ザ・リーサルウェポンズ、理想全開にした新たな試み “陰キャ界の陽キャ”な実体験と連動させた仕掛けも
ザ・リーサルウェポンズが散りばめた社会への問題提起
――でもですね、若干こじつけですけど、今回は世相を反映したような歌が結構多くて。仮想通貨もそうですけど、「チクタク」とか。
アイキッド:これはSNSの歌で、いかにTikTokが有用かという歌ですね。
――歌詞がシニカルすぎて笑っちゃいましたけども。
アイキッド:そうですか(笑)。でもね、普通の高校生でも、あれをやることによって承認欲求を満たすことができる、素晴らしいものだと思います。そういう歌ですよね、ジョーくん。
サイボーグジョー:はい(笑)。
――こういう、皮肉も入れて現代社会へ物申すみたいな……。
アイキッド:しかも、なるべくソフトリーに。
――そうそう。それでクスっとさせるという。うまいなぁと思います。
アイキッド:そこで、彼(ジョー)が非常に有用なんです。彼が歌うことによって、柔らかくなるんです。日本人が日本人をディスると怒られるんですけど、彼が言うとOKだったりするんで。タメ語が許されますし。関西人もそうですね。
――ああ、なるほど。
アイキッド:だから私は彼に「関西弁を覚えろ」と言ってるんです。私は関東人なんですけど、関東人が大阪に行って関西弁をしゃべると、すごくウザがられるのに、外国人が関西弁を使うとすごい喜ばれる。それをうまく利用して、こっちの思いを全部伝えてもらおうかなと。
サイボーグジョー:スケープゴートか。
――スケープゴートではないと思う(笑)。スピーカーですかね。
アイキッド:主犯と実行犯という感じです。
――わかりやすい例えですね。なるほど。
アイキッド:あと、「キングオブポップ」。これはいい曲です。ゴスペルですね。いずれマイケル・ジャクソンの曲はどこかで書かなきゃいけないと思っていて、コード進行は少しだけ「Man in the Mirror」に似てるんですけど、まったく別の曲になりました。この曲は初めて、サビの頭がジョーくんじゃないんです。お客さんなんです。新しい試みで、サビに入ったらリードボーカルがスイッチするということをやってます。
――この曲も、多様性とか、正義感の押しつけとか、現代的な問題を歌詞に取り込んでいますよね。よく聴くと。
アイキッド:MJの騒動があった時に、最高裁で無罪判決が出てるのに、いまだに言われるじゃないですか。誰かが言わなきゃと思って、それを書こうと思ったんです。ね?
サイボーグジョー:まあ、日本だから大丈夫ね。昔からのアメリカ人のファンも、「マイケル? うーん、どうかな」と思ってるかもしれない。日本ではセーフ。
アイキッド:難しいところだね。
――いい曲でありつつ、問題提起でもある。あと、注目したい曲は「夏の日のメガドライブ」ですね。YouTubeのコメント欄に「これを聴いて涙が止まりません」という、かつてのゲーム少年からの書き込みが殺到してますけど、思い入れのある人が多いんだなと改めて思いました。
アイキッド:セガのメガドライブは、どうしてもマイノリティなんですよ。マジョリティである任天堂のスーパーファミコンをやってる人間は、イニシエーションを通過して、まともな大人になっていったと思うんですけど、私のようにメガドライブというマニアックなものにハマってしまうと、そのあとの人生に多大な影響を及ぼすので。なんて言うのか、共感、参加意識、仲間意識、そういうものが非常に感じられますし、それが欲しかったんですね。自分の人生を振り返った時に、メガドライブは絶対に外せないので。
――そんなにも。
アイキッド:(二人の)この格好もそうで、私がデザインしてるんですけど、これは明らかにメガドライブのセンスですから。『カメレオン キッド』というゲームがあって、仮面を着けることでどんどんパワーアップしていく、それが私で、彼(ジョー)に関しては『レンタヒーロー』という、みんなクソゲーと言ってますけど、私は大好きなゲームがモデルになってます。
サイボーグジョー:何の曲が好きですか?
――僕ですか? まず「ウェザーリポート」と、「夏の日のメガドライブ」と、あと「スシダンス」。
アイキッド:「スシダンス」はいいですね。
――寿司ネタを連呼するだけという(笑)。「夏の日のメガドライブ」でゲーム名を連呼するのと同じ構造ですけど、癖になりますね。
アイキッド:こういう曲は作詞が楽ですね。そもそも作詞なのか? という話ですけど。
サイボーグジョー:いいけど、「スシダンス」と「夏の日のメガドライブ」は、一番(歌詞が)覚えづらい。
アイキッド:文法がなくて、単語だけだからね。
サイボーグジョー:メガドライブはジャパニーズタイトルと、アメリカのタイトルが違うから。覚えづらいよ。〈ソニック・ザ・ヘッジホッグ〉と〈ゴールデンアックス〉以外はわからへん。スシも、〈マグロ サーモン タマゴヤキ〉しかわかんない。ほかのは、これ何だろう? って。
アイキッド:「スシダンス」はメロディが非常に良くて、アレンジも今まで使ってなかった跳ねのリズムを使っているので、ご注目いただけると嬉しいです。子供が運動会で踊れるようにしたくて、頑張って作ったんで。
――この曲にも、〈Hey stop it, can’t lick soy sauce!〉という醤油の事件に関する時事問題が入ってたりして。まあそれはいいとして、掘れば掘るほど何かが出てくる、それがポンズの曲。
アイキッド:仕掛けはいっぱいございます。
――ジョーさん、歌うのに一番難しい曲は?
サイボーグジョー:そうね、一番難しいのは「ミッションインポッシブル」かな。
アイキッド:もともと“ソング”じゃないからね。器楽曲だから。変拍子な上に、音域にすごい幅があって、半音下がったり上がったりする。
サイボーグジョー:一番覚えづらいのは「スシダンス」と「夏の日のメガドライブ」。間違いない。(アルバムには)難しい曲が結構入ってるけど、「ボウズ」は一番……一番じゃないけど、めちゃ楽しい曲。