中森明菜、令和でも存在感を示す歌声 時代を超えてZ世代に響く“明菜ビブラート”

 今回の「北ウイング-CLASSIC-」は、ピアノとストリングスの儚げな演奏をバックに、まるで夜のジャズバーで聴くようなムード。優しく包容力のある歌声は、彼女特有の耳に残るハスキーさを残しながら、まるで弦楽器のような伸びやかさとビブラートを聴かせている。ポツリポツリと語りかけるような歌い方は、遠い過去の昔話を読み聞かせするような雰囲気もあり、もともと大人の恋愛模様を歌った歌詞ではあるが、現在の彼女の歌声によって、新たな物語が紡ぎ出されているかのようだ。デビュー40年という長い歳月をかけて到達した、包容力と慈悲深さに満ちた歌声は、まさしくダイアモンドであり、匠の領域だと言えるだろう。

 そんな中森明菜の歌声の魅力の一つは、圧倒的なパワーを持った歌唱力を活かした、「明菜ビブラート」に代表される独特の表現力だ。ロングトーンの最後を大きく揺らす「明菜ビブラート」は、肺活量も相当必要だろう。デビュー当時は決してそこまで個性的な歌い方ではなかったが、「DESIRE -情熱-」あたりからそれは顕著になり、「ジプシー・クイーン」や「TANGO NOIR」「AL-MAUJ」などのエキゾチック路線ともマッチして、一躍彼女の代名詞となった。

 現在TikTokでは「飾りじゃないのよ涙は」や「少女A」など中森明菜ソングのカバー動画が数多くアップされており、「明菜ビブラート」の「歌ってみた動画」も多数。中森明菜の歌の上手さ、独自の世界観、そして神秘的な存在感が、時代を超えてZ世代にも響いている。ちなみに「中森明菜×林哲司」楽曲はほかにも数多く存在し、シティポップサウンドの「涙の形のイヤリング」、中森らしいパンチの効いた「October Storm −十月の嵐−」、山口百恵を彷彿とさせるバラード「恋路」など、どれも一聴の価値があるので気になった方はぜひ。

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