げて壮大なコンサートは幕を閉じる。ベストアルバムの選曲をベースに、ボーカリストとしての魅力を目一杯見せてくれるこのライブ映像は、“明菜入門”としてもぴったりではないだろうか。