yama、初アコースティックツアー『夜と閃き』にて告げた新章開幕 ストリングス含む豪華編成で見せた進化
2023年5月、東京、名古屋、大阪にて、yamaの『acoustic live tour 2023 「夜と閃き」』が開催された。この記事では、5月7日、東京・EX THEATER ROPPONGIで行われたツアー初日の模様を振り返っていく。
yamaは昨年10月、『yamaスペシャルライブ by Prime Video』において、鍵盤奏者の和久井沙良をサポートに迎えた2人編成のライブを行なったことがあったが、同ライブはごく限られた人数しか参加できなかった公演であった。そのことを踏まえると、今回のツアーは、通常のバンド編成とは異なるアコースティック編成のライブを、多くのファンが初めて体験することができた機会となったと言える。かつ今回は、鍵盤に加えてストリングスカルテットを迎えた豪華な編成で、開演前の会場には、いつものライブ前とは似て非なる特別な高揚感が満ちていた。
1曲目は「真っ白」。ピアノとストリングスの流麗な調べによって、次第に壮大なサウンドスケープがゆっくりと立ち上がっていく。そして、その豊かなサウンドが、yamaの儚い歌声が帯びる切実なエモーションを高らかに増幅させていく展開に思わず息を呑んだ。続く「新星」では、ファルセットを交えた歌声が会場全体にしなやかに響きわたっていく。yamaの歌声をいっそう近くに感じ取ることができて、改めて今回の公演の特別さを噛み締める。
この日初めてのMCで、yamaは今回のツアーの告知をした際、「閃く瞬間を どうか そのままの君で 来てください」とTwitterに投稿したことを振り返りながら、日々の生活の中で身につけている見えない仮面を外して、いつもより深く刺さる音楽を心から楽しんでほしい、と伝えた。いつもと異なるムードである故か、冒頭の2曲ではフロアにやや緊張感があったが、yamaの言葉を受けて観客の緊張がそっと解けたようで、ここから次第に会場全体の熱量と一体感が高まっていく。
最新曲の一つ「いぶき」では、フロアから大きな手拍子が巻き起こり、「桃源郷」では、スリリングに疾走していく演奏の勢いを受けて、yamaの歌声の熱量もグッと高まっていく。そしてやはり特筆すべきは、このツアーのためにリアレンジされた各楽曲が放つ新たな響きだ。例えば、代表曲「春を告げる」や「色彩」は、時に優しく、時にアグレッシブにyamaの歌に寄り添うピアノ&ストリングスの美麗な調べによって、煌びやかなシンセを多用した原曲に匹敵する絢爛な彩りが加えられ、その豊かな響きに強く心を動かされた。
中盤のハイライトを飾ったのは、ボカロ曲「優しい人」(こめだわら)のカバーであった。yamaの現在に至るまでの活動は、「優しい人」のカバー動画をスタッフが見つけたことから始まっており、つまりこの曲はyamaにとっての原点と言える。ライブでの披露は、2021年3月の初の有観客ライブ以来とのことで、yamaは緊張を隠せない様子だったが、芯の通った伸びやかな歌声を届ける姿はとても堂々たるものだった。初の有観客ライブから約2年、数々のライブを通して重ねてきた成長を高らかに示すような名演だった。