THE BACK HORN、25周年は大事なものだけを見つめられた年に バンドの歩みを自然体で表現した“まっすぐな制作”の成果

THE BACK HORN、25周年の制作

 THE BACK HORNの結成25周年シングル『最後に残るもの』が10月4日にリリースされる。菅波栄純(Gt)が作詞・作曲を手がけた表題曲は、様々な思いの果てに生まれたものだ。カップリングの「フェイクドラマ」は作詞が松田晋二(Dr)で作曲は山田将司(Vo)。こちらも二人が思いをぶつけ合って完成させた。25年という年月の重さを振り返りながら、新曲について山田と菅波に話してもらった。(今井智子)

「地に足つけた現在地点から伝えるべき言葉を考えた」(菅波)

ーー「最後に残るもの」は、スケール感のあるドラマチックな曲ですが、温かいものを感じる歌詞がちょっと意外でもありました。

菅波栄純(以下、菅波):本当ですか? 俺は大体斜め目線ですからね。このシングルを作る前に将司とそういう話になって。最近アルバムはみんなで作るじゃないですか。歌詞も均等に割り振ってるんで、なんとなくそれぞれ得意な曲調があって。そしたら将司が「栄純ってなんかひねくれた歌詞しか書いてないよね」って(笑)。俺はそういう皮肉っぽいのとか得意だから。「確かにそうだなー。次に何かあったら、久しぶりにバラードじゃないけど、人間らしい歌詞書きたいな」って。

山田将司(以下、山田):人間じゃないみたい(笑)。次のシングルどうしようかって話してた頃だよね。

菅波:普段書いてるのも人間らしいんだけど(笑)。ダークなやつとか多かったから、まっすぐな歌詞書きたいなって言ってたら、ちょうどシングルのタイミングになって、それで「A面は誰書く?」みたいな話になって、「まっすぐな歌詞書きたい」って立候補しました。

ーーなるほど、そういう意識を持って曲作りに入ったんですね。

菅波:周年のシングルだから、テーマはある程度狭まっていたというか。ファンと自分たちの関係とか、今まで歩んできてどう感じてるとか、書くんだろうなって。

山田:この前の『REARRANGE THE BACK HORN』に入れた新曲「Days」があって、それとはまた違う視点で書きたいというのが栄純の中にあって。

菅波:「Days」は大まかに言えば周年のテーマに沿ったものだったんで、同じテーマでも作者が違えばまた違う。書き方は変わるから、適任かなと。

ーー「Days」は〈僕らだけの物語〉というフレーズが象徴するように、バンドのヒストリーを歌い込んだ曲だなと思いました。対して「最後に残るもの」は、さっきおっしゃったようにファンとの関係性、音楽への思いといったものがストレートに歌われていて新鮮です。

菅波:メンバーから見たら、こういう俺の方が自然に見えてるのかもしれない。どうなんだろう?

山田:そうだね。俺らから見ても栄純はすごいまっすぐな人間なんだなって、この曲からは感じますね。栄純がこの曲を持ってきた時に、タイトルからして「遺書ですか?」みたいな(笑)。俺たち解散するから、みたいなものを感じちゃったぐらい。たぶん栄純も、自分たちの存在の意義とかを感じて、お客さんがいて俺らがいて、最後に残るものって考えたんじゃないかな。聴いてくれる人たちに対して俺らが届けたかった思いとか、俺らの曲が残っていくこととか、そういう関係性も含め、自分たちが何をしてきたかをしっかり感じているんだなというのは思いましたね。

菅波:ある意味、ちゃんと地に足をつけて、今自分たちがどんな現在地点にいるのか、伝えるべき言葉は何か、考えたのは珍しい機会だった。俺、半歩ぐらい先を歌詞にしようみたいな気持ちで書いてたことが多かったんで。あるいは、メンバーはこう言ってるけど俺はちょっと斜めから見た視点で書きたいとか。現在地点からずれた地点で書くことでスリリングな歌詞になるんじゃないかみたいな書き方の方が多かったので、どういう歌詞にしようってことを決めてからスタートして、全部任せてもらうことで、久しぶりにじっくり時間をかけて書いたなあという感じはありましたね。

ーーそうすると作る姿勢も含め、作詞の作業自体も新しいトライアルがあったのではないかと思いますが。

菅波:そうですね。こういう素朴な曲ほど、俺の中ではトライアルだったんですね。いつもなら、すごい言い回ししてやろうとか思うところを……こういうまっすぐな詞も、もともとは照れ隠しですごい言い方にしようとか思っちゃうんですけど、それを次の日に消して、もっと素朴に戻そうってやって。またその次に作家エゴみたいのが出てきて、ここで対比とか比喩表現をしたら、もっとかっこよく見られるかなーと思って書いたのを、また消して、戻して、もっとストレートに言わなきゃってのを何回かやって、自分をリハビリしていきました。

山田:すごい削ぎ落としだね。

山田将司

ーー言いたいことの核心に迫るまで、書いては直す作業を重ねたんですね。それが〈正論に疲れて〉という歌詞に?

菅波:そう(笑)。だから、自分の歌詞を正論に思っちゃう瞬間とか、綺麗事に思っちゃう瞬間とかに、いやいや正論って言われてもいいし、綺麗事でいいから、サビ頭とか絶対綺麗な言葉にしよう、まっすぐ普通に会話で言いそうな言葉の中で選ぼうと思って。普段の会話で〈出会えて良かった〉とは言わないけど、日常にある言葉ではあるじゃないですか。〈出会えて良かった〉を何か他の表現で例えようと何回かしたんですけど、それじゃダメだと。

ーーそうした作業を経てできたこの曲そのものが「最後に残るもの」なんですね。

菅波:ああ、本当にそうですね。

「コード感やメロディを読み取って、マツ(松田)の作詞が変わってきた」(山田)

ーーカップリングの「フェイクドラマ」は松田さんの作詞で山田さんの作曲ですが、この松田さんの詞も珍しくアグレッシブで意外な印象を受けました。曲はパワフルで疾走感があってTHE BACK HORNらしい。この2曲の対比がいいですね。

山田:ちょっと懐かしいというか、リフものの曲をしばらくやってないよねっていうのがあったんで、このタイミングでTHE BACK HORNがやったらどんな感じなのかなって、やってみたかったのはありますね。近年こういう曲調があんまりなかったから。1年ぐらい前に自然にできたリフで、今のタイミングでいいと思えるんだったら出してもいいなという感じで、作りました。

ーー結成から25年経って、落ち着いた方に向かうかもしれない自分たちに対して、発破をかけてるような印象も受けました。

山田:そうですね、自分たちに発破かけてるのも自然な感じだなって。

ーーアレンジが一直線じゃなくて、途中でファンキーになったりしていることで、今のTHE BACK HORNの曲だなと思わせます。

山田:ああ、ちょっと跳ねてるやつ。ちょっと遊び心も入れてみました。セッションでもできそうな展開だけど、それが自然と自分だけでもできてる。

菅波:将司の作ったデモテープの段階でも、その間奏があって。ああいうのがあると(岡峰)光舟(Ba)が「ここだけレッチリ(Red Hot Chili Peppers)なのかな」みたいな解釈をしていて、そうやって楽しめるじゃないですか。ロック好きなバンドだから、ロック好きならではの「ここはこうなのね」みたいな。リフとかは、Led ZeppelinとDeep Purpleが一緒になったみたいな感じだなと思ってて(笑)。Led Zeppelinほどブルージーじゃないけど、音使いはDeep Purpleみたいな譜割でおもしろいなって。将司的にはAt The Drive-Inみたいな感じだったと思うんですけど。

ーー広いんだか狭いんだかわからない解釈ですけど、なんとなくわかりますね(笑)。4人それぞれが個性的な引き出しを持ってる。

菅波:違う引き出しを持ってて、だけどロックで重なってるからわかるみたいな。だから「フェイクドラマ」はおもしろいですね。そういう意味では、俺が作りそうで絶対作らないっていうか、俺が作ったらこうはならないっていうか。

菅波栄純

ーーそういう曲だから松田さんも攻めた歌詞になったんでしょうか。

山田:鍵盤でメロディを作って渡したんで。マツも、近作では歌詞の書き方が変わってきてて、メロディと曲に呼ばれて言葉が出てくるみたいなことを言ってて。昔は「俺はこれを書く」って決めて書いてたんですけど、最近は曲の持ってるコード感とかメロディとかを読み取って、こいつは何を歌うべきメロディなんだろうかって、ちゃんと読み取ろうとしてるのが最近のマツの作詞家っぽい感じというか。

菅波:何を言おうとしてるんだというのを、読み取るのにすごい時間かけてる。

山田:だから曲に合わせたこういう歌詞ができるんだね。俺もマツのこういう歌詞見たの久しぶりだなって思いました。

菅波:めちゃくちゃ力強い歌詞だし、韻の踏み方も、バチバチに踏んでるというより、韻がちゃんと気持ちいいところに置いてあるから歌いやすい。そういうことだよね、メロディをしっかりと読み取ってるというか。

山田:自分で何回も歌ってると思う。言われたもんな、「俺が歌っても全然よくなんなくて違うと思ったから、あそこ変えたわ」って。

菅波:そうなんだ。

ーー言葉を声に出してみてわかる響き方とかありますもんね。また松田さんが歌う曲ができたりして。

山田:そっち? 「天気予報2」を作ろうかな。

菅波:俺ら「天気予報」大好きだからね。やってほしいね。

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