ソ・イングク「音楽は自分の人生そのもの」 日本デビュー10周年、歌手活動への特別な思い
自分にはやりたい音楽がある
——それから10年が経ったのを記念して、今年10月にシングル『THE X』をリリースしました。レトロポップ「Don't Be Jealous」、タイトなドラミングで始まるR&B「FLAVOR」、王道のバラード「Thank you」と、異なるカラーの3曲が収められています。どういう狙いでこのような構成にしたのでしょうか。
ソ・イングク:次にリリースする作品では、個人的に気に入ったものを収録しようと思っていたんです。なかでも「Don't Be Jealous」は自分が見せたい姿を出そうとFlip_00という作家とともに制作したんですけれども、仕上がりをとても気に入っています。
——『THE X』のプロモーションイベントを精力的に行いましたが、日本ファンの反応はいかがでしたか?
ソ・イングク:みなさん、日本語の曲はもちろんのこと、韓国語の曲も一緒に歌ってくれるんです。とても感動しましたね。
——今後も多彩な音楽活動を期待していますが、ご自身としてはどういう方向へ進みたいと思っていますか?
ソ・イングク:これまではその時のニーズに合わせたアルバムを作ってきましたが、今後は本当にやりたいことをやりたいと思っています。時間や状況の制約から離れた、枠にはまらないものを生み出していきたいです。僕自身も参加しているプロデューシングチーム・ソシネも、そういう気持ちから結成しました。
——ソシネが手掛けた楽曲の中では2022年にリリースした「MY LOVE(Feat. RAVI)」が印象に残っています。品のあるR&Bで、ヒップホップの旨味も感じられる素敵なサウンドでした。同曲がイングクさんの理想のスタイルなのでしょうか?
ソ・イングク:いいえ、理想のスタイルは開発している途中といった感じです。アップグレードがこれからも必要です。また、そうした試みの中からファンのみなさんに喜ばれる曲が出来上がってくるんじゃないかと考えています。
——具体的にはどんなサウンドを目指しているんでしょうか。
ソ・イングク:そうですね……。サウンドの方向性はこれから必要になることだとは思っています。しかしながら、どのジャンルへ進むのか、現時点で問われても難しいというのが本音です。やりたいことはその日の気分で違いますし、やはりひと言で言うのは難しいですね。ソシネは参加している人たちのそれぞれのスタイルがとても強いチームなんです。だからシナジー(相乗効果)によってすごく良いものが出来上がると思うんですよ。その成果のひとつが「MY LOVE(Feat. RAVI)」だったわけです。あの曲でファンに対して自分が本当にやりたいものをアピールできたという意識はあります。今後もシナジーによってどんなタイプの曲が生まれるのかは分かりませんが、プロデューシングチーム・ソシネを温かく見守っていただければ嬉しいです。
――歌声に関してはオンリーワンの輝きを放っていると思っていますが、発声の仕方などで影響を受けた歌手はいるのですか?
ソ・イングク:最近ミュージカルの練習をしているのですが、その方面で活躍している歌手にものすごく刺激を受けてるんです。韓国ではホン・グァンホさん、パク・ヒョシンさん。あとはディマシュ・クダイベルゲンさん。彼の「S.O.S. d'un terrien en détresse(悩める地球人のS.O.S)」という曲を聴いてみてください。カザフスタンのシンガーなんですが、圧倒的な歌唱力ですよ。
——K-POPシーンで刺激を与え合うような人はいますか?
ソ・イングク:歌手活動は韓国でやっていないわけではないんですが、あまりしていないので(笑)。だから歌手の友達よりも俳優の友達の方が多いんです。とはいっても、チュウォンさんというアーティストとは刺激を与え合う間柄ですね。
——答えにくいかもしれませんが、ソ・イングクさんにとって「音楽」とは何でしょうか?
ソ・イングク:この質問に対して少し大げさに答えると、音楽は僕の人生だと思っているんです。子供の頃から現在までたくさんの音楽を聴いて育ちましたし、自分の人生のすべてを音楽に捧げたいと思って生きてきました。音楽をやっていてすごく辛かったこともありました。妥協できるところが見出せなくて大変だったときもあります。だから音楽と疎遠になった時期もありました。けれども、やはり自分はどんな状況になっても結局は音楽の世界へ戻ってきたんです。自分にはやりたい音楽があります。だからソシネを結成して作ったのが前述の「MY LOVE(Feat. RAVI)」であり、新曲の「Don't Be Jealous」です。とにかく僕は「自分は音楽をやるんだ」「これからこういうものを作りたいんだ」と思っただけで楽しくなる人間なんです。そう考えると、音楽は自分の人生そのものなんだと再認識するんです。