THE RAMPAGE、FANTASTICS パフォーマーのアイデンティティ TOMOKO IDAとメンバーが語り合うダンストラックの裏側

TOMOKO IDA×ランペ&ファンタ ダンストラック対談

TOMOKO IDA×FANTASTICS 世界 編

――まず、世界さんが TOMOKOさんにダンストラックの制作を依頼することになった背景というのは?

世界

世界:FANTASTICSのツアーでダンストラックを作るときに、 TOMOKOさんとセッションしたいと思ったことがきっかけですね。それ以前から他のグループのトラックを制作されていたことも知っていたんですが、直接お話することはなかったんです。FANTASTICSで作るダンストラックとなると、メンバーがみんな(ジャンルが)バラバラなこともあり、あらゆるジャンルのトラックを作れるTOMOKOさんにお声がけしたいなと。

――「THE 7 OCEANS」の制作にあたって、例えばどのようなリクエストを?

世界:メンバー各々が踊りたいジャンルがあったんですが、そこまで細かい要望は出さず、TOMOKOさんに委ねる形にしました。ただ、僕のソロに関しては……。

TOMOKO IDA(以下、TOMOKO):世界さんはすごく細かいところまで詰めたような気がします。「こうしたい」という意志が明確にあり、抽象的な言葉での説明じゃなかったので形にもしやすかった。ただ、FANTASTICSに限らず「これで合っているのかな?」という感覚は常にあるので、ミーティングのときにメンバーみなさんの意図をなるべく吸い上げて、コミュニケーションをとるようにしています。ちなみにFANTASTICSの制作時は、グリッチファンクやドリル、トラップソウル、ブラストラック、バンドサウンド……あとはガチのヒップホップとか、本当にさまざまなジャンルがありました。

THE 7 OCEANS / TOKYO GAIN -LIVE TOUR 2021 "FANTASTIC VOYAGE" ~WAY TO THE GLORY~ THE FINAL-...

世界:こうして聞いてみると確かにぐちゃぐちゃですね(笑)。

TOMOKO:THE RAMPAGEのダンストラックを作るときとも違うんですよね。FANTASTICSは本当にいろんなものが詰まっていて、幕の内弁当のようなイメージ。

――いざ完成したトラックを聴いたときの世界さんの感想というのは?

世界:すごく面白かったです。僕らのグループはダンストラックをお願いするとき、「こうしてほしい」と端から決めているメンバーもいれば、ビートメイカーに味をつけ加えてもらうことによって起きる化学反応を楽しむメンバーもいるんですね。TOMOKOさんが作ってくださったトラックが一発目にあがってきたとき、FANTASTICSの新しい感覚、反応が起きたことを覚えています。

TOMOKO:それはうれしい。

――一発目ということは、それからどのくらいやりとりを経て完成形になったのでしょうか?

TOMOKO:最初のミーティングでメンバー全員に集まっていただき、ホワイトボードに要望やポイントを書きながら一人ひとり個人面談のようなことをしたんですね。これはFANTASTICSさんに限らず、他のグループも同様なんですが、一番最初のミーティングからだいたい1週間~10日以内に第一稿を提出し、実際にグループで踊ってみてからの調整が入ります。そこから1週間前後で細かな修正をするので……だいたい2~3週間がっつりやりとりした上で完成する感じですね。

――その期間で無茶ぶりは出るのでしょうか?

TOMOKO:いっぱい出ますが……(笑)、それはステージパフォーマンスを良くするためのご意見だと思いますので、私自身も納得いくまで突き詰めたいと思っています。

――世界さんとしては、完成形で実際にパフォーマンスしてみると、耳で聴いていた感覚とは印象が変わりましたか?

世界:大きな会場で聴くと全然違います。踊ってみて感覚が変わるという観点からも、やっぱりダンストラックってすごく特殊なジャンルなんだと感じますね。

TOMOKO:同感です。特殊な職業というか、ダンストラックを制作するビートメイカーはそんなに多くないですよね。

世界:僕の知っている限りではZEROくんやNAKKIDくん、あとは僕らがよくお願いするSNGというクリエイターもいますね。それと、過去にEXILEで1回T.Kuraさんがやってくれたことがあります。

TOMOKO:確かにT.Kuraさんもやっていましたね。

世界:ダンストラックの特殊性というのは、パフォーマーの楽曲であり、言ってしまえばテレビとかでは披露しない曲で、かつパフォーマーを想像して作らないといけないものです。単純に曲としてのバランスを考えるのも大変だろうし、普通に作曲をする作業と比べて、やらなきゃいけない作業量が絶対的に多いと思いますからね。

TOMOKO:めっちゃ……めっちゃ思います(笑)。

世界:しかもダンサーたちは、直感を大事にしているので要望を伝えるときにダラダラしがちというか、抽象的な発言が多い。「なんかこう、駆け上がる感じで」とか「もうちょい暗めなイメージで」「とにかく派手に」とか(笑)。例えばボーカリストが歌う楽曲であれば、伝えるべきメッセージ性などを曲に込めることができると思うんですが、メンバーそれぞれがダンスで伝えたいものもバラバラだし、ジャンルすら統一されていない。セクシーに見せたいメンバーがいれば、ファッションで見せたいメンバーもいる。それを5~6分、多いときは8分間を一つにまとめる作業というのは……ご苦労が絶えないんだろうなと。

TOMOKO:言葉や文面だと伝わりづらいことを察してくださったのか、世界さんは過去に音声で送ってくれたことがありましたよね。

世界:送りましたね。

――それは言葉から質感を得ることができるからですか?

TOMOKO:そうですね、実際に「ズッツッツ、的な音がほしいです」と音声で送られてくると、「あ、これはキックじゃなくハットかな?」とわかりやすくなるんですね。世界さんは直接そうやってボイスメッセージを送ってくれることがあったんですが、通常は各マネージャーさんやライブ制作のスタッフさんがメンバーから聞いた要望をテキストで受け取ることが多いので、求めている楽曲になるまでやりとりが続いてしまうこともあって(笑)。実際に「キックを強めてください」という要望が、実は「スネアを強めてください」だったりすることもありました。一番最初にボイスメッセージで送ってきたのが世界さんだったんですけど、それ以降は「要望はボイスで送ってもらっても大丈夫ですよ」と伝えるようになりました。

世界:メンバーに提案するときも、直接目の前で「ドドストトン・ドン・カカカン・ピューンみたいな音がほしいよね」とか伝えますからね。

TOMOKO:それを音声でもらっておくと、何度もリピートして聴けるので、イメージも膨らませやすい。文面では伝わらないテンションがそこにあるので、すごく重宝します。

世界:三連符が「ドンドンドン」なのか「ドドドン」なのかも聴き分けられますもんね。

TOMOKO:どんな拍のとり方で「ドンドンドン」なのかもわかるし、裏で入ってきている場合は「ン・ドドドン」になっているでしょうしね。

世界:ダンサーは感覚的すぎるので、言語化して伝えられる人ってなかなかいないと思うんですよ。しかも、続ければ続けるほど擬音だらけになってしまうので(笑)。

――世界さんはEXILEとFANTASTICSで踊るダンスというのは、明確に差別化しているのでしょうか?

世界:してます。EXILEのときはチームとして見せることが多いので、ソロでも全体のパフォーマンスのコーナーであっても「全体でどう見せるか。見られているか」という意識が強い。一方でFANTASTICSは、全体的にみてジャンルも幅広いので、逆にソロで勝負しようという意識が働きますね。そういう意味からも、EXILEが持つダンスの世界観は崩さないようにし、それを毎回どうアップデートしていくかが僕の中の課題でもあります。その分、FANTASTICSではいろんなことにチャレンジできるメリットもあります。

――それが世界さんのパフォーマーとしてのアイデンティティだと思いますが、 TOMOKOさんが制作したトラックに込めているアイデンティティというのは?

世界:ぜひお聞きしたい。

TOMOKO:アイデンティティはないっちゃないんですけど……(笑)。

世界:ないはずはない(笑)!

TOMOKO:ローの音がガッチリしていないと私らしさがなくなると思っていて、そこはすべてのダンストラックに関して意識はしています。ただ、私が制作している環境と、大きな会場で聴く音はまったく異なるので、しっかりと底上げできるようにしていますね。

――世界さんから見て TOMOKOさんは頼もしい存在ですか?

世界:百人力です。頼もしすぎる。

TOMOKO:ありがとうございます。ちなみに世界さんは、他のビートメイカーさんとどんなやりとりをされているのか気になるんですよね。

世界:僕はわりと直接やりとりすることが多いですね。電話やLINE、夜中にZoomをつないでオンラインでとか。「そのスネアじゃないかな」とか、ある意味、一緒に曲を作っているような感じです。こういうやり方は、もしかしたら僕だけかもしれないですけどね。

――では最後に、 TOMOKOさんから見てFANTASTICSというグループは、言葉で説明するとどのようなグループですか?

TOMOKO:すごくきらびやか。そして、世界さんのイメージが強い。それはダンストラック制作時に密にやりとりを行ったからかもしれませんけどね。

世界:ありがとうございます。僕個人としては、“jumbles”という言葉が当てはまるような気がしますね。良い意味では使われないのかもしれないですけど、「ぐちゃぐちゃ」とか「整っていない」という意味。ただ、そこには色とりどりのカラフルさというか、型にはまらないユニークさもあるので、FANTASTICSのパフォーマーにはしっくりくる言葉なんですよね。

■FANTASTICS リリース情報
New Single「PANORAMA JET」
https://fantastics.lnk.to/PJ_DLSTR

■FANTASTICS ツアー情報
『FANTASTICS ARENA LIVE 2023“HOP STEP JUMP”』
【日程】
<東京・有明アリーナ>
6月10日(土)
6月11日(日)
<大阪・大阪城ホール>
7月4日(火)
7月5日(水)

https://www.ldh-liveschedule.jp/sys/tour/20621/

TOMOKO IDA オフィシャルサイト
https://www.tomokoida.com/

TOMOKO IDA Sony Music Publishing  オフィシャルサイト
https://smpj.jp/songwriters/tomokoida/

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