Stray Kids、韓国で新記録打ち立てた『★★★★★(5-STAR)』が2位に グループのブレイクに見るシーンの成熟

参照:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2023-06-19/

 今週のアルバムランキング。初登場作品が多く、1位・Sexy Zone『Chapter II』(約15万枚)、2位・Stray Kids『★★★★★(5-STAR)』(約8万枚)、4位・ずっと真夜中でいいのに。『沈香学』(約3万枚)、5位・山下達郎『RIDE ON TIME』(約2万枚)、7位・WOOYOUNG(From 2PM)『Off the record』(約1万枚)と続きます。中でも山下達郎は1980年に発表した名作のアナログ盤再リリース。毎週激動するチャートの世界で、40年以上前の作品がちゃんと評価され、ちゃんと数字を出している。すごい話だと敬服します。

 さて、今週注目したいのは2位のStray Kids。オーディション番組から生まれ、2018年にJYPエンターテインメントからデビューした8人組ボーイズグループ。『★★★★★(5-STAR)』は韓国発売の3rdフルアルバムにあたり、発売前の先行注文数は493万枚を突破、韓国での新記録を達成したそう。2ndアルバム『NOEASY』が約167万セールスだったので、この飛躍は本当に驚異的。日本のオリコンチャートの数字は、まさに氷山の一角でしかなかったのです。

 2PM、TWICEなどの前例もあり、事務所側には最初から世界的ビッグヒットを狙う戦略とパイプがあったはず。輝くべき逸材を見出し、グループとして売り出す、という流れですね。このように書くと「アイドルとして成功するなら、そのための猛特訓、律すべき私生活や食生活(JYPの厳しいダイエットは有名)があって当然だよなぁ」なんて話になりがちですが、実のところStray Kidsは作詞作曲、編曲、ダンスの振り付けやライブパフォーマンスの構成までをセルフプロデュースで行うグループ。売り出されるのではなく売っていく。レールを敷くのはあくまで自分たちです。

 ラップもできるボーイズグループ、というよりは、スキルあるラッパーとトラックメイカーとダンサーを揃え、エンターテインメントの世界に次なるバズを起こす。Stray Kidsとはそんな成り立ちの即戦力集団なのでしょう。とにかくサウンドのクオリティが高い! 骨太なビート、韓国語と英語を混ぜたフロウ、畳み掛けるボースティングとマイクリレーなどに一瞬で持っていかれます。今回のアルバムには爽やかなダンスミュージックやバラードも加わっていますが、急に変わった印象はなし。彼ら、もともと「これはマニアック寄りのヒップホップ曲」「こちらは大衆向けのキャッチー曲」といった書き分ける意識が極めて薄いのだと思われます。すなわち、アイドルカルチャーとヒップホップカルチャーがどこまでも自然に溶け合っているポストBTS世代。

 セルフプロデュースのヒップホップ系グループは初ではなく、むしろK-POPの中では珍しくなかった動き。BTSやSEVENTEEN、さかのぼれば第1世代の1TYM、第2世代のBIGBANGなども「楽曲もダンスも自らプロデュースする」「ヒップホップの出自に関して妥協しない」姿勢を誇示してきました。Stray Kidsは確かにその流れに与している。ただ、ファッションやメイク、佇まいがとにかく今風でスタイリッシュ。これもまた時代です。

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