yama「人前に立つ恐怖心もあった」 「春を告げる」ブレイク以降に味わったライブへの苦悩

yama、ブレイク後の苦悩

 2020年にデビューしたyama。はじめこそ、yamaに対して“謎のベールに包まれた孤高の存在”というイメージを持っていた人は多かったと思うが、今のyamaはそれまでずっと被っていたフードを外し、少しずつ等身大の姿を明かしながら、リスナーとの開かれたコミュニケーションを重ね始めている。その背景には、yamaのライブに対する考え方やスタンスの変化があり、そういった場所で触れ合うファンの存在が今まで以上に大きなものになっている。これまでの約2年半の活動について振り返りながら、自身のライブ論について語ってもらった。(松本侃士)

自分がステージに立つイメージもできないし、人前に立つ恐怖心もあった

yama

ーー2020年の春、「春を告げる」をきっかけとしてyamaさんの存在が広く知れ渡ることになりました。当時は、ライブに対してどのような考え方を持っていたのでしょうか?

yama:当時はまだライブをやりたくないと思っていて。というのも、これまで自分は家で一人で音楽をじっくり楽しみたいタイプで、誰かと音楽を共有したり、好きな曲を見つけた時に、「この曲をライブ会場で聴いてみたい」と思う瞬間もあまりなかったんです。ライブというものに触れる機会がずっとなかったので、自分がステージに立つイメージもできないし、人前に立つ恐怖心もあった。当時は、「やりたくない」「できない」とスタッフに話していました。

 でも、その時にスタッフの方々に背中を押してもらって、2020年に配信ライブをするようになって。無観客の配信ライブから始められたことは自分の中ではありがたかったんですけど、それから少しずつお客さんを入れた有観客ライブをやるようになってきた時に、どんどんパフォーマンスが上手くいかなくなってきて。それでも食らいついて何とかやっていたんですけど、上手くライブができない日が続く中で、ライブの必要性は何なんだろうと考えてしまうこともありました。

ーー2021年の春からは、初めてフェスにも出演を果たしましたね。

yama:『JAPAN JAM 2021』で初めてフェスに参加させてもらって。それまでのライブでは、どんなレスポンスが返ってくるのかが怖くて、客席を見ることをほとんどしていなかったんですね。自分の生歌に対して、みんながっかりするんじゃないかとか、そういう考えばっかりで。でも、『JAPAN JAM』のステージに立ってパっと客席を見た時に、人の地平線が広がっていて、「あ、素晴らしいな」と一瞬思ったんです。

 それが一つの大きなきっかけになって、その後、途中で大きく挫折したこともあったんですけど、スタッフやアーティスト仲間をはじめ、普段支えてくれている人たちからの言葉があって、ようやく今年に入ってからライブに真正面から向き合えるようになりました。

ーーそうした心境の変化を経て、実際にライブの場における観客とのコミュニケーションはどのように変わっていったのでしょうか?

yama:もともとは、ライブで全然喋らなかったし、インタビューでも多くを明かすこともなかったので、お客さんは自分に対して、機械的で、人間っぽいところが見えなくて、どこか遠い存在のように感じていたと思うんです。でも本当はそうではなくて、その時々に考えていることをちゃんと伝えられるようになってからは、みんなが一人の人間として応援してくれるようになったのではないかと感じています。

ーーそれまでyamaさんは、孤高でミステリアスなイメージを持たれることも多かったと思います。このタイミングで、等身大の自分を打ち明けられるようになったことは、これまでの活動の中でもとても大きな転換点になりましたね。

yama:もともと負けず嫌いな性格なので、本当は、自己開示しなくても完璧でクールな自分を演出したかったんです。でも、ライブをやるたびに、自分が求める完璧なyamaと、本当は弱い自分自身の間にどんどん距離ができていくのが辛くて。ライブを観てくれた方々が「本物だ」「実在したんだ」と言ってくれるけど、そういった反応にも苦しくなってしまった時期もあって。

 自分は皆さんが求めているような完璧なyamaではないのに、と思うこともあったんです。ある意味で逃げかもしれないんですけど、ステージに震えながら立っていることを含め、そうした心境をちゃんと伝えるようになってからは、すごく楽になりましたね。むしろリラックスしてステージに立てるようになってきて、ようやくちゃんとコミュニケーションができるようになってきました。ライブは、自分の熱やお客さんの熱を共有して交換し合う場なんだなと、やっと思えるようになって。

ーー今後アーティスト活動を続けていく上で、このタイミングでその気付きを得られたことは、きっとyamaさんにとってすごく大きなことですよね。

yama:本当に大きいです。去年だったら、上手くいかないたびに「ダメだ」「自分は本当にセンスがないんだ」と思ってしまっていたはずで、もちろん今もまだ全然足りない部分もたくさんあって課題も次々と出てくるんですけど、前向きに次の課題に向けて準備したり、取り組めるようになってきました。ライブに対する向上心が芽生えている感じがあります。

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