Kj「一番いいツアーだった」 The Ravens、歴戦の猛者たちが愛と情熱を爆発させたファイナルレポ

The Ravens『Scarecrows Tour』レポ

「一番いいツアーだった」

 The Ravens『Scarecrows Tour』、10月3日の名古屋公演を皮切りに全国で繰り広げてきたライブの終着点であるツアーファイナル、東京・恵比寿LIQUIDROOM。アンコールでステージに戻ってきたKj(Vo/Gt/Dragon Ash)は実感を込めてそう口にした。その言葉にはさまざまな想いが乗っていたはずだが、確かにそう言い切るに足るだけの熱と愛と衝動が、この日のLIQUIDROOMにはあった。

Kj

 ソールドアウトのフロアを前に、最新アルバム『SCARECROWS』オープニングナンバー「Hi There」が流れるなか、まずステージに登場した渡辺シュンスケ(Key/Schroeder-Headz)による流麗なピアノプレイから幕を開けたこの日。続けて姿を現したPABLO(Gt/Pay money To my Pain、POLPO、RED ORCA)、武史(Ba/山嵐、OZROSAURUS)、櫻井誠(Dr/Dragon Ash、ATOM ON SPHERE)、そしてKjに大きな拍手が送られ、『SCARECROWS』の先行シングルとなった「Nimby」からライブはスタートした。櫻井のビート、PABLOのリフ、武史のベースライン、そして渡辺のキーボード、すべての楽器が力強く鳴り響くと、途端にLIQUIDROOMのフロアからは拳が突き上げられ、声が上がる。フロアを見渡すように歌うKjとオーディエンスの間に、冒頭から濃密なコミュニケーションが繰り広げられていく。「10月29日、本日快晴。ツアーファイナル、皆さんの暗い胸が晴れますように。皆さんを喜びで満たせますように。We are The Ravens!」――Kjの名乗りに改めて大きな歓声が巻き起こった。

 「Black Jean Boogie」「(曖昧さ回避)」とアルバムの曲順通りのオープニングからして、The Ravensとして2作目となる『SCARECROWS』にメンバー自身が大きな手応えを感じていることが伝わってくる。もちろん1stアルバム『ANTHEMICS』(2022年)からの楽曲もセットリストにはたくさん盛り込まれていたのだが、「楽園狂想曲」や「Wayfarer」、「アポフェニア」といったそれらの楽曲も『SCARECROWS』を経た今、さらなる肉体性と熱量をもって響いてくるようだったし、新作の曲であればなおさら。Kjがハンドクラップが広がるフロアに笑顔でサムズアップしてみせた「Scarecrows」にしろ、ヘヴィなセッションから突入し怒涛の展開を見せた「Picaresque」にしろ、こうしてロックバンドで板の上に立ち、オーディエンスとコミュニケーションすることのシンプルでプリミティブな喜びが爆発していて、メンバー5人ともがとても楽しげにプレイしているのが印象的だった。

武史

 KjはMCで「昨日から今日ここに来るのが嫌だった。なんでこのバンドをやってると毎回こんな気持ちにならなきゃいけないんだろうって思う」と言っていた。それだけこのバンドでライブをしている時間がかけがえのないものだということだ。歴戦の猛者たちの集合体であるThe Ravensがこんなにもピュアな、ロックバンドの原点のような喜びを感じながら音を鳴らしていることに感動する。ライブ中もKjは何度もメンバーと目を合わせ、前方から飛んでくるクラウドサーファーに手を差し伸べていた。

PABLO

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