ヤングスキニー、一人ひとりに届けた真っすぐで切実な歌 ハイライトの連続で飛躍を確信させたツアーファイナル
いよいよ、ライブはクライマックスへ。メジャーデビューシングル曲である「らしく」の間奏で、かやゆーは「自分に正直に、あなたらしく生きればいい」「あなたはあなたでしかないから」と一人ひとりの観客に向けてまっすぐな言葉を送り届けた。その渾身のメッセージを受けて、観客はめいっぱい声を重ね合わせながら〈僕は僕だ〉と何度も歌い、かやゆーは、この曲の最後を〈このでかい世界僕が回していくんだ〉という大胆な宣誓で結んでみせた。その言葉自体に根拠なんかなくても、デカい音に乗せてみんなで歌うことで、自分自身が秘める無限の可能性を信じられるような気分になれる。ロックには、そうした輝かしい力があることを改めて確信させてくれるような名演だった。
本日2回目の披露となった「ロードスタームービー」では、ライブ冒頭よりも熾烈な一体感が会場全体に生まれ、ラストの「ワン、ツー!」パートでは、しおんが「ツアーファイナルで、ツアーの中で一番人多いんでしょ?」とやり直しを要求する一幕も。そのアジテーションを受けて、この日最大の「ワン、ツー!」で観客がメンバーの期待を超えてみせた後、ライブ本編を締め括ったのは、「バンドマンの僕から、あの子へ」という言葉を添えて披露された「ごめんね、歌にして」であった。アルバム、および今回のツアーの『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』というタイトルを改めて読むと、歌にしたからといってどんなことでも許されるわけではない、という身も蓋もない現実が浮かび上がってくるが、それでもかやゆーは、この曲で〈無理だよ気づけばあなたを歌にしている〉と歌う。それはつまり、そうしたシビアな現実を踏まえた上でも、どうしても歌にしたい想いや本音があり、それを受け取ってほしい人がいる、ということなのだろう。そして今、そうした切実な想いを真正面から受け止めてくれる人が、LIQUIDROOMのフロアを埋め尽くしている。それはとても美しい光景であり、史上最大キャパシティとなっている今回のワンマンが、ヤングスキニーにとってかけがえのない一夜になったことは間違いない。
アンコールでは、バンドの原点「世界が僕を嫌いになっても」の再録版「世界が僕を嫌いになっても (2023 ver.)」のリリースを発表して、そのまま演奏。続けて、ヤングスキニー流の直球応援ソング「憂鬱とバイト」を披露した。この曲を歌う中で、かやゆーは「いつもは自分のために歌っている。でも今日は、自分のための歌を、あなたのために歌う」と叫んだ。ミュージシャンのパーソナルな想いから生まれた音楽が、あなたの歌、そして、みんなの歌になる。それはまさにポップミュージックの本質であり、そうした大きなテーマに向き合うヤングスキニーは、これから先、新しいリスナーとの出会いを重ねながらさらなる飛躍を続けていくはず。そう強く確信させてくれるような、感動的なツアーファイナルであった。
■セットリスト
01 ロードスタームービー
02 8月の夜
03 愛鍵
04 本当はね、
05 ヒモと愛
06 ゴミ人間、俺
07 コインランドリー
08 美談
09 好きじゃないよ
10 また冬が終わって
11 東京
12 らしく
13 ロードスタームービー
14 ごめんね、歌にして
En
15 世界が僕を嫌いになっても
16 憂鬱とバイト